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2017年 05月 18日 ( 1 )
MESSIAEN/Quartuor pour la fin du temps
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David Krakauer(Cl), Matt Haimovitz(Vc)
Jonathan Crow(Vn), Geoffrey Burleson(Pf)
Socalled(Electronics)
PENTATONE/PTC 5186 560(hybrid SACD)


いつものPENTATONEのSACDですが、ジャケットの下の方に「PENTATONE OXINGALE SERIES」とあるのが、ちょっと気になります。これは、このオランダのレーベルが、カナダの「OXINGALE」というレーベルと提携してリリースしたアイテムなのだそうです。2000年に創設されたOXINGALEレーベルは、先駆的なアーティストを擁してクラシックのカテゴリーを超えた斬新なアルバムをリリースしてきました。レーベルのメインのアーティストは、チェリストのマット・ハイモヴィッツと、プロデューサーとしてもかかわっている作曲家のルナ・パール・ウールフです。
このメシアンの有名な作品「時の終わりのための四重奏曲」が収録されたアルバムも彼女のプロデュースで2008年に録音されたもので、すでに2014年にOXINGALEからCDがリリースされていましたが、今回は同じものがSACDになってPENTATONEからもリリース、という形になっています。ただ、最近の録音では最初からPENTATONEからリリースされていますから、実質的にはOXINGALEはPENTATONEのサブレーベルになった、ということなのでしょう。
このアルバムのタイトルは「AKOKA」、そして、その下には「メシアンの『時の終わりのための四重奏曲』の再構成」みたいなコメントが加えられています。確かに、トラックリストには、このメシアンの作品の前後には「Akoka」と「Meanwhile...」という聴きなれない曲名がありますね。これはライブ録音で、これらの曲がメシアンを挟む形で続けて演奏されていたのだそうです。これはいったいどういうことなのでしょう。
「AKOKA」は、ここでクラリネットを演奏しているデヴィッド・クラカウアーの作品、曲名はメシアンの曲を初演したクラリネット奏者、アンリ・アコカへのオマージュが込められているのだそうです(あ、そうか)。ブックレットにはこの曲の楽譜までしっかり載っていますよ。たった1ページしかない走り書きのようなものなので、日本語の帯には「自筆譜の一部を掲載」とありますが、これは間違いなく「全曲」の楽譜です。というより、この曲はきっちり作りこまれたものではなく、プレーヤーの即興的な演奏で成り立つもので、この「楽譜」はその単なる「きっかけ」のようなものを記したものなのですから。
それはまず、クラカウアーのクラリネットとハイモヴィッツのチェロとジョナサン・クロウのヴァイオリンが高い音から低い音までをグリッサンドでつなげるというフレーズで始まります。おそらく、PAでディレイを入れているのでしょう、それぞれのパートは少し遅れてかすかに聴こえてきます。やがて、ジェフリー・バールソンのプリペアド・ピアノも加わり、変拍子のオスティナートの上でのインプロヴィゼーションが始まります。ヘブライ音楽のようなモードが聴こえるのは、アコカがユダヤ人だったことの反映でしょうか。やがて、静かな経過部の後に、アタッカでメシアンの四重奏の鳥の声が聴こえてきます。
もちろん、ここではピアノのプリペアは完全になくなっています。瞬時に外したような気配はありませんでしたから、このライブではピアノが2台用意されていたのでしょうか。
このメシアンは、それぞれの奏者の個性が前面に出てきた、とてもエキサイティングな演奏でした。そこには、あのTashiの録音と同質の、「醒めた熱気」が感じられます。
そして、エンディングを飾るのが、ここでは「Electronics」というクレジットで参加しているカナダのユダヤ系ラッパーSocalled(本名:ジョシュ・ドルギン)のパフォーマンス「Meanwhile...」です。メシアンの演奏をサンプリングしたもののリミックスなどを駆使して、ヒップ・ホップの世界が広がります。これが、どのような状況で「演奏」されていたのか(メシアンの演奏家たちはステージに残っていたのか、とか)、非常に興味があります。
このような形で「再構成」されたメシアンですが、「だからなんなんだ?」という感じ。この作品にこんな小手先の策を弄する必要は、何も感じられません。

SACD Artwork © Oxingale Productions,

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by jurassic_oyaji | 2017-05-18 20:07 | 現代音楽 | Comments(0)