おやぢの部屋2
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2016年 12月 22日 ( 1 )
MOZART/Missa in c
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Sarah Wegener(Sop), Sophie Harmsen(MS)
Colin Balzer(Ten), Felix Rathgeber(Bas)
Frieder Bernius/
Kammerchor Stuttgart
Hofkapelle Stuttgart
CARUS/83.284




12月の初めごろに、ドイツのCARUS出版からモーツァルトの「ハ短調ミサ」の新しい楽譜が刊行されました。それと同時に、その出版社の系列のレーベルから、その楽譜の校訂にもかかわっていたフリーダー・ベルニウスの指揮による録音も発売されています。この出版社は、以前バッハの「ロ短調ミサ」の新しい校訂譜を出版した時にも、同じようなタイアップを行っていましたね。
このCDは、ですからまだ国内で販売されてはいませんし、今のところ発売予定すら伝わっては来ていませんから、楽譜を買うついでにセットで注文してみました。それが、例によって最低ランクの運賃なのにたった1週間でドイツからさっと届いてしまうのですからありがたいものです。
モーツァルトの「ハ短調」は、ご存知のように途中で作曲家が作るのをやめてしまっていますから、フル・ミサの中の「Credo」の後半の「Crucifixus」以降と、最後の「Agnus Dei」は全く作られていません。そして、「Credo」の前半も、合唱による「Credo」とソプラノ・ソロによる「Et incarnatus est」の2曲として声楽パートや低音はほぼ完成されているのですが、その他のオーケストラのパートはまだ書きかけのまま残されてしまっていました(「Sanctus」にも一部欠落があります)。1882年に刊行された旧モーツァルト全集ではそんなスカスカのままの楽譜が出版されていましたが、1983年の新モーツァルト全集では、ヘルムート・エーダーが適宜まだ書かれていないパートを補筆しています。
ただ、当時の慣習では「Credo」では「Gloria」と対になってフル編成を取ることが多いのに、このエーダーの補筆によるオーケストレーションには、「Gloria」で使われていたトランペット、ティンパニ、トロンボーンが欠けていました。ですから、その後の修復版であるモーンダー版やレヴィン版(これは、モーツァルトが作っていない部分も他の作品を流用してフル・ミサを再構築させています)、ケンメ版などでは、それらの楽器がしっかり補われています。

今回の新しい楽譜の校訂には、ベルニウスの他にもう一人、新バッハ全集で「ロ短調」の校訂にあたっていたウーヴェ・ヴォルフも加わっています。ここでも、修復のプランは自筆稿には書かれていない楽器も加える、というものでした。もちろん、その他のパートだけ指定されていて音符が書かれていない部分も埋めることになるのですが、それは全くの「創作」になりますから、今までの修復稿とは全然異なるフレーズが記入されていたりします。
そんなことを総合的に踏まえて今回の楽譜を見てみると、当たり前のことですが、これが「決定的」なものと言うことはできません。どんなに頑張ったとしても、モーツァルトが書いていなかったものを再現するのは不可能なのですからね。あとは、センスの問題になるのでしょうが、「Et incarnatus est」では、ソプラノのソロのバックでヴァイオリンが同じメロディをなぞっているところが随所に見られるというのは、ちょっとダサい気がします。今までのもののようにシンプルに和音の補充だけをしていた方がすっきりするのにな、というのは、もちろん個人的な感想ですが。
このCDでは、最後にボーナス・トラックとして「Credo」の自筆稿の形態がそのまま演奏されています。かつて、「レクイエム」でも同様のことをやっていた人がいましたが、「ハ短調」でそれをやったのはもしかしたらこれが初めてだったのではないでしょうか。実際に元の形を「音」として聴けるというのには、かなりのインパクトがありました。ですから、本編の演奏でも、「Gloria」の最後の「Cum Sancto Spiritu」の壮大な二重フーガが終わった後に、盛大にトランペットとティンパニのリズム隊が聴こえてくると、やはりこれがあるべき姿なのでは、と思ってしまいます。
ベルニウスの手兵である合唱もオーケストラも、極力感情は込めず、この楽譜の目指すところを端正に表現しているのではないでしょうか。

CD Artwork © Carus-Verlag
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by jurassic_oyaji | 2016-12-22 20:21 | 合唱 | Comments(0)