おやぢの部屋2
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2017年 05月 02日 ( 1 )
GLUCK, MOZART/Arias
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Camilla Tilling(Sop)
Philipp von Steinaecker/
Musica Saeculorum
BIS/SACD-2234(hybrid SACD)


1971年生まれのスウェーデンのソプラノ、カミラ・ティリングは、国内でのオペラ・デビューは1997年、イェテボリでのオリンピア役(オッフェンバックの「ホフマン物語」)でした。国際的なデビューとしては、1999年のニューヨーク・シティ・オペラでのコリンナ役(ロッシーニの「ランスへの旅」)、そこを皮切りに、世界中のオペラハウスに登場することになります。レパートリーもモーツァルトからR.シュトラウス、さらには2008年のメシアンの「アシジの聖フランチェスコ」と多岐にわたっています。
宗教曲でも大活躍、ラトル/ベルリンフィルと共演した「マタイ」「ヨハネ」にも参加していましたね。
ソロ・アルバムとしては、このBISレーベルにR.シュトラウス(2008年)、シューベルト(2010年)、北欧の作曲家(2014年)と、3枚のリート集を録音していました。ほぼ2年のインターバルでそれらに続いてリリースされたのが、この2015年10月に録音された、グルックとモーツァルトのオペラ・アリア集です。もちろん、ピアノ伴奏ではなく、バックにはオーケストラが付きます。
そのオーケストラは、「ムジカ・セクロルム」という、初めて名前を聞いた団体です。「セクロルム」というのは麻酔薬ではなく(それは「クロロホルム」)、ラテン語で「100年」、転じて「とこしえに」みたいな意味を持つ言葉です。オーケストラとともに合唱も併設されていて、宗教曲などにも対応できるフォーマットを持っている、ピリオド楽器のアンサンブルです。設立したのは、このCDでの指揮者、フィリップ・フォン・シュタインエッカーですが、その時に共に設立にあたったのが、彼の妻でフルーティストのキアラ・トネッリです。シュタインエッカーはかつてはチェリストとしてマーラー室内管弦楽団の首席奏者を務めていましたが、トネッリもやはりそこの首席フルート奏者、もちろん、ムジカ・セクロルムでも一番フルートを吹いています。
イタリアの南チロルを本拠地とするこのアンサンブルは、そんな、ヨーロッパ中の若くて実力のある演奏家が集まっていて、ピリオド楽器だけでなくモダン楽器での演奏も行っています(2013年には、ケルンのフィルハーモニーでブルックナーの「交響曲第1番」を演奏しています)。
まずは、このアルバムの幕開けということで、モーツァルトの「イドメネオ」序曲が、このオーケストラだけで演奏されます。それには、なにかとても新鮮な印象が与えられました。それは、かつてアーノンクールやノリントンといったちょっと前のピリオド系の指揮者の演奏を聴いたときの「新鮮さ」とはまるで異なる、「驚きを伴わない新鮮さ」でした。注目のトネッリのフルートも、少し明るめのピッチで吹いているのでしょう、ピリオド系のオケを聴いた時にいつも感じる、この楽器が全体の中に埋もれてしまうということは全くなく、とても目立って聴こえてきます。
このCDでは単なる「アリア集」とは違って、オペラの中ではそのアリアの前に演奏されるレシタティーヴォがまず歌われています。これは、特に「イドメネオ」のようなオペラ・セリアの場合はオーケストラの伴奏もしっかり書かれているパーツですから、そこでもこのオーケストラの豊かな表現力がしっかり味わえることになります。もちろん、アリアでのオブリガートも素晴らしいものばかり、「コジ・ファン・トゥッテ」第2幕のフィオルディリージのアリア「Per pietà ben mio perdona」でのホルンなどは格別ですね。
そして、ティリングの歌は完璧でした。とてもナチュラルで伸びのある声は、まるで砂漠のオアシスのように素直に心の中に沁みこんできます。コロラトゥーラも全く破綻のない鮮やかさ、なんの不自然さも感じることなく楽しめます。グルックではフランス語で歌われているものも有りますが、その発音もとてもかわいらしく響きます。

SACD Artwork © BIS Records AB

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by jurassic_oyaji | 2017-05-02 20:40 | オペラ | Comments(0)