おやぢの部屋2
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2017年 02月 25日 ( 1 )
LOHSE/Hieronymus Bosch Triptychon
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Christoph Maria Moosmann(Org)
Robert Hunger-Bühler(Voice)
Aldo Brizzi/
Bamberger Symphoniker
NEOS/11604(hybrid SACD)


15 世紀のオランダの画家、ヒエロニムス・ボッシュの「七つの大罪と四終 」という作品にインスパイアされた曲なのだそうです。その絵の現物はこれ。
真ん中に大きな円が描かれていますが、これは人間の「眼」を描いたものなのでしょう。「瞳孔」中にいるのはイエス・キリスト一人です(同行する弟子はいません)。その周りは7つに分割されていて、それぞれに「大罪」を現す絵が描かれています。さらに、その外側にはもう4つの円があって、それが「四終」と呼ばれる、人間の最後の出来事です。左上は「死」、右上は「最後の審判」、左下は「地獄」、右下は「天国」です。
その「七つの大罪」と「四終」に、もう一つ、さっきのイエス・キリストのすぐ下に書かれている文字も、この音楽のモティーフになっています。そこには「Cave cave Dominus videt」と書かれているのですね。それは「気をつけよ、気をつけよ、神は見たまう」という意味です。だから、「眼」の中に書かれているのですね。
この三つのモティーフを使って「三部作」を完成させたのは、1943年に生まれたドイツの作曲家、ホルスト・ローゼです。作曲をヘルムート・エーダーとベルトルト・フンメルに師事したそうで、その作品は多岐にわたっています。多くの詩人の歌詞による声楽曲を始め、実験的な劇場音楽や舞踊音楽、さらには哲学や神話、絵画などとのとのコラボレーションによるアンサンブルやオーケストラの作品など、膨大なものです。
とりあえず、このアルバムを聴く限りでは、彼の作風は、あくまでドイツの「正統的」な流れを汲むもので、決して聴きやすいとは言えませんが、昨今の軟弱な「現代音楽」に慣らされた耳には、適度の緊張感が与えられるものであるような印象を受けました。
ローゼは、まず1989年に、オルガン独奏のために「七つの大罪」を元に7つの曲から成る作品を完成させます。それは、先ほどのキリストの真下にある「憤怒」から始まって、反時計回りに「虚栄」、「淫欲」、「怠惰」、「大食」、「貪欲」、「嫉妬」の順に曲が並んでいます。それぞれが2分ほどの短いものですが、そこにはとても切りつめられた極限的な表現が見られます。そこでは、オルガンの機能を最大限に発揮させたダイナミック・レンジと、多彩な音色が駆使されています。「怠惰」では、鐘の音の連打が聴こえますが、ここで使われているオルガンには、そのようなストップが備わっているのですね。さらに、この録音が行われたロッテンブルクの大聖堂には、祭壇の向かい側に設置された大オルガンの他に、祭壇の右上の壁面に設置されたクワイヤ・オルガン、さらに、持ち運びできる小さなチェスト・オルガンと、全部で3つのオルガンがあって、この録音ではそれらをすべてシンクロさせて演奏されていますから、その表現力はハンパではありません。
音楽としては、ボッシュの絵の持つニヒルな側面ではなく、もっと暖かい視点を感じることが出来ます。「淫欲」の音楽からは、なにか恍惚感のようなものが感じられてしまいます。
「四終」では、大オーケストラとオルガンの共演が楽しめます。これは、1997年の初演の時のライブ録音、バンベルク交響楽団のホームグラウンド、「ヨーゼフ・カイルベルト・ザール」には、立派なオルガンが備えられていますが、それが大活躍です。この曲では「Sinfonia da Requiemのような」という注釈がついています。最後の「天国」の楽章は、そんな「救い」の音楽になっていて、エンディングのリコーダー・ソロが不思議な魅力を醸し出しています。
最後の2012年に作られた「Cave cave Dominus videt」は、ミヒャエル・ヘルシェルという人が書いたそのイエスの言葉に対する問いかけから始まるテキストが、ナレーターによって朗読され、そのバックにオルガンが流れる、という作品です。
いずれも、これが世界初録音(「四終」以外は初演ではありません)、SACDならではの精緻な音色が堪能できます。

SACD Artwork © NEOS Music GmbH

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by jurassic_oyaji | 2017-02-25 20:44 | 現代音楽 | Comments(0)