おやぢの部屋2
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2017年 05月 09日 ( 1 )
BACH/St John Passion(sung in English)
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Sophie Bevan(Sop), Robin Blaze(CT),
Benjamin Hulett, Robert Murray(Ten)
Andrew Ashwin, Neal Davies, Ashley Riches(Bar)
David Temple/
Crouch End Festival Chorus, Bach Camerata
CHANDOS/CHSA 5183(2)(hybrid SACD)

バッハの「ヨハネ受難曲」を録音する時には、どんな楽譜を使ったのかが最初に気になるものですが、この最新のSACDでの表記は「1724, revised 1725, 1732 and 1749」というものでした。
これは確かに「ヨハネ」が初演された年と、その後何度も改訂が施されて演奏されたとされる年が明記されていますね。今までこの曲の数多くの演奏に接してきましたが、こんな表記は初めてお目にかかりました。確かに、他の作曲家の曲でも、発表後に改訂されたものでは、このように最初に作られた年の後にスラッシュを入れて改訂の年を記すのは普通のことです。そして、そのように表記した時には、その演奏は例外なく「改訂後」の形で行われるものです。
しかし、今回のこの年号は、そのような意味は全く持っていないようでした。しかも、最初のあたりの曲は、ここに挙げられている4種類の年号以外の年、1739年に改訂されたものの、バッハの生前には演奏はされなかった楽譜による演奏なのですから、訳が分かりません。
しかも、この録音の場合はオリジナルのドイツ語のテキストではなく、それを英語に訳したものが使われています。その英訳を行った人の名前(ニール・ジェンキンス)だけは書いてありますが、当然これも楽譜が出版されているのでしょうから、バッハの改訂についてこれだけの年号を羅列するのであれば、その英訳の年号もきちんと表記するのが筋というものではないでしょうか。調べてみたら、それは1999年に翻訳されたもので、NOVELLOから出版されていましたね。ジェンキンスという人は歌手で音楽学者なのだそうです。
そんな、バッハの時代には存在していなかった20世紀に新たに作られた楽譜を使うのですから、当然オーケストラも20世紀のスタイルだと思ったら、そちらはピリオド・オーケストラだというのですから、ちょっとびっくりしますね。まあ、「マタイ」でも「Ex Cathedra」がこんな「英語版ピリオド」を演奏していましたけどね。
ところが、その「マタイ」では合唱の人数はリピエーノを除くと50人ほどと、様式的にはぎりぎりバッハの時代に即したものでしたが、今回の合唱団員はなんと110人なんですって。モダン楽器のオーケストラを使う時でも、いまどきこんな大人数の合唱が歌うのは、極めて稀なことなのではないでしょうか。
ここで演奏している「クラウチ・エンド・フェスティバル合唱団」というのは、1984年に合唱指揮者のデイヴィッド・テンプルによってロンドン北部の街クラウチ・エンドに創設されました。主にオーケストラ(もちろん、モダン・オーケストラ)との共演を目指していて、最近ではビシュコフ指揮のブリテンの「戦争レクイエム」とか、ロト指揮のベルリオーズの「レクイエム」といった大人数の合唱を必要とする作品のコンサートに参加しています。テンプル自身の指揮でも、マーラーの「交響曲第8番」を演奏しています。エンニオ・モリコーネやハンス・ジンマーなどの映画音楽作曲家ともつながりがあって、彼らのサウンドトラックを手掛けたり、さらにはロックのミュージシャンとの共演なども手掛けているのだそうです。
そんな、大人数を身上とする合唱団と、20人ほどのピリオド・アンサンブルという不自然なバランスは、まず録音の面での不都合となって現れていました。このレーベルでも最近とみにリリースが少なくなってきたSACDだというのに、なにか精彩に欠けています。オーケストラはともかく、合唱の音が完全に飽和しているのですね。
演奏も、合唱はとことんドラマティック、コラールは目いっぱい熱い思いを伝えようとしていますし、後半の群衆のポリフォニーなどもストレートに感情が現れています。それが英語で歌われていることで、その生々しさは極まります。ただ、それとピリオド楽器との齟齬は、最後まで解消されることはありませんでした。そごが、最大の問題です。

SACD Artwork © Chandos Records Ltd

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by jurassic_oyaji | 2017-05-09 23:18 | 合唱 | Comments(0)