おやぢの部屋2
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2017年 01月 31日 ( 1 )
DINESCU/Tagebuch
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Carin Levine(Fl)
Dauprat-Hornquartet, Sephan Rahn(Pf)
Cynthia Oppermann(Hp), Susanne Zapf(Hp)
WERGO/WER 7324 2


ヴィオレタ・ディネスクという、1953年にルーマニアに生まれた女性作曲家によるフルートのための作品集です。ここで演奏されている曲は、1曲を除いてすべて世界初録音となるのだそうです。
彼女自身の言葉によると「他に選択肢がなかったから」作曲家になったディネスクは、ブカレスト音楽院でミリアム・マルベの教えを受けます。国内の作曲コンクールで「ヴァイオリンとピアノのためのソナタ」が1位を取ったことから、彼女はマルベから他のヨーロッパでのコンクールへの参加を勧められ、マンハイムでのコンクールにも入賞します。そして、授賞式のために訪れたドイツにそのまま留まることになってしまいました。1996年からは、オルデンブルクの大学で作曲科の教授を務めています。
彼女の音楽のベースは、故国ルーマニアの民族音楽なのですが、作品の中にはそれをあからさまに出すことはなく、もっと精神的な次元での作業によって音楽を作っているようです。今回はフルートをメインにしたアルバムですが、その中で演奏されているごく最近の作品では、そんな姿勢が極限までに追及されて、とても密度の高いものに仕上がっているという印象を受けます。
ここで演奏しているフルーティストは、アメリカ生まれのカリン・レヴァインです。多くの国際コンクールに入賞した後は、ドイツの各地の音楽大学で教鞭を取ってきましたが2015年からはワイマールの音楽大学で現代音楽のクラスを主宰しているのだそうです。特に現代音楽に関しては、なんと900曲もの作品を初演しているという、まさにスペシャリストです。
彼女は、このアルバムでは5種類の楽器を使っています。普通のC管フルート、ピッコロ、アルトフルート、バスフルート、そしてコントラバスフルートです。まずは、それぞれの楽器だけのソロが披露されているのが、アルバムタイトルとなっている「Aus dem Tagebuch(日記から)」という、2011年に「I」から「V」までの曲がまとめて作られた連作小品集(ツィクルス)です。それぞれはほんの1分足らずの作品ですが、その内容は驚くほどの多彩さを秘めています。もちろん、様々な現代奏法が駆使されていて、甘ったるいメロディなどはどこを探しても見つかりませんが、それだからこそ直接情感に訴えるものがとても強く感じられます。ディネスクは「魂の世界に入っていく」と述べています。
「V」はコントラバスフルートのソロですが、この楽器が1本だけで演奏されているところを聴くのは、極めて特異な体験なのではないでしょうか。このあたりの楽器になってくると、もはや「フルート」という概念からは遠く離れた、まるで「呪術」のような雰囲気さえ漂ってきます。
もう一つのツィクルスは、やはりフルートだけのための5曲から成る2015年の最新作「Blick(眺め)」です。こちらはもう少し長めですが、やはり3分ほどの短い曲の集まりで、「Tagebuch」とは密接な関係にある作品です。このツィクルスでは、全ての曲でレヴァインは複数の楽器を同時に演奏しています。作曲者によるとここでは「記憶の距離感」がモティーフ、それぞれの楽器、あるいは奏者の持つ全く異なる「記憶」が、同じ時間軸の中で語られます。ですから、おそらく本来は複数の演奏家が同時に同じ場所で演奏するものなのかもしれませんが、ここで多重録音を行っているレヴァインは、その意味をきちんと踏まえた、あたかも自分自身の演奏たちと対峙するかのような姿勢をとっています。何しろ、最大の編成はC管、ピッコロ、アルト、バスがそれぞれ2本に、コントラバスという「9人」の合奏ですから、その中で生まれるインタープレイはほとんどカオスのようなとてつもないエネルギーを放っています。
それ以外に、他の楽器との共演による作品を4曲聴くことが出来ますが、その中では4本のホルンとの共演による「Die Glocke im Meer(海の中の鐘)」が、適度にキャッチーで和みます。

CD Artwork © Wergo

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by jurassic_oyaji | 2017-01-31 23:29 | フルート | Comments(0)