おやぢの部屋2
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2016年 11月 26日 ( 1 )
RUTTER/Requiem, Visions
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Alice Halstead(Sop)
Kerson Leong(Vn)
John Rutter/
The Cambridge Singers, The Temple Church Boy's Choir
Aurora Orchestra
COLLEGIUM/COLCD 139




ジョン・ラッターの「レクイエム」は、特定の団体などから委嘱を受けて作られたものではなく、亡くなった彼の父のために、自発的に作曲したものです。1985年に作られた曲のうち1,2,4,7曲目は3月14日にサクラメントで、全7曲は10月13日にダラスで、アメリカのそれぞれの街の教会の演奏家と作曲家の指揮によって初演されました。ただ、6曲目の「The Lord is my shepherd」は1976年に作ってあった独立した詩編を、そのまま流用したものです。ですから、こちらで彼の「Psalmfest」を取り上げた時に「『詩編23(The Lord is my shepherd)』は、1985年に作られた彼の「レクイエム」のための曲です」と書いたのは、正確さに欠けていました。「Psalmfest」は2度目の「使いまわし」だったのですね。
それが最初に録音されたのは、翌1986年、やはりラッター自身の指揮でケンブリッジ・シンガーズの演奏です。そして、こちらにあるように、その後4種類の演奏によるCDがリリースされることになるのですが、初録音から30年経った2016年の7月に、ラッターは同じ合唱団と新たな録音を行いました。それに関して、彼はブックレットでこう書いています。
確かに、最初の録音はその時点では新しい作品の価値を広く知ってもらうためには役に立っていた。しかし、本当のことを言わせてもらえば、それはそろそろ古臭くなり始めている。この30年間のデジタル技術の進歩によって、新しいハイレゾのフォーマットによる録音が求められているのだ。それと、最初の録音のころにはまだほとんどの人が生まれてもいなかった今のケンブリッジ・シンガーズのメンバーに、今ではすっかり知られるようになったこの合唱作品に対してどのように接することが出来るかを確かめる機会を与えることにも、興味がある。

1つ目の理由は、レコーディング・エンジニアとしても活躍しているラッターの切実な思いなのかもしれませんね。そんなところも含めて、その2つの録音を聴き比べてみました。まず、確かに音が劇的に変わっています。別に新しいから良い録音になる、というものでは決してないのですが、最初に録音が行われた1986年あたりは、まだデジタル録音に切り替わりはじめていた頃ですから、当然フォーマットは16bit/44.1kHzぐらいのものでしょう。そうなると、最終的にはそのCDのフォーマットになってしまうとしても、やはり今のハイレゾ録音に比べると明らかに見劣りしてしまうものになっていました。特に弦楽器の音がとても安っぽくて、それだけでラッターのオーケストレーションまで安っぽいものに聴こえてしまっています。それが、この新録音では見違えるほどに柔らかくふくらみのある音が聴けますから、音楽そのものまでが全然別の、もっと格調のあるものに感じられてくるのですよ。
そして、演奏も全然違います。前回はかなり淡々と譜面を音にしている感じだったものが、ここではより深い表現で確かな訴えかけが感じられます。ラッターは、30年かけて積み上げられてきたこの作品の演奏史を、見事にこの録音に盛り込んでいて、まるで次元の違う世界を見せてくれていたのです。1つの作品が、長い時間をかけて録音と演奏の両面で成長している様を、ここではまざまざと見せつけられた思いです。
もう1点、ソプラノ・ソロのアリス・ハルステッドのすばらしいこと。聖歌隊出身で、「レ・ミゼラブル」や「イントゥー・ザ・ウッド」などのミュージカルにも出演していたこともある彼女のピュアな歌声は、完璧です。
カップリングは、この録音の3ヶ月前に世界初演が行われた「ヴィジョンズ」を、初演のメンバーによって録音したもの。ハープの入った弦楽オーケストラをバックに、ヴァイオリンのソロと聖歌隊の少年合唱が活躍する曲ですが、これも30年後にはもっと完成度の高いものになっていることでしょう。
ちょっとうれしいのは、日本語の帯がこうなっていること。

やっぱり、この方がなじみます。やったー
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by jurassic_oyaji | 2016-11-26 22:05 | 合唱 | Comments(0)