おやぢの部屋2
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2015年 10月 23日 ( 1 )
REVOLUTION
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Emmanuel Pahud(Fl)
Giovanni Antonini/
Kammerorchester Basel
WARNER/0825646276783




ベルリン・フィルの首席フルート奏者、エマニュエル・パユの久しぶりのソロアルバムは、なんと「革命」というタイトルでした。そういえば、少し前に彼が世界に羽ばたくきっかけとなった神戸国際フルートコンクールへの公的援助が打ち切られることに対しての、自治体への嘆願書みたいなものをネットで見かけましたね。そんな貧しい日本の文化政策を立て直すために、まずは「革命」を起こして腐りきったアベ政権を倒そう、という意気込みが込められたアルバムなのでしょうか。
もちろん、そんな勇ましいことを考えるようなパユではありませんから、それはあり得ません。この「革命」というのは、ほとんど固有名詞として使われる「革命」、つまり「フランス革命」のことです。そういえば、分かりにくいかもしれませんが、このジャケットの背景となっているのは、その「革命前夜」の象徴的な出来事「球戯場の誓い」を描いたジャック=ルイ・ダヴィッドの有名な絵画の下書きですね。完成された作品はもちろんみんなちゃんとした服を着ていますが、この下書きではみんな全裸なのが興味深いですね。その前で、パユはそれこそ「レ・ミゼラブル」にでも出てきそうないでたちで空中浮遊をしています。
そう、ここでは、そんなフランス革命の時代に作られたフルートのための協奏曲が演奏されているのです。このような、ある時期を切り取ってその時代の作品を取り上げるという企画は、以前ベルリンのフリードリヒ大王をキーワードとした「The Flute King」に続いてのものとなります。今回はそれよりも少しあとの時代のフランス、という設定です。
そういうコンセプトで取り上げられたのが、ドゥヴィエンヌの協奏曲第7番ホ短調、ジアネッラの協奏曲第1番ニ短調、グルックの協奏曲ト長調、そしてプレイエルの協奏曲ハ長調です。この中ではドゥヴィエンヌの曲がかなり有名で多くのCDが出ていますが、それ以外はなかなか聴く機会はないはずです。
他のEMIのアーティスト同様、パユもレーベルの名前が変わったことには何の影響も受けなかったかのように、以前と同じかつてのEMIのプロデューサー、スティーヴン・ジョンズのもとで今回もアルバムを制作しています。ただ、ちょっと興味を引くのが、フィリップ・ホッブスとロバート・カミッジというエンジニアの名前です。この二人はLINNのプロデューサー兼エンジニアと、そのアシスタントではありませんか。LINNのスタッフが元EMIの録音を行うなんて時代になってしまったのですね。
聴こえてきたのは、まさにLINNのきめ細かなサウンドだったのでうれしくなりました。まさか、パユをこんな素敵な録音で聴けるなんて、思ってもみませんでしたよ。いや、まずパユが出てくる前のオーケストラの序奏で、その刺激的なサウンドとアグレッシブな音楽性に引きつけられてしまいました。実は、バックのオケがどこかなんてことは全くチェックせずに聴きはじめたのですね。改めてクレジットを見ると、それはジョヴァンニ・アントニーニ指揮のバーゼル室内オーケストラでした。どうりで、すごいはずです。彼らの演奏するベートーヴェンに衝撃を受けたことを、いまさらながら思い出しました。
そのオーケストラは、コンチェルトのバックにはあるまじきハイテンションの演奏で音楽をぐいぐい引っ張っていきます。もちろん彼らはノン・ビブラートの弦楽器と、びっくりするような音色のピリオドの金管楽器でめいっぱい迫ります。正直、こうなってくるとフルート・ソロなんかどうでもよくなってくるほどの存在感です。全く思いがけないところで、お腹がいっぱいになってしまいましたよ。
パユ?・・・。早い楽章での目の覚めるような軽業には圧倒されますが、ゆっくりとした楽章でのいつもながらの無気力な(本人はしっかり「抑えた」音楽を演出しているつもりなのでしょうが)吹き方には、まるでおかゆしか食べなかったあとのような空腹感しか味わうことが出来ませんでした。

CD Artwork © Parlophone Records Limited
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by jurassic_oyaji | 2015-10-23 20:21 | フルート | Comments(0)