おやぢの部屋2
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2017年 01月 07日 ( 1 )
MOZART/Violin Concertos
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Isabelle Faust(Vn)
Giovanni Antonini/
Il Giardino Armonico
HARMONIA MUNDI/HMC 902230.31




レーベルのクレジットが以前は「harmonia mundi s.a.」だったものが「harmonia mundi musique s.a.s.」に変わりましたね。なにか、社内の組織替えのようなことがあったのでしょうか。そういえば、以前はノーマルCDでも、ハイレゾ音源を無料でダウンロードできるパスコードが付いてきたことがありましたが、あれもいったいどうなったのでしょう。今回のファウストのアルバムでは、ヴァイオリンがとても繊細な音を出していますから、ぜひハイレゾで聴いてみたかったのですが。
彼女が録音したのは、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲でした。旧全集では全部で7曲のヴァイオリン協奏曲が存在していたはずですが、「6番」と「7番」は偽作の疑いが強く、最近ではまずこういう全集に入ることはないようですね。実際、この2つの協奏曲を聴いたことはありません。いや、「5曲」の中でも、もっぱら演奏されるのは「3番」、「4番」、「5番」の3曲だけでしょうから、「1番」と「2番」も聴いたことはないんですけどね。
今回ファウストと共演しているのは、ピリオド楽器の団体、ジョヴァンニ・アントニーニの指揮するイル・ジャルディーノ・アルモニコです。この指揮者とオーケストラの演奏は数多くのCDで聴いたことがあり、とても個性的で訴えるものの多い演奏が間違いなく味わえる団体として印象に残っています。ですから、そこと共演するにあたって、ファウストも同じ志向性を持ったスタイルを取っているのでしょう。そのために、彼女のモダン楽器にはガット弦を張り、奏法ではノン・ビブラートや装飾を取り入れるという、双方からのアプローチでピリオドのスタイルを作っているのでしょうか。
というような先入観で聴き始めたら、彼女はそんな中途半端なやり方ではなく、もうどっぷりとピリオド楽器そのものの音と、そして音楽を奏でていたではありませんか。これには、ちょっと驚いてしまいました。
そんな「なり切り」がとても効果的に聴こえるのが、さっきのあまり演奏されることのない「1番」や「2番」です。特に、真ん中のゆっくりした楽章での表現は、ぶっ飛んでいます。まずは、もしかしたらモーツァルトの時代様式を超越しているのではないかと思えるほどの自由な装飾です。バロック期の作品では聴き慣れていた華麗な装飾がモーツァルトで使われると、そこには「宮廷音楽」のぜいたくな世界が広がります。確か、フリードリッヒ・グルダも同じようなことをやっていましたね。ただ、彼女の場合はモダン・ヴァイオリンの音色からは逆に華麗さを取り除く、という大胆なやり方で、さらにその時代の音楽に近づいていきます。とりあえず比較してみたのがイツァーク・パールマン、どんな時にもビブラートを忘れないで甘~く歌うのがヴァイオリンという楽器なのだ、というのも一つの完成されたスタイルなのかもしれませんが、ここで彼女が聴かせてくれたまるでファルセットのようにハスキーなピアニッシモのセクシーさに抗うことなど、とてもできません。
アントニーニのチームも、骨太なモーツァルトを演出してくれています。特に強力なのが低弦。単なる低音ではない、しっかりと主張を持ったパートとして、確かなインパクトを与えてくれています。「5番」の終楽章に出てくるトルコ行進曲で使われるコル・レーニョの激しさには、思わずたじろいでしまいます。
モーツァルトには頻繁に出てくる前打音の扱いについても、ユニークなレアリゼーションが見られます。

「5番」の第1楽章のテーマですが、3回連続して出てくる前打音が、最初の2回は前の音が短く不均等(三十二分音符と付点十六分音符)なのに、最後だけは均等に(十六分音符が2つ)演奏しているのですね。このような自由さがとても魅力的。
それと、アンドレアス・シュタイアーが作ったカデンツァとアインガンクも、やはりそんな自由な雰囲気が満載の素敵なものでした。

CD Artwork © harmonia mundi musique s.a.s.
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by jurassic_oyaji | 2017-01-07 20:53 | ヴァイオリン | Comments(0)