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2017年 11月 11日 ( 1 )
So Is My Love
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Nina T. Karlsen/
Ensemble 96
2L/2L-140-SABD(hybrid SACD, BD-A)


このレーベルのオーナーでプロデューサーのモーテン・リンドベリの趣味には、時には付いていけないほどマニアックなところがあります。今回のアルバムもタイトルがこんな「So Is My Love」という抽象的なものですし、ジャケットを見ただけではどんな作品が入っているのかも分かりませんから、ちょっと戸惑ったのですが、とにかくアンサンブル96の久しぶりの録音なので、聴いてみることにしました。この室内合唱団は、「Immortal Nystedt」(2004年録音)と「KIND」(2010年録音)という2枚のアルバムがこのレーベルから出ていましたが、今回は2016年の録音なので、きっちり6年ごとにアルバムを作ってきたことになります。そして、その3回ともすべて指揮者が異なっている、というのも興味深いところです。このアルバムが彼らとの初録音となるニーナ・T・カールセンは、1983年生まれの女性指揮者で、2011年にアンサンブル96の指揮者兼芸術監督に就任しています。
そこで、まずはこのタイトルの「意味」を、リンドベリがどのように語っているのか、見てみることにしましょうか。彼はこの「So Is My Love」というフレーズに二重の意味を持たせたのだ、と言っています。一つは「私にとって、愛とはこういうものなのよ」、そしてもう一つは「私の最愛の人って、こんな感じよ」という意味なんですって(別に女言葉とは限りませんが)。いまいちその違いが分かりませんが、なんかロマンチックですね。
そんなコンセプトのもとに選ばれた曲が、全部で10曲収められています。登場する作曲家は全部で5人。その中で最も多い5曲を提供しているのが、こちらでこのレーベルにはおなじみの1974年生まれのノルウェーの作曲家トルビョルン・デュールードです。5曲のうちの3曲が、旧約聖書の「ソロモンの雅歌」の英訳をテキストにした「Lovesongs I-III」です。この作曲家らしい適度にハードなところがあっても聴くのは重労働ではなく、基本的に親しみやすい作風が、その3曲では様々なヴァリエーションとして現れています。その他の2曲は、ノルウェーの詩人のテキストによる、まるでシベリウスの「フィンランディア」のような美しいメロディを持つ「Mad en bukett(花束とともに)」と、ウィリアム・ブレイクのテキストによるとても楽しいマドリガル、「Loughing Song」です。
「雅歌」からは、フランスの作曲家ジャン=イヴ・ダニエル=ルシュールの作品も、こちらはフランス語訳のテキストによる「La Vois du Bien-Aimé(美しい恋人の声)」と「La Sulamite(シュラムの女)」の2曲が歌われていて、このアルバムのモットーとしての役割を果たしています。こちらの方はもろラヴェルのような印象派風の音楽です。
アルバムの冒頭を飾っているのが、1985年生まれのノルウェーの作曲家マッティン・オーデゴールの「Love me」という、トーマス・タリスの曲やブルーグラス風のフィドルまでフィーチャーした、「ごった煮」的な作品です。ノルウェーの作曲家ではもう一人、1969年生まれのフランク・ハーヴロイが作った「Rêve pour l'hiver(冬の夢)」という、プーランク風のテンション・コードが美しい曲も加わります。
さらに、なんとカールハインツ・シュトックハウゼンの作品まで。「Armer junger Hirt(あわれな若い羊飼い)」は、1950年に作られた彼の学生時代の習作で、後に彼の妻となるドリス・アンドレアにささげた「ドリスのための合唱曲集」という3つの小品の中の2曲目、ポール・ヴェルレーヌの詩のドイツ語訳がテキストになっています。もちろん、これは彼の後の作風とは無縁の、単に若いころにはいかに伝統的な技法を学んでいたか、というサンプルに過ぎません。5節から成る詩なのですが、なぜかブックレットの対訳では第3節と第4節が入れ替わっています。
指揮者が代わっても、彼らのサウンドは変わってはいませんでした。前2作同様、オスロのウラニエンベリ教会での録音は、熟れた果実のような瑞々しい声が、豊かな残響とともに迫ってくる素晴らしいものです。

SACD & BD-A Artwork © Lindberg Lyd AS.

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by jurassic_oyaji | 2017-11-11 19:28 | 合唱 | Comments(0)