おやぢの部屋2
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2017年 01月 08日 ( 1 )
昔のLPはもう手元にありません
 チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲といえば、名曲中の名曲ですから、ニューフィルあたりでもすでに演奏しているのではないか、と思われるかもしれませんが、まだやったことはありません。というか、ヴァイオリン協奏曲自体があまり演奏する機会がありませんでした。やったことがあるのはブルッフの1番、メンデルスゾーン、モーツァルトの5番、シベリウスぐらいでしょうか。いつかはやってみたいですね。
 もちろん、ずいぶん昔から聴いてはいました。小学生ぐらいの時に家にレコードがあったんですね。私の記憶ではCBS原盤のPHILIPS盤、25㎝LPに1曲だけ入っていたような気がします。A面が第1楽章、B面が2、3楽章でしたね。演奏していたのはオイストラフ、オケはオーマンディ指揮のフィラデルフィア管だったはずです。そのころはFMラジオなんてありませんから、私がこの曲に接したのはこのLPだけだった、ということになりますね。この曲の隅々まで、このLPによって私の中に入ってきた、ということでしょうか。
 しばらくして大きくなったころ、テレビでこの曲を見ることがありました。でも、それはなんだか今まで聴いてきたものとは微妙に違うものでした。第1楽章の最初のソロがずっと弾いているところが終わって、オーケストラだけの間奏が始まります。ここはこの曲の中で一番好きなところ、金管楽器は華やかにリズムを刻むとてもカッコよく派手な音楽が続きます。そして、そのあとにちょっとした経過的な部分があって、またソロが入ってくる、というところで、なんか言い知れない違和感があったのですね。その経過部がやたらどんくさいんですよ。それは、派手な音楽が終わった後にほんのちょっとだけ出てきて、瞬時に場面が変わり、続くヴァイオリン・ソロを導き出す、という役割を果たしていたはずのものが、なんだかあっちに行ったりこっちに来たりしていったいどこへ行こうとしているのか分からなくなってしまい、もがきにもがいた末にそのヴァイオリン・ソロにたどり着く、という感じ、これはいったいなんなんだ、と思ってしまいましたね。その頃はまだクラシックの曲にいくつかのバージョンがあるなんてことは知りませんでしたから、これはLPの方が収録時間を超えてしまったので(なんせ25㎝ですから)このかったるいところをカットしてしまったのだな、と納得してしまいましたけどね。でも、それからこの曲を聴くたびに、やはりその部分の違和感は募るばかり、最初に聴いてしまった音源の影響は大変なものがあることを実感していました。
 そして、つい先日、この曲の最新録音のSACDを聴く機会がありました。そのライナーノーツの中で、「アウアー版」というものに触れていました。今ではそういうものがあったな、と思えるようになっていましたが、具体的にどう違うのかは全然知らなかったので、それを読んでみると、このアウアーという人はこの曲を「演奏不能」と言ったその人だというのは思い出しました。しかし、そのあとは理解を示すようになり、自分の校訂したリダクション・スコアを出版しています。ただ、その中に、「ここはカットして演奏しても構わない」という指示を多数入れていたのですね。IMSLPでも公開されていたので現物を見てみたら、そのカットされたところというのが、まさにあの最初のLPでカットされていたところだったことが分かりました。つまり、アウアーさんは私と同じように、この部分を「かったるい」と感じて、そのような指示を付けたのでしょう。これで積年の疑問がやっと晴れました。
 せっかくなので、もう1度それを聴いてみたいと思い、NMLでオイストラフのアルバムを聴いてみたのですが、数種類あったそれらの録音ではノーカットで演奏していましたね。あいにくCBSはここには入っていないので確かめようがないのですが、だれか聴いたことある人、いませんか?
 ただ、しっかり「アウアー・バージョン」というクレジットの入った録音は見つかりました。それは、メニューインがフリッチャイ指揮のRIAS響と1949年に録音した放送音源。バック・インレイにちゃんと書いてありますね。
 それを聴いてみたら、そこはほんとにLPそのものの音楽でした。いやあ、懐かしかったですね。やはりこの方がすんなり入ってきますよ。ただ、楽譜を見ながらよくよく聴いてみると、それはたまたまそのカットの場所は同じでしたが、第3楽章などはアウアーの指示を通り越してさらに大胆なカットを施しています。その結果、この楽章はほぼ半分近くがなくなっていましたね。そして決定的なのは、アウアーが楽譜を完全に書き換えてしまった部分が、さっきの第1楽章の間奏の前にあるのですが、そこをメニューインはアウアーが直す前のチャイコフスキーの楽譜で演奏しているのですよ。つまり、この「version:Leopold Auer」というのは、全くの「偽装表示」だということになります。こういう、ちょっと現物を聴けばすぐわかることをごまかす体質は、未来永劫この業界からなくなることはないんでしょうね。困ったものです。
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by jurassic_oyaji | 2017-01-08 21:47 | 禁断 | Comments(0)