おやぢの部屋2
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2017年 11月 21日 ( 1 )
Silver Voice
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Kathrine Bryan(Fl)
Bramwell Tovey/
Orchestra of Opera North
Chandos/CHSA 5211(hybrid SACD)


ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団の首席フルート奏者であるキャスリン・ブライアンは、そのオーケストラと頻繁に録音を行っているスコットランドのレーベル「LINN」とこれまでに3枚のアルバムを作ってきましたが、今回はレーベルが「CHANDOS」に変わっていました。当然、エンジニアも今までのフィリップ・ホッブスからラルフ・カズンズになったのでフルートのサウンドもずいぶん変わりました。LINNでは息遣いまで生々しく聴こえていたものが、CHANDOSではもっとソフトで暖かいものになっているようです。ブックレットにカズンズがソリストのためのサブ・マイクのセッティングをしている写真がありますが、それを見るとフルーティストの前ではなく後ろにマイクが立っています。確かに、これだと刺激的な息音は避けて、フルートの響きだけをうまく録音できるのかもしれませんね。
それと、彼女のアルバムは今までずっとSACDでしたが、最近LINNはSACDからは撤退していますから、もしかしたら、SACDで出したかったので、CHANDOSに移籍したのかもしれませんね。
しかし、アルバムのコンセプトは、LINNでの最後のアルバムのタイトルが「Silver Bow」と、ヴァイオリンのレパートリーをフルートで吹いていたのですが、今回は「Silver Voice」で、「声」で歌われるオペラ・アリアをフルートで演奏するという、ほぼ同じものになっています。
ただ、全部がオペラ・アリアでは、いくらなんでもフルーティストのアルバムとしては物足りないということで、最初と最後ではオペラの中のメロディを集めてフルートのために編曲した「ポプリ」が演奏されています。その、最初のものはモーツァルトの「魔笛」。ロバート・ヤンセンスが編曲したものですが、いきなり序曲から始まるのは意味不明(ナンセンス)。その後には、お馴染みのナンバーが次々に現れます。このオペラの中で大活躍しているオリジナルのフルート・ソロもそのまま使われていますね。
そして、そのあとには普通のオペラ・アリアが9曲並びます。中には、ガーシュウィンの「サマータイム」のような渋い歌もありますね。ただ、やはりフルートで吹いて映えるのは、しっとり歌い上げる曲よりは軽やかで華々しい曲の方でしょうね。ですから、この中ではグノーの「ファウスト」からの「宝石の歌」や、「ロメオとジュリエット」の「私は夢に生きたい」あたりが彼女の場合は最も成功しているのではないでしょうか。
いや、しっとり系、たとえばプッチーニの「私のお父さん」とか「ある晴れた日に」でも、磨き抜かれた高音でとても美しく歌われてはいます。でも、何かが足りません。それは、前作のヴァイオリン編で引き合いに出したゴールウェイと比較すると分かってきます。ゴールウェイは、フレーズの最後まできっちり輝かしい音で歌いきっているのに、彼女は最後の最後ではとても遠慮がちに音を処理しているのですね。確かに、この方が「上品な」歌い方にはなるのでしょうが、フルートでは全然物足りません。それと、モーツァルトの「フィガロの結婚」の中の伯爵夫人のアリア「楽しい思い出はどこに」などでは、ピッチがかなり悪いのが目立ちます。
最後の曲は、フルーティストのレパートリーとして定着しているフランソワ・ボルヌが作ったビゼーの「カルメン」のポプリです。オリジナルはピアノ伴奏ですが、ここではイタリアのアレンジャー/指揮者のジャンカルロ・キアラメッロの手になるぶっ飛んだ編曲でのオーケストラ伴奏を聴くことが出来ます。これは、打楽器を多用して、まるでシチェドリンが作った「カルメン組曲」のような「現代的」なサウンドが発揮されていますし、オーケストラの対旋律も、意表を突くようなメロディが使われていたりします。
そんな中で、キャスリンはとても伸び伸びとフルートの妙技を披露してくれています。爽快感という点だけでは、ゴールウェイに勝っているでしょうか。

SACD Artwork © Chandos Records Ltd

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by jurassic_oyaji | 2017-11-21 23:04 | フルート | Comments(0)