おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
2017年 01月 22日 ( 1 )
ブルックナー:交響曲第8番のハース版第4楽章のフルート・ソリについて
 きのうの「おやぢ」でブルックナーの8番を取り上げたのですが、それの第4楽章のハース版にだけあるフルートのソリについて、とても面白いことが分かりました。スピンオフとして、かなりマニアックな話におつきあいください。
 あの1975年のカラヤン盤で、ゴールウェイが1番を吹いているフルートのトリオを聴いていると、まずはゴールウェイはこの長いフレーズを全くノンブレスで吹いていることに気づきました。それで、他の人でもそんなすごいことをやっているのかどうか知りたくて、色んな録音を聴いてみました。さいわい、手元にあるNMLではもう何百種類(それはウソ)もの録音を聴くことができます。まあ、100種類はないかもしれませんが、今ではワーナーとユニバーサルという、3大メジャーレーベルのうちの2つのレーベルまで網羅するようになったこのストリーミング・サイトだったら、まずはこういう比較を行うには十分なだけのサンプルが提供できるほどのアイテムは揃ってしまいますからね。さらに、最近配信のフォーマットが変わって、ビットレートのより高いAACになったということで、音質的にもそれほどストレスを感じることはなくなりましたから。
 その結果、ここをノンブレスで吹いている人はまずいない、ということが分かりました。実は私も数年前同じパートを吹いたことがあるのですが、その録音を聴いてみても、やはりブレスは取っていましたね。さらに、この部分は「ハース版」にしかありませんが、そのもとになっているのは「第1稿」なので、第1稿の録音も、これはやはりNMLにあったインバルのTELDEC盤を聴いてみました。ここでのインバルはかなり早いテンポだったので、さすがにこの部分もノンブレスで吹いていましたね(このテンポなら、私でも出来そう)。しかし、そこでは別のことで、ちょっと今までの演奏とは違っていることに気が付きました。そのフルーティストは、楽譜通りではなく、何か所かの音をタイでつないでいたのですよ。もしや、と思って手元にあった第1稿の楽譜を見てみたら、確かにそこにはタイが付いていたではありませんか。
 赤枠の中ですね。ただ、これはあくまで「カッコつき」ですから、自筆稿には無かったものを、校訂者のレオポルド・ノヴァークが付け加えたものなのです。確かに、自筆稿にはタイは付いていませんね。
 しかし、この部分に関しては確かにノヴァークの主張はそれなりの意味があるように思えます。つまり、そうすることによって、1番フルートを2番、3番フルートが、同じリズムで追いかける、という形が見事に出来上がるのですよ。私も、ここはタイを付けた方がずっと音楽的だと思いますね。
 そして、最初の話のゴールウェイが、見事にこの吹き方をしていたのです。もちろん、パート譜にはそんなタイはありませんから、このように吹くことを指示したのはカラヤン以外にはありえません。確かに、第1稿の楽譜が出版されたのはこの録音の3年前の1972年ですから、このタイの付いた楽譜を見たという可能性はあります。
 ところが、同じカラヤンが、1988年にウィーン・フィルと録音した時には、このタイを付けていないのですよ。これはいったいどういうことなのでしょう。ベルリン・フィルでは自分の主張は通ったのに、ウィーン・フィルでは通用しなかった、とか。しかし、です。そのウィーン・フィルが1996年にピエール・ブーレーズと録音した時には、しっかりタイが付けられているのですよ。不思議ですね。
 いずれにしても、私がハース版で「タイ」が確認できたのは、この1975年のカラヤン盤と、1996年のブーレーズ盤だけでした。それ以外は、ヴァントもハイティンクもケンペも朝比奈もティーレマンもネゼ=セガンもバレンボイムもシューリヒトもクーベリックも、そしてネーメ・ヤルヴィも、誰一人として「タイ」は付けてはいませんでした。
 しかし、惜しいことをしましたね。私が5年前にこのことに気が付いていたなら、ニューフィルの演奏がそんな貴重な録音の一つになっていたかもしれなかったのに。というか、末廣さんがどんな反応を示したか、とても興味がありますね。
[PR]
by jurassic_oyaji | 2017-01-22 20:48 | 禁断 | Comments(0)