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2016年 07月 26日 ( 1 )
KROMMER/3 Flute Quartets
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Andreas Blau(Fl)
Christopher Streili(Vn)
Ulrich Knörzer(Va)
David Riniker(Vc)
TUDOR/7199




昨年ベルリン・フィルを定年退職したアンデレアス・ブラウが、その直前、2014年の12月から2015年の2月にかけて彼の「同僚」と一緒に録音したクロンマーのフルート四重奏曲集です。
ブラウがこのオーケストラに入団したのは1969年、あのジェームズ・ゴールウェイと「同期」でした。彼が生まれたのは1949年でしたから、その時はまだ20歳だったんですね。以来半世紀近く、このオーケストラの首席フルート奏者として常に第一線で活躍してきました。
古典派前期に活躍したボヘミア出身の多くの作曲家たちの一人、という程度の認識しかされていないフランツ・クロンマーは、1759年にモラヴィアのカメニュイツェに生まれていますから、モーツァルトの3歳年下になります。独学で作曲を修め、音楽教師になろうと1785年にウィーンに出てきますが、その頃はモーツァルトの「フィガロの結婚」やハイドンの弦楽四重奏曲が音楽愛好家たちの間の格好の話題で、彼のような田舎者の出る幕はありませんでした。そこで彼は、それから10年間ハンガリーに行ってさらに音楽修行を重ねることになるのです。苦労マンなんですね。
そして、1795年に再びウィーンに戻り、彼に目を付けた出版業者ヨハン・アンドレによってそれまで書き溜めた作品が数多く出版されることになります。クロンマーの作風は当時のウィーンで隆盛を誇っていたベートーヴェンやシューベルトにはちょっとついていけないと感じていた聴衆、特にアマチュアの音楽家達には非常に好評を博し、楽譜は良く売れたのだそうです。そして1818年にはハプスブルク家の宮廷作曲家に就任し、1831年に没するまでその地位にありました。
このCDで演奏されているのは、出版された際に90、92、93という作品番号が付けられた3つのフルート四重奏曲です。それぞれ4つの楽章から成るかなり大規模な作品です。確かに、ベートーヴェンほどの緊密さはないものの、構成は非常に巧みで、この作曲家が同時代の巨匠たちに引けを取らないスキルを持っていたことがうかがえます。テクニック的にも、メインのフルートのパートはかなり技巧的な面もありますから、ただの「アマチュア」では吹きこなすことは難しいのではないでしょうか。というより、当時の「アマチュア」、あるいは「ディレッタント」達の技量は、実はかなりのものであったという証なのかもしれません。
この3曲の中でちょっとユニークだと思えるのが、作品90の四重奏曲です。まず、楽章の並び方も、他の2曲のような「アレグロ-アダージョ-メヌエット-プレスト」という、当時の交響曲によく見られるものではなく、第2楽章がメヌエット、第3楽章がアダージョという、まるでベートーヴェンの最後の交響曲のような配列になっています。それぞれの楽章もとても魅力的、第1楽章はフルートがメインテーマをオブリガートで装飾するという意表を突くやり方で始まりますすし、エンディングも終わるかに見せてなかなか終わらないというサプライズ仕上げ。第2楽章のメヌエットは、時折ヘミオレが入ってめまぐるしくリズムが変わり、とてもかわいいトリオが付いています。第3楽章は、しっとりとしたテーマがフルートだけでなくヴァイオリンによっても歌われます。そして第4楽章では、あくまでロマンティックなテーマによって、各楽器のスリリングなバトルが繰り広げられています。
もう一つ、作品92の終楽章のロンドのテーマが、メンデルスゾーンの「おお、ひばり」とそっくりなのも、和みます。
ブラウは、おそらく木管の楽器を使っているのでしょう。とてもくつろいだ雰囲気で、オケの中とはちょっと違った面を見せてくれています。テクニックは完璧、細かいスケールや幅広い跳躍など、軽々と吹くさまは見事です。ただ、さっきの作品90の第3楽章のようなゆっくりとしたところでは、もうちょっと深く歌いこんでも、この作曲家の音楽は十分に応えてくれるような気がします。

CD Artwork © Tudor Recording AG
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by jurassic_oyaji | 2016-07-26 22:56 | フルート | Comments(0)