おやぢの部屋2
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2017年 10月 05日 ( 1 )
LIGETI/Requiem
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Gabriele Hierdeis(Sop), Rene()e Morloc(Alt)
Frieder Bernius/
Kammerchor Stuttgart
Danubia Orchestra Óbunda
CARUS/83.283


リゲティの「レクイエム」の新しいCDがリリースされました。とは言っても、録音されたのは10年以上前、2006年3月のコンサートでのことでした。リゲティが亡くなったのはこの年の6月ですから、別に彼のための「レクイエム」ではなかったはずです。
そもそも、これは放送用に録音されたものでしたから、CDにするつもりはなかったのでしょうが、どういう事情が働いたのか、その音源と、過去にこのレーベルに録音されていた同じリゲティの「ルクル・エテルナ」、さらに、16声部の無伴奏混声合唱のために作られたその「ルクス・エテルナ」をお手本にして、数々のクラシックの作品を多声部の合唱曲に編曲したことで有名なクリトゥス・ゴットヴァルトの編曲作品をまとめて1枚のCDが今頃作られたということのようです。確かに、「レクイエム」は編成こそ巨大ですが、全曲を演奏しても30分もかからないで終わってしまいますから、それだけではアルバムは作れませんからね。
ただ、そんなに短いのには訳があって、この作品では、「レクイエム」の典礼文の前半、セクエンツィアの部分までしか作曲されていないのです。つまり、モーツァルトの同名曲で言うと「Lacrimosa」の部分で終わっているのですね。しかも、そこでテキストの最後に登場する「Amen」という言葉が削除されています。その意味、そして、残りの「Domine Jesu Christe」から「Agnus Dei」までを作曲しなかった理由は、作曲者は語ってはいません。
ここで演奏しているのが、ベルニウス指揮のシュトゥットガルト室内合唱団です。ベルニウスはブックレットの中で、彼とリゲティの作品との出会いについて語っていますが、その中にちょっと興味深いことがありました。この曲は、1965年に完成されていますが、その楽譜を見たベルニウスは、その譜面のあまりに巨大で複雑なのに驚いて、とてもこんなのを見て演奏することなどできない、と思ってしまったそうなのです。たしかに、それが、このCDが出ると知った時に感じた疑問点でした。今まで数多くのアルバムを作ってきたベルニウスですが、彼の本領はあまり人数の多くない「室内」合唱団を使ってのきめ細かい音楽づくりだったはずです。それが、こんなばかでかい編成の作品に取り組むなんて、なんと無謀な、と思いましたね。
しかし、彼の話によると、最初にこの作品のスコアを見た時にはそうだったものが、最近はそれを小さな編成に直した「改訂版」が作られていて、それは50人ほどの彼の合唱団でも演奏できるようになっているというのです。
確かに、調べてみたらペータースから出版されているスコアには「1997年改訂」という表記がありました。ただ、断片的にネットで見つかる情報では、改訂の前後ではそれほど大きな違いはないような気がするのですが。この後、2008年に録音されたエトヴェシュ盤でも、2002年に録音されていたノット盤でもこの「改訂版」が使われていたはずですが、いずれの録音も音を聴く限りではそれほど少ない人数の合唱ではないように感じられます。なによりも、1960年代に録音されたミヒャエル・ギーレンやフランシス・トラヴィス(映画「2001年」のサントラ)による演奏と基本的に変わらないドロドロとした情念が、これらの合唱からは確かに聴こえてくるのです。
ところが、今回のベルニウスの演奏からは、それが全く感じられません。特に「Kyrie」での複雑なポリフォニーからは、おそらくこの作品には絶対に欠かすことができないメッセージが、まるで聴こえてこないのです。こんなものは「リゲティのレクイエム」ではありません。そもそもリゲティ自身が「100人以上の合唱が必要」と言っていることが確認できていますからね。ベルニウスの演奏は、明らかな勘違いの産物です。
カップリングの「ルクス・エテルナ」などは、すでにCDとして出ているものです。マスタリングのせいでしょうか、オリジナルのCDよりも精彩に欠ける音になっていました。

CD Artwork © Carus-Verlag

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by jurassic_oyaji | 2017-10-05 20:37 | 合唱 | Comments(0)