おやぢの部屋2
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2017年 11月 16日 ( 1 )
ティンパニストかく語りき
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近藤高顯著
学研プラス刊
ISBN978-4-05-800818-8


現役のオーケストラ奏者が書いた文章には、どんなライターさんでも決してかなわないリアリティが存在しているものです。たとえば、N響の首席オーボエ奏者の茂木大輔さんがお書きになった「オーケストラは素敵だ」を始めとする一連のエッセイ集など。そこには、茂木さんの修業時代から始まって、様々な体験を通じてオーケストラや、そこで演奏している人々の等身大の姿が描かれていました。
それと同質のテイストを持っていたのが、新日本フィルの首席ティンパニ奏者、近藤高顯(こんどうたかあき)さんが書かれたこの本です。茂木さんの本と同様に、これまで他の出版物の中で披露されていた体験談などをまとめて1冊に仕上げたものです。
「高顯」などという、まるで明治時代の政治家のような難しいお名前なので、さぞかし古風な家系の方なのだろうと想像したら、どうやらごく普通のご家庭みたいだったのでそのあまりのギャップに驚いてしまいました。なにしろ、最初は「家具調のステレオでヴェンチャーズを聴いていた」のだそうですからね。
しかし、そのバンドのドラマー、メル・テイラーのコピーを始めたというのが、彼の楽器演奏の始まりだというのですから、やはり打楽器に対する興味は備わっていたのでしょうね。それから、学生時代は別の楽器を演奏することになっても、最後はやはり打楽器に戻っていくのですが、その時も、あくまでクラシックのオーケストラの中の打楽器であるティンパニを志望したというのは、やはりその「家具調ステレオ」で聴いたベートーヴェンの交響曲、それも、他人のLPのおかげだったんですね。しかも、そのLPの中にプレゼント企画として入っていた応募ハガキを投稿したら、なんとカラヤンとベルリン・フィルのコンサートのチケットが当選してしまったというありえない偶然が重なって、しっかりクラシックへの思いが強まっていきます。
さらに、彼の「出会い」は続きます。藝大の音楽科に進んだのちに再度聴いたカラヤンとベルリン・フィルとのコンサートで、ティンパニを演奏していたオスヴァルト・フォーグナーという人の圧倒的な演奏に衝撃を受けて、ぜひこの人に弟子入りしたいと思ったのだそうです。結局、それも実現することになるのですが、このあたりの、しっかり目標を見据えて、その達成のために全力を尽くすという姿勢はすごいですね。というか、これほどの目標に出会えたということ自体が、なんか現実とは思えないほどの「運命」のようなものを感じてしまいます。確か、オーボエの茂木さんの場合もギュンター・パッシンという「目標」があったんでしたね。
ここではまず、ティンパニには「アメリカ式」と「ドイツ式」という2つの種類があることを知らされます。漠然と、奏者から見て左から低音→高音と並ぶのが「アメリカ式」で、その逆に高音→低音と並ぶのが「ドイツ式」だな、ぐらいは知っていましたが、ここではそれぞれ起源が異なることや、音楽的な意味(ドイツ音楽は低音を重視するので、力が入る右手で低音を叩く)まで教えられました。
もちろん、近藤さんは日本ではまだ知られていなかった「ドイツ式」を勉強することになるのですが、そこではマレットは竹で出来ていて、しかもそれを自作しなければいけないのだそうですね。これも、オーボエのリードを自作するようなものなのでしょうか。
そして、なんと言っても面白いのが、ここで描かれている近藤さんが実際に共演した指揮者たちの素顔ではないでしょうか。山田一雄などは秀逸ですね。指揮が止まってしまった時にオーケストラの奏者たちがどのような対応をとったのか、まさにドラマのようです。
ソロで共演した、同じ打楽器奏者の林一哲(和太鼓)とのバトルの様子などは、まるでジャズのセッションを味わっているようで、とても興奮させられました。
ところで、ティンパニストって、女たらし?(それは「ナンパニスト」)。

Book Artwork © Gakken Plus Co.,Ltd.

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by jurassic_oyaji | 2017-11-16 20:15 | 書籍 | Comments(0)