おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ
2017年 02月 28日 ( 1 )
LIGETI/Concertos
c0039487_23503537.jpg


Christian Potéra(Vc)
Joonas Ahonen(Pf)
Baldur Brönnimann/
BIT20 Ensemble
BIS/SACD-2209(hybrid SACD)


リゲティの最新アルバム、作曲順に「チェロ協奏曲」、「室内協奏曲」、「メロディエン」、そしてと「ピアノ協奏曲」、という、「協奏曲」の形態をとった作品が演奏されています。リゲティのアルバムは、つい最近こちらのロト盤を聴いたばかりなのに、またまた新録音の登場です。なんで今頃?と思ったら、去年2016年はリゲティ没後10年という記念年だったのでした。どちらのアルバムも確かに去年のうちにリリースされていましたね。
両方のアルバムに共通しているのが、「室内協奏曲」です。「室内」というぐらいですから、編成も室内楽的で、5声部の弦楽器はそれぞれ一人ずつしかいません。ロトたちはそこでは木管五重奏の作品を録音していたので、編成的には全て「室内楽」ということになります。でも、今回は普通に「協奏曲」というタイトルが付けられている作品が2曲演奏されていますから、普通のサイズのオーケストラと独奏楽器、という編成なのかな、と思ってしまいますよね。しかし、それは名ばかりのことで、そんな「協奏曲」でも、弦楽器は5本しか使われてはいないのです。言ってみれば「一つのパートに一人の奏者」となりますね。これって、ちょっと前まで世の中で騒がれていた「OVPP」ではありませんか。ピコ太郎じゃないですよ(それは「PPAP」)。いや、どちらも「一発屋」という点では同じことでしょうか。
いや、考えてみれば、リゲティが世に知られるようになったのは、まだYoutubeなどがなかった時代に、「動画」によってその作品が多くの人の間に広まったからだ、という見方だってできなくはありませんから、「一発屋」という点ではリゲティその人も当てはまるのではないでしょうか。その「動画」というのは、ご存知「2001年宇宙の旅」というスタンリー・キューブリックの映画です。公開されたのは1968年ですから、もう少しで「公開50周年」を迎えることになりますね。この中で、キューブリックは「映画音楽」としてリゲティの作品を何曲も使っていました。それらはまさに、当時の最新の「現代音楽」ばかりでした。なんせ、公開の1年前にミュンヘンで演奏されたばかりの「レクイエム」の音源を、この映画のとても重要な場面でのライトモティーフとして使っているぐらいですから、キューブリックのリゲティに対する嗅覚には驚くほかはありません。この映画のクライマックスともいうべきボウマン船長のトリップのシーンは、「アトモスフェール」を聴いてもらうために作ったのではないか、とさえ思えてきますからね。
今となっては、この映画でリゲティの曲が使われていなければ(当初は、別の作曲家に新曲を作らせるつもりでした)、彼の作品はごく一部のマニア以外にここまで広く知られることはなかったと断言することが出来ます。そんな「2001年~」で使われた曲のようなテイストを色濃く残しているのが、このアルバムの最初の3曲ではないでしょうか。「チェロ協奏曲」などは、まさに「アトモスフェール」の小型版、といった感じです。
しかし、リゲティは次第にこのようなクラスターを主体にした作風を変えていきます。そして、ここで最後に収録されている「ピアノ協奏曲」では、例えばミニマル・ミュージックの影響などを受けたとされる作風を見せていますし、第4楽章では武満徹が使った音列まで登場します。しかし、全体としてはバルトークなど、彼が作曲家としてスタートした時にモデルとした作曲家の影響が見て取れます。それは、「ムジカ・リチェルカータ」という、初期のピアノ曲集にとてもよく似たテイスト。つまり、リゲティは一回りして「過去の自分」に戻っていたとは言えないでしょうか。
キューブリックが1999年公開の「アイズ・ワイド・シャット」で、この「ムジカ・リチェルカータ」からの曲を使ったのも、それで頷けます。彼は、本物の「リゲティおたく」だったのでしょう。

SACD Artwork © BIS Records AB

[PR]
by jurassic_oyaji | 2017-02-28 23:53 | 現代音楽 | Comments(0)