おやぢの部屋2
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2016年 08月 13日 ( 1 )
MELARTIN/Traumgesicht, Marjatta, The Blue Pearl
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Soile Isokoski(Sop)
Hannu Lintu/
Finnish Radio Symphony Orchestra
ONDINE/ODE 1283-2




シベリウスが生まれてから10年後の1875年に、現在はロシア領となっているカレリア地方のカキサルミで生まれたのが、エルッキ・メラルティンです。正直、このあたりの北欧の作曲家にはそれほどなじみがありませんから、この人の名前も今まで全く知りませんでした。それが、CDを出せば必ずチェックしていたハンヌ・リントゥとフィンランド放送交響楽団とのONDINE盤でこの人が取り上げられていたのと、さらに、その曲目の中に「マルヤッタ」というタイトルがあったので、俄然興味が湧いてきました。
実は、最近シベリウスの「交響曲第3番」に関していろいろ調べる機会があったのですが、その時に、同時に作曲を進行していた「マルヤッタ」というタイトルのオラトリオのことを知りました。結局それは完成には至らなかったものの、そこで用いられていたモティーフがこの交響曲の中で「再利用」されているということで、同じ素材がこのメラルティンの作品ではどのように扱われているのかを知りたくなったのですね。
「マルヤッタ」というのは、フィンランドの長編叙事詩「カレヴァラ」の最後に登場するエピソードです。なんでもマルヤッタという名前の少女が野に生えていたベリーの実を食べたことで男の子を出産し、その子がそれまでの王だったヴァイナミョイネンに替わって王となる、というような話なのだそうです。もちろん、それはキリスト教の要素がこの民話にも影響を及ぼした結果なのだ、と説明されています。
シベリウスの場合はその物語の中の「救世主の誕生」や「受難と死」、そして「復活」といったモティーフが、交響曲第3番の中に反映されているのだ、とされています。
それがメラルティンの場合は、ソプラノ・ソロとオーケストラのための、15分にも満たない曲に仕上がっていました。それは、まるでアニメのサントラのような、情景描写に主眼を置いた音楽のように思えます。冒頭からカッコーの鳴き声の模倣が聴こえるのは、確かにマルヤッタがカッコーと語り合うシーンと呼応しています。テキストはもちろんフィンランド語ですが、対訳の英語でそのあらましは理解できます。それによると、ここでは先ほどの「受難」や「復活」といった場面は登場せず、いきなりヴァイナミョイネンが現れて、カンテレを男の子に手渡して去っていく、といった情景で曲が終わっているようでした。シベリウスの場合は3つの部分から成る大オラトリオだったと言われていますが、それに比べるとずいぶんコンパクトな感じがしてしまいます。音楽も常に明るく、耳にすんなり馴染むものでした。
アルバムには、もう2曲収録されています。まずは、「マルヤッタ」の少し前に作られた「Traumgesicht」というドイツ語のタイトルが付いたオーケストラのための作品です。「夜の情景」といった意味でしょうか。サンクト・ペテルブルクでの、アレクサンドル・ジローティの指揮するコンサートのために作られたものです。これは、ヨーロッパ音楽の伝統をそのまま受け継いで、あえて民族的な要素は取り入れていないような作風です。オーケストレーションもとても色彩的な響きを重視していて、ほとんど映画音楽のような派手な作りになっています。そんな中で、それぞれのエピソードが何の準備もなしに唐突に登場するというあたりが、サプライズとしての面白さになっています。時々聴こえてくるドビュッシーのようなモーダルなテーマが、隠し味。初演後に何度か演奏された後はすっかり忘れ去られていたものが、2013年にリントゥとフィンランド放送交響楽団によって81年ぶりに甦演されたのだそうです(もう疎遠ではありません)。
もう1曲のバレエ曲「青い真珠」は、海を舞台にしたおとぎ話。作曲家の晩年の作品で、まるでチャイコフスキーのバレエ曲のようなキャッチーな作品です。最後から2番目の「ヴェールをかぶった魚」というナンバーが、ファンタスティックで素敵です。

CD Artwork © Ondyne Oy
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by jurassic_oyaji | 2016-08-13 20:27 | オーケストラ | Comments(0)