おやぢの部屋2
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2016年 07月 07日 ( 1 )
Nilsson/Celibidache
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Birgit Nilsson(Sop)
Sergiu Celibidache/
Swedish Radio Symphony Orchestra
WEITBLICK/SSS0186-2




ワーグナー歌いとして一つの時代を築いたビルギット・二ルソンが、そのキャリアの絶頂期、まさに脂ぎっていた頃に母国のスウェーデン放送交響楽団の演奏会に出演した時のライブ録音です。その時の指揮者がセルジウ・チェリビダッケだったという、今考えればとてつもなく貴重な顔合わせです。
これは、1967年の9月にストックホルムで行われたコンサートでのワーグナーと、翌年のやはり9月に同じ会場でのコンサートで歌われたヴェルディのアリアを収めたCDです。
ワーグナーは「トリスタンとイゾルデ」の「前奏曲」と「愛の死」、それに「ヴェーゼンドンクの5つの歌」のオーケストラ伴奏版(フェリックス・モットル編曲)からの3曲が演奏されています。二ルソンのイゾルデといえば、その年の前年、1966年のバイロイト音楽祭で録音されたカール・ベーム指揮の全曲盤が有名ですね。DGから出たLPに使われたヴィーラント・ワーグナーのステージの写真がとてもインパクトのあるものでした。その年の10月にヴィーラントは亡くなってしまったので、このLPのボックスには、追悼文が同梱されていました。二ルソン自身はそのヴィーラントの演出には心酔していたことが、彼女の自伝では述べられています。


今回のCDでのコンサートが録音された1967年には、バイロイトでは「トリスタン」の上演はありませんでした。しかし、この年の4月にはなんと大阪でバイロイトの引っ越し公演があり、二ルソンがイゾルデを歌っていたのですね。信じられないでしょうが、本当にそんなことがあったのですよ。もっとも、「引っ越し」とは言っても、やってきたのは指揮者とソリストと、そして舞台装置だけ、オーケストラ(N響)と合唱は現地調達というしょぼさでした。もちろん、演出家のヴィーラントも来られるわけはありません。
ただ、あの薄暗いバイロイトのステージが、実際に大阪で再現されていたのは感動的だったことでしょう。そして、この時の指揮者がピエール・ブーレーズという、1966年に「パルジファル」でバイロイト(本場)にデビューしてはいても、当時の日本ではワーグナーに関しては全くの未知数の人だったのも、すごいことでした。
一方のチェリビダッケがワーグナーを演奏した録音などというものも、かなり珍しいのではないでしょうか。まず聴こえてくる「トリスタン」の前奏曲は、まさにそんな「初物」を味わうには十分な、いかにも彼でなければなしえないようなワーグナーでした。それは、彼のブルックナーにも通じる、とことん細部を磨き込んだ、奥の深いものだったのです。ただ、そのような演奏にはとてつもない緊張感が要求されるのでしょう、管楽器のプレーヤーなどはもうコチコチなっているのがはっきり分かるほどの切羽詰まった演奏ぶり、アインザッツさえまともに揃えられないという恐ろしさです。
そのような中でのニルソンも、やはりいつもとは違って、ほんの少しいつもの伸びやかさが見られないな、というところがありましたね。でも、「ヴェーゼンドンク」の方は、もう少し楽に歌っているような気はします。こちらでも、オーケストラは委縮の極み、「Schmerzen」の最後でのトランペット奏者は、かわいそうなぐらいの失態を演じていました。
ところが、翌1968年のヴェルディでは、この指揮者はそれほどの締め付けは行わなかったのかもしれません。二ルソンはとても伸び伸びと、ちょっと普通のソプラノとは格の違うヴェルディを聴かせてくれています。
最後にはボーナストラックとして、「トリスタン」のリハーサルが収録されています。なぜか、これはモノーラル、こちらの二ルソンの方がコンディションが良かったように感じられるので、これも本体と同じステレオで録音されていればよかったのに。そういえば、先ほどのバイロイトの「トリスタン」のLPには、リハーサルももちろんステレオで録音されたものがおまけで入っていましたね。

CD Artwork © Weitblick
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by jurassic_oyaji | 2016-07-07 21:08 | オーケストラ | Comments(0)