おやぢの部屋2
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2016年 11月 12日 ( 1 )
MOZART/Great Mass in C Minor
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Carolyn Sampson(Sop), Olivia Vermeulen(MS)
櫻田亮(Ten), Christian Immler(Bar)
鈴木雅明/
Bach Collegium Japan
BIS/SACD-2171(hybrid SACD)




ほぼ2年前にモーツァルトの「レクイエム」をリリースした鈴木雅明の指揮によるバッハ・コレギウム・ジャパンが、今回は「ハ短調ミサ」を録音してくれました。「レクイエム」では鈴木優人さんの独自のエディションを用いて演奏していましたから、今回も同じようなことをやってくれるのか、と思ったのですが、ブックレットには「フランツ・バイヤー版」と明記されていました。前回の「鈴木版」はいろいろ問題の多い楽譜でしたから、やはりこれは専門家に任せた方が良いという判断なのでしょうか。
実は、「レクイエム」同様に未完に終わったこの作品では、やはり何種類かの楽譜が出版されているのですが、このバイヤー版は楽譜を入手していないので、他の楽譜との違いが把握しきれていません。というか、録音すらもきちんと聴いたこともありません。逆に、最も初期の修復稿である「アロイス・シュミット版」は、楽譜は持っているのにまだ「音」として聴いたことがありません。つまり、これが録音されていたのはかなり昔のことで、それは今ではほとんど手に入らないんですよね。やはり、原典志向がしっかり行き届いた今の世の中では、シュミット版のような悪趣味と言われそうな「でっち上げ」はもはや需要はないのでしょう、現在ではこれを使って演奏する人なんかまずいないようです。
巷では「パウムガルトナーのORFEO盤がシュミット版」と言われているので聴いてみたら、「Et incarnatus est」が終わって聴こえてきた「Crucifixus」は楽譜とは全く別の音楽でしたし。ついでに、やはり巷間「シュミット版は旧モーツァルト全集」と言われていますが、これも正しくはありません。旧モーツァルト全集に入っているこの曲の楽譜はDOVERから出版されていますが、それはシュミット版とは別物、モーツァルトが作った部分しかありませんし、「Sanctus」は8声部の二重合唱ではなく、5声部の合唱になっています。

↑シュミット版

↑DOVER版

シュミット版と同じような趣旨でモーツァルトが作っていない曲を「でっちあげ」た、「レヴィン版」だって、初演者のリリンク以外の演奏にはお目にかかったことはありませんからね。なんでも、出版元のCARUSでさえ、もうこれは見放したのか、フリーダー・ベルニウスとウーヴェ・ヴォルフの校訂による新しい楽譜をもうすぐ刊行する予定なんだそうですから。
「バイヤー版」も、もちろんモーツァルトが作った曲しか含まれていない「原典志向」の楽譜のはずですが、その曲の中にはまだモーツァルトが書き込んではいなかったパートも残っているので、それは適宜補填しているのでしょう。そこで問題になるのが、こちらで取り上げた、「Sanctus」の7小節目の合唱パートです。この部分、最初の「原典志向」の楽譜であるランドン版では、小さな音符で合唱パートが書かれていますから、ここから合唱が始まるのは何かしらの根拠があるのでしょうが、リンク先の新モーツァルト全集では合唱は歌わないことになっています。ですから、「バイヤー版」でも、とりあえずこの版で演奏されているとされているバーンスタインとアーノンクールの録音を聴いてみても、合唱は歌っていません。

↑ランドン版

↑ランドン版の「Sanctus」

それで、今回のSACDなのですが、ここではそこに合唱が入っているのですね。同じ楽譜で異なった演奏形態になっているということは、ランドン版同様、「ossia」ということで2通りの演奏が示唆されているのでしょう。きっと。
合唱はいつもながらのストイックな歌い方、なぜか録音がオーケストラに焦点を当てているので、合唱がほとんど聴こえなくなってしまう場面がたくさんあります。ですから、ここではソプラノ・ソロのキャロリン・サンプソンの華麗な歌を楽しむべきでしょう。なんと、オーボエの代わりにフルートが入っている別バージョンまで紹介されているソプラノ・ソロのためのモテット「Exsultate, jubilate」がカップリングですから。もちろん、彼女の声がより繊細に聴こえるSACDで。

SACD Artwork © BIS Records AB
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by jurassic_oyaji | 2016-11-12 20:34 | 合唱 | Comments(0)