おやぢの部屋2
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2017年 05月 20日 ( 1 )
唱歌・童謡 120の真実
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竹内喜久雄著
ヤマハミュージックメディア刊
ISBN978-4-636-91064-3


「唱歌」や「童謡」についてはかなりのことを知っていると思っているのですが、本屋さんにあったこんなタイトルの本の帯に「名曲誕生伝説のウソを徹底調査!」などという挑発的なコピーが躍っていれば、手に取って読んでみないわけにはいきません。
タイトル通り、ここには全部で120曲の、主に子供が歌うために作られ、時代的には「唱歌」、「童謡」、さらには「こどものうた」とその呼ばれ方を変えてきた歌の詳細なデータが掲載されています。それぞれの歌は1曲ずつ見開きの2ページに印刷されているのが、とても見やすい工夫です。左のページには、歌詞と楽譜、そして作詞者、作曲者はもとより、その曲が初めて世の中に現れたデータまでもがきちんと載っています。特にうれしいのは、今までは「文部省唱歌」という表記だけで、個別の作家の名前が全く分からなかった曲に、しっかりクレジットが表記されていることです。
明治政府がどのような姿勢で「唱歌」を作り、流布させたかということに関しては、以前ご紹介した「歌う国民」という本に詳しく述べられていましたが、そこでは作詞家や作曲家の名前は明らかにしないという方針が貫かれていたのですね。みんなとてもよく知っている曲なのに、単に「文部省唱歌」とだけ表記されて、実際に作った人の名前のないものが、かつてはたくさんありました。それが、近年の研究によってかなりのものの作者がきっちり特定できるようになりました。その成果がここでは生かされています。たとえば、1987年に出版された「ふるさとの四季」という唱歌を集めた合唱のためのメドレーには11曲の唱歌が使われていて、そのうちの6曲が「文部省唱歌」となっていたのですが、ここではそのうちの4曲にしっかり作家の名前がありました。どんな歌にも必ずそれを作った人はいるのですから、それを明確に表記するのはとても大切なことです。
「唱歌」と「童謡」との境界線はなにかということに関しては様々な見解があるでしょうが、単に楽譜が出ただけではなく、それが実際に「音」となって世の中に広まった物が「童謡」だ、という見方もあるかもしれません。ということで、初出データも、ある時期からはレコードがリリースされた時のレーベルやアーティストになってきます。こんな扱いも、おそらく今までのこの手の本にはなかったことなのでしょう。
長年気になっていたことが、初めて腑に落ちた、というものも有りました。それは「おもちゃのチャチャチャ」の作詞家の件です。この曲では作詞家のクレジットは野坂昭如となっていますが、そこに「補作詞:吉岡治」と書いてあるものも有るのです。常々、野坂の小説の世界とこの曲の歌詞との間にはあまりにも大きな隔たりがあると思っていたのですが、その疑問は氷解しました。
ただ、気になることはいくつかあります。巻末には参考文献として「インターネット」というカテゴリーもあるのですが、その筆頭がWikipediaというのは、ちょっと情けないですね。さらに、それらの文献からの「参考」では済まない、ほとんどコピペのような文章にも、しばしば出会えます。先ほどの「おもちゃのチャチャチャ」などは、その一例です。
そして、これは2017年3月に刊行されたばかりの新しい書籍なのですが、実は2009年9月に、同じ著者による「唱歌・童謡100の真実 ~誕生秘話・謎解き伝説を追う~」という書籍が出版されているのです。この件に関して著者は「追記」として、「本書は、最初の構想では第1章から第4章までの100曲で完結していた。それが、さらに20曲について言及する『付章』を加えることになった」とは書いていますが、2009年版に関する言及は全くありません。これは、ちょっとアンフェア。
「カチューシャの唄」を「野口雨情作詞」としているちょっと恥ずかしい誤記(134ページ)もありますし(語気を強めて抗議しましょう)。

Book Artwork © Yamaha Music Entertainment Holdings, Inc.

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by jurassic_oyaji | 2017-05-20 20:51 | 書籍 | Comments(2)