おやぢの部屋2
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2017年 04月 15日 ( 1 )
MOZART/String Quintets
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今井信子(Va)
Auryn Quartet
TACET/S 223(hybrid SACD)


古典派の作曲家の弦楽四重奏や弦楽五重奏といった、まさに室内楽のエキスのような音楽は、もちろんほとんどのものは聴いたことがありますが、それらはごく自然にいつの間にか記憶の一部に残ってしまっていたものばかりです。正直それらと改めてしっかり対峙して聴きたいという気にはなれませんでした。かつてそのジャンルでは最高峰と言われているベートーヴェンの後期の弦楽四重奏を、スメタナ弦楽四重奏団の演奏で聴いたことがあるのですが、聴きとおすにはスタミナが不足していたのか、そのコンサートの間中ほとんど眠り続けていた、という苦い経験が、強烈なトラウマとなっているせいでしょう。
そんな、わざわざ買ってまで聴くことはなかったモーツァルトの弦楽五重奏曲を聴いてみたいと思ったのは、ひとえにこのレーベルのSACDの音を確かめたかったからです。あの「2L」と同じく、一人の人が録音から制作まですべて行っていて、サウンドに関しては確固たるポリシーを貫いているこのTACETレーベルは、最初にLPを聴いたときこそその盤質のあまりのひどさにがっかりさせられましたが、そのあとに聴いたBD-Aで本来の録音のクオリティをまざまざと知ることになりました。最近は普通のCDでのリリースの方が多くなっているようで、なんともったいないことを、と思っていたのですが(こちらなどは、CDでは全然物足りません)、以前CDで出ていたものがSACDでリイシューされたので、さっそく聴いてみました。
曲目は、モーツァルトの弦楽五重奏曲の全集から、ハ短調(K.406=K6.516b)とハ長調(K.515)の2曲のカップリングです。モーツァルトが作ったヴァイオリン2、ヴィオラ2、チェロ1という編成の弦楽五重奏曲は、完成されたものが6曲残されています。K.174の変ロ長調の曲だけはザルツブルク時代の1773年のものですが、それ以外は1787年から1791年の間のウィーン時代に作られています。この2曲は、その2番目と3番目に作られたものです。
演奏しているのは、このレーベルの顔、アウリン弦楽四重奏団にヴィオラの今井信子が加わったメンバーです。アウリン弦楽四重奏団はマティアス・リンゲンフェルダーとイェンス・オッペンマン(ヴァイオリン)、スチュアート・イートン(ヴィオラ)、アンドレアス・アルント(チェロ)という、ドイツとイギリスの4人の奏者によって1981年に結成されました。リンゲンフェルダー、オッペンマン、アルントの3人は、いずれもECユース管弦楽団のメンバーで、1981年にクラウディオ・アバドが結成したヨーロッパ室内管弦楽団の創設時のメンバーとなります。イートンは、アバドに誘われてスカラ座のオーケストラの首席ヴィオラ奏者を務めていましたが、やはりヨーロッパ室内管弦楽団の創設メンバーとなります。1982年に2つの大きなコンクールで優勝して一躍その名を知られるようになり、それ以来今日までずっと同じメンバーで活躍しています。
かつてはCPOレーベルからシューベルトの全集などをリリースしていましたが、2000年からはこのTACETレーベルと契約、ベートーヴェンやハイドンの全集をはじめ、膨大なレパートリーの録音を行っています。
このSACDの音は、期待通りでした。5つの楽器の音が良く溶け合って、それでいて個々の楽器の表情まではっきり伝わってくるという素晴らしいものです。全体がとても柔らかな響きに包まれていて、うっとりするほどのサウンドに仕上がっています。こういう音だったら、決して眠くなることはなく、いつまでも聴いていたい、と思えてしまいます。
四重奏団の音色はもちろん統一されていますが、そこに加わった今井さんのヴィオラもどちらのパートを弾いているのか全く区別がつきませんでした。
特に、ハ短調の曲は、渋い表情に引き込まれてしまいます。ハ長調の方はそれに比べるとほんの少し散漫に思えますが、それは大したことではありません。久しぶりに室内楽の悦びを感じさせてもらったSACDでした。

SACD Artwork © TACET

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by jurassic_oyaji | 2017-04-15 21:27 | 室内楽 | Comments(0)