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2017年 06月 22日 ( 1 )
FINLAND
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Marcus Creed/
SWR Vokalensemble
SWR/19031CD


どの国の音楽でも、その国の合唱団以上の共感をもって素晴らしい演奏を聴かせてくれているSWRヴォーカルアンサンブルですから、新しいアルバムは聴き逃すわけにはいきません。今回はフィンランドです。
ここで取り上げられている作曲家は、なんと言っても外せないシベリウス以外では、録音セッションが持たれた時点ではすべてご存命だった、まさに「現代作曲家」ばかりです。それは、録音が完了した数日後に亡くなってしまったラウタヴァーラと、サーリアホという重鎮、そして1955年生まれのユッカ・リンコラ、1970年生まれのリイカ・タルヴィティエという名前を聞くのも初めての方々です。
1928年生まれ(↑ブックレットには1925年と)のラウタヴァーラは、1970年代、1990年代、2010年代と、ほぼ20年のインターバルで3つの作品が紹介されています。1978年に作られた「Canticum Mariae virginis」では、まるでリゲティのようなクラスターが流れる上をプレイン・チャントのようなスタイルの聖歌が朗々と歌われる、という二重構造を持ったもの、結果的にそのような手法は絶妙に「ヒーリング」として成立しうるということを感じさせてくれるもので、以降の彼の基本的姿勢が見て取れます。
次の、東京混声合唱団からの委嘱で1993年に作られたという「我が時代の歌」では、その構成はさらに複雑になっていくにもかかわらず、訴えかける力はより強くなっているようです。2曲目の「最初と最後の瞑想」は、キラキラしたオスティナートのなかを、ゆったりとテーマが歌われるという形ですが、そこからラヴェルの「ダフニスとクロエ」第2組曲の冒頭の夜明けの部分が連想されてしまいました。
それが、まさにこのSWRの委嘱で、この録音の直前に完成した「Orpheus singt」では、テキストがリルケということもあるのでしょうが、まるでロマン派の合唱曲を思わせるようなホモフォニックでシンプルなものに変わっています。
1952年生まれのサーリアホの「Nuits adieux」という作品は、1991年に四重唱とエレクトロニクスのために作られたものを、1996年に4人のソリストと無伴奏混声合唱のために作り直したものです。オリジナルは聴いたことがありませんが、まるで電子音のような効果音を出している合唱と、「無調」のフレーズを歌うソリストという組み合わせはまさに「前衛」音楽です。ただ、合唱は時折しっかりハモっているというのが、「現代的」ですし、後半になってはっきりとリズミカルな部分が登場するのには和みます。
初体験の作曲家、リンコラが2003年の「月の手紙」という作品で見せてくれたのは、まるで合唱コンクールの自由曲にでも使えそうな、適度に難解さを残した手堅さです。そして、タルヴィティエの方は、紛れもない「ジャズ・コーラス」です。ここにヴォイパが入ればそのまんまPENTATONIXになってしまいそうなリズムとテンション・コードの応酬、その中から北欧っぽい抒情性が漂うのですからたまりません。
そして、アルバムの最初と最後を締めているのが、シベリウスです。「恋人」は、彼の代表的な合唱曲、1893年にYL(ヘルシンキ大学男声合唱団)のコンクールで第2位となった作品です。ここでは1898年に改訂された混声バージョンが演奏されています。さらに、1912年には弦楽合奏のバージョンも作られました(↓ブックレットには、なぜかこの弦楽合奏が作られた年代が)。
最後はもちろん「フィンランディア」。無伴奏混声は2種類のバージョンがありますが、ここでは最初に出版されたヘ長調ではなく、変イ長調の方が演奏されています(こちらではなぜか「ヘ長調」となっていますが、もちろんこれはデタラメ)。さらに、アレンジも少し手が入っていて、2番の頭でベースだけ休符なしで拍の頭から入っていたりします。
期待通り、これだけ異なる様式で作られた曲たちを、この合唱団は万遍なく完璧に歌い上げています。極端に遅いテンポで迫る「フィンランディア」などは、まさに絶品です。いや、むしろエロい(それは「インランディア」)。

CD Artwork © Naxos Deutschland Musik & Video Vertriebs-GmbH

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by jurassic_oyaji | 2017-06-22 20:42 | 合唱 | Comments(0)