おやぢの部屋2
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2016年 10月 22日 ( 1 )
TCHAIKOVSKY/The Nutcracker, Symphony No.4
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Valery Gergiev/
Mariinsky Orchestra
MARIINSKY/
MAR0593(hybrid SACD)




昨年にはロンドン交響楽団からミュンヘン・フィルへと「転職」したように、ゲルギエフは世界中のオーケストラとの共演を果たしています。しかし、それらはあくまで「側室」としての位置づけ、「本妻」であるマリインスキー劇場の芸術監督のポストは、1988年以来30年近く続いています。もうすぐ真珠婚式ですね。今の時代にこれだけ長期の在任なんて、しんじゅられません(信じられません)。
ですから、やはりこのオーケストラとは、格別の親密度で接しているのでしょう。この最新アルバムでのチャイコフスキーも、とても素晴らしい演奏が期待できるはずです。
ところが、まずはSACDということですし、以前のこのレーベルでは元DECCAのエンジニアが作った「Classic Sound」が録音を担当していたので、音に関してはまず間違いはないだろうと聴きはじめると、なんかとても物足りない気分にさせられてしまいました。実は最近、ここの録音でウラジミール・リアベンコ(?)という人がエンジニアとしてクレジットされるようになってから、それまでと全く音が変わってしまっていました。具体的には、弦楽器の音がとてもまろやか、というか、完全にエッジがなくなった甘ったるい音になっているために、パートとしての主張が全く感じられなくなっています。金管楽器が鳴り響いている間でも、前の録音ではしっかり聴こえてきたものが、ここでは完全に埋もれてしまっています。チャイコフスキーでは、こういう場面でこそ弦楽器の芳醇な響きを味わいたいのに、それが全然叶わないしょぼいサウンドになっているんですよね。
このエンジニアに最初に接したのが「ワルキューレ」のSACDを聴いた時。その時に抱いた違和感が、ここに来てまた頭をもたげてきたという感じです。
「くるみ割り人形」は、組曲版で満足している人がほとんどでしょうから、いまさら全曲版を聴くのもかったるいな、と思ってしまうかもしれませんが、今回のSACDを聴くと、やはり一度は全曲を通して聴いてみたいものだ、と痛切に感じてしまいます。組曲には入っていないナンバーが、全体のテーマとして重要な意味を持っていることがよく分かりますし、組曲版のそれぞれの曲の役割もきちんとわかります。
一つ、面白いのは、チェレスタの扱いです。チャイコフスキーは、この新しい楽器を他の作曲家に先駆けてこの作品の中で初めて披露しているのですが、それがメインでフィーチャーされている「金平糖の踊り」は殆ど終わり近くになって登場します。しかし、彼はあたかも「伏線」のように、もっと前の曲(第2幕の1曲目)の中で使っているのですね。これはかなり印象的に聴こえますから、ここで「この楽器は何だろう」と思った聴衆が、「金平糖」で初めてソロを聴いたら、その美しい音色に必ず酔いしれるはずだ、というしたたかな計算を、チャイコフスキーだったらやりかねないな、とは思いませんか?
「くるみ割り」全曲はハイブリッドSACD1枚にはちょっと収まらないので、これは2枚組、そのカップリングで「交響曲第4番」が入っています。これが、とっても柔軟な、自由度の高い演奏です。ゲルギエフは2002年にウィーン・フィルと同じ曲を録音していますが、その時のものとはとても同じ指揮者とは思えないような、細やかで思いの丈を存分に込めた演奏に仕上がっているのです。特に第2楽章では、演奏時間がウィーン・フィルでは9分35秒だったものが今回は11分28秒ですから、全く別のテンポでとても濃厚な音楽を味わうことが出来ます。
第4楽章は、演奏時間はそれほど違っていないのに、こちらの方が表情は豊か、フルートが難しいオブリガートを付ける部分では、まるで指揮者とフルート奏者がお互いの出方をうかがっているような絶妙のコンタクトが感じられます。こんなことをやられたら、フルート奏者はとても吹きやすかったことでしょう。録音のことを考えなければ、これは超名演。

SACD Artwork © State Academic Mariinsky Theatre
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by jurassic_oyaji | 2016-10-22 20:35 | オーケストラ | Comments(0)