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2016年 09月 08日 ( 1 )
親子で学ぶ音楽図鑑/基礎からわかるビジュアルガイド
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キャロル・ヴォーダマンほか著
山崎正浩訳
創元社刊
ISBN978-4-422-41416-4




イギリスで出版された「Help Your Kids with ...」というシリーズが、「親子で学ぶ〇〇図鑑」と訳されて日本でも出版されていますが、そこにこの「音楽図鑑」が加わりました。本国ではすでに10種類以上の「図鑑」が出ているようですが、その表紙には「著者」であるキャロル・ヴォーダマンという人の写真が載っています。

この方は、イギリスではとても人気のあるテレビタレントなのだそうです。この表紙だと「知的なおねえさん」といった感じですが、

こんな写真だと、ちょっとお子様相手の本には似つかわしくない巨乳のおばさん、というイメージですね。
この方は、ほとんど「客寄せパンダ」的な存在なのではないでしょうか。もちろん、それは商売には必要なこと、実際に原稿を書いた人たちのスキルさえしっかりしたものであるのなら、なんの問題もありません。
元々はイギリス人を対象に出版された本なのですが、こと音楽に関してはイギリスと日本とでは、使われる用語などにしてもかなり異なっています。案の定、ここでは「音」の呼び方について、ちょっとした混乱に陥っているようです。というか、おそらく今の教育現場でも困惑している人は多いような気がしますが、日本のクラシック音楽の世界では「音」の名前に2通りの呼び方が存在しています。それは「音名」と「階名」。しかし、イギリスでは「階名」というものはありませんから、音の名前はすべてA、B、C・・・で表わされています。もちろん、調性も英語で「Cメジャー」、「Aマイナー」の世界です。「階名」である「ドレミ」はどうなっているかというと、この翻訳では「階名」という言葉自体が全く使われておらず、「フランス語、イタリア語、スペイン語では『C D E F G A B』の代わりに『ドレミファソラシ』を使います」とあるだけです。これは困ります(本当は、フランス語の場合は「do」ではなく「ut」が使われます)。この本を使って勉強した人が小学校に入って、初めて「ドレミ」には階名としての働きもあることを知ったら大変でしょうね。
原本にも、明らかにおかしなところがたくさん見られます。ざっと読んだだけで発見できたものをいくつか挙げてみましょうか。

これは、ちょっと自信がなかったので弦楽器の演奏家に聞いてみたのですが、「ボウイングの記号に、このような意味はない」ときっぱり言われてしまいました。まあ、「アップ・ボウ」の場合は、歌を歌う時の「ブレス」の記号とよく似ていますから混同したのでしょうが、なぜ「ダウン」が「フレーズの始まり」になってしまったのかは謎です。

これも、なぜキイを押すとこのようになるのか、金管楽器の専門家でもきっと分からないでしょうね。

そしてこれはちょっと高度な問題。そもそも「ナポリ」などという言葉は、おつまみとは違いますから(それは「なとり」)普通に生きている人は一生のうちにまず使うことのないものです。いや、和音としては日常的によく聴こえてくるのですが、それが「ナポリ」だなんて意識する人はほとんどいません(一例を挙げると、「翼をください」で「飛んでいきたいよ」の「よ」の音の前半に付けられたコードがナポリ)。しかし、「ナポリ」というのは短調の場合にのみ成立する和音ですから、最初の小節は「Cの短三和音」でなければいけません。そうでないと、3小節目のAになぜフラットが付いているか説明できませんよ。上の説明文も、「Cマイナーでは、ナポリの和音はD♭を最低音とする長三和音」ということになります。つまり、その平行調の「E♭メジャー」で「D♭メジャー」がナポリになるのですから、「Cメジャー」でナポリになるのは「B♭メジャー」なんですよ。
そのほか、楽器についてもデタラメなイラストと、おかしな呼び名のオンパレード、この本は、そんな間違いを探して大笑いをするために作られたものなのですから、間違っても「親子で学ぶ」ために使ったりしてはいけませんよ。

Book Artwork © Sogensha Inc.
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by jurassic_oyaji | 2016-09-08 23:05 | ポップス | Comments(0)