おやぢの部屋2
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2017年 01月 03日 ( 1 )
THORESEN/Sea of Names
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Maiken Mathisen Schau(Fl)
Trond Schau(Pf)
2L/2L 127-SACD(hybrid SACD)




まるで「日本のお正月」という感じのこのジャケットですが、作ったのはノルウェーのレーベル「2L」です。今まで、この超ハイレゾのレーベルでは、合唱を主に聴いてきましたが、これはフルートとピアノによる室内楽です。2Lが本気になってフルートとピアノを録音するとこんなものが出来るという、まさにぶっ飛んだ音が聴こえてきます。
まずはフルート。以前のエミリー・バイノンの演奏などでもそれなりの素晴らしい音は体験していましたが、今回はそれとは全然違います。まるで、コンタクト・マイクでも使っているかのような、それこそ奏者の唇の動きや舌の動き、そして楽器から出ているすべての周波数の音が、もれなく生々しく聴こえてくる、というすごさです。それは、あたかも無響室で録音されたかのような、ノイズに至るディーテイルまでも詳細に聴き取れるものであるにもかかわらず、決して無機質には聴こえないふくよかさを持っているという、恐るべき録音でした。
ピアノも、まるで楽器の天板を外してその中に頭を突っ込んで聴いているような、途方もないリアリティを持った録音がなされています。したがって、スピーカーの間には低音から高音までの弦に当たるハンマー付近の音の粒が広がることになります。低音はまるで地の底から響いてくるような深さ、そして高音はアクションの音まで聞こえてきそうな繊細で粒よりの音色がとらえられています。最高音のあたりになると、もしかしたらプリペアされているのでは、とも思ってしまうほどの、日常的にピアノから聴きとっている音とは次元の違う音がしています。
ここでフルートのマイケン・マティセン・スカウと、ピアノのトロン・スカウの夫婦デュオによって演奏されるのは、ノルウェーの重鎮作曲家ラッセ・トゥーレセンの作品です。彼の合唱曲はこちらで聴いたことがありますが、確かなオリジナリティを持った逞しい作風だったような印象はありました。
しかし、ここでの器楽曲では、それとはまた別の印象、楽器のメカニズムを最大限に生かして、何物にもとらわれない自らの語法をしっかり伝えようとする姿勢が、とても強く感じられます。それはまず、フルートの特殊技法によって熱く表現されます。ピアノとの共演によるタイトル・チューン「Sea of Names」は、この二人によって委嘱された新作ですが、そこでは、このフルーティストは、そんな特殊技法を、まるでジャズ・フルーティストが演奏しているようなとてもフレンドリーな形で提供してくれています。それは、時には日本の尺八のようなテイストさえも演出して、さらに親密さを高めています。
フルートだけで演奏される「With an Open Hand or a Clenched Fist?」というのは、トゥーレセンが1976年に初めてフルート・ソロのために作ったものですが、そのテーマがなぜか1995年に作られることになる、やはりフルート・ソロのための武満徹の作品「エア」ととてもよく似ているのが面白いところです。ただ、武満はそのままの感じで終わりますが、こちらはそのあとに全く別の曲想の部分が入ります。これが、フルートを吹きながら足で結構難しいリズムをたたき続けるという「難曲」です。このあたりはもろノルウェーの民族音楽に由来するイディオムですから、これは武満には無関係。
ピアノとの共演で最後に演奏されている「Interplay」は、1981年にマニュエラ・ヴィースラーのために作られたものです。そのタイトルのように、最初のうちはフルートとピアノがそれぞれ単独に演奏し会っていますが、そのうちに互いに入り乱れて高揚する、という面白い曲です。
ピアノだけの作品も3曲紹介されています。最も新しい「Invocation of Crystal Waters」では、ジョン・ケージのように演奏者に委ねられた部分なども含めつつ、最後はフーガで締めくくるというユニークさ、さらに、彼が多大な影響を受けた「スペクトラム・ミュージック」の残渣が随所に感じられるざんす

SACD Artwork © Lindberg Lyd AS
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by jurassic_oyaji | 2017-01-03 21:10 | フルート | Comments(0)