おやぢの部屋2
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2018年 01月 04日 ( 1 )
BACH/Goldberg Variations
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Maria van Nieukerken/
PA'dam
Collegium Delft
COBRA/COBRA 0050


バッハの「ゴルトベルク変奏曲」には、「印刷」された楽譜が残っています。バッハの時代には、作曲家が書いた楽譜を写譜屋さんが手書きで書き写すという「写筆譜」の形が、流通させるメインの手立てでした。もちろん、これは大量に作り出すわけにはいかないので、ごく限られた人しか手に入れることはできません。
しかし、この頃はすでに銅版画の技術を応用した楽譜の印刷技術は確立されていました。そして、バッハも晩年に4巻の「クラヴィーア練習曲集」というものを印刷させて出版します。1731年には第1巻として「6つのパルティータ」、1735年には第2巻として「イタリア風協奏曲」と「フランス風序曲」、1739年には第3巻として「ドイツ・オルガン・ミサ」が出版されました。そして1741年に出版された「第4巻」がこの「ゴルトベルク変奏曲」です。
その、印刷された楽譜はIMSLPで現物を見ることが出来ます。表紙はこんな感じ
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そして、肝心の楽譜はこんな感じです。
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職人技、ですね。いったいどのぐらい出版されたのでしょう。
タイトルには「vors Clavicimbal mit 2 Manualen」とあるように、2段鍵盤を持つチェンバロ(クラヴィチェンバロ)のために作られていますが、もちろん現代ではチェンバロだけではなくピアノで演奏されることもありますね。なんたって、この曲のレコード(CD)で最もたくさん売れたのはグレン・グールドがピアノで演奏した録音ですからね。
その他にも、オルガンとか、さらには弦楽合奏などへの編曲も広く演奏されています。となれば、今度は声楽による編曲だってあっても構わないはずです。おそらく、そんなノリで製作されたのが、この「16人の合唱とバロック・アンサンブル」のためのバージョンだったのでしょう。
バッハの器楽曲を合唱で演奏するというアイディアは、古くはあの「スウィングル・シンガーズ」あたりでも見られました。そこで問題になるのは「歌詞」です。オリジナルにはもちろんテキストは付いていませんから、彼らはそれを「ダバダバ」というスキャットでごまかしていました(いや、「解決」していました)。
ですから、今回のCDでも同じような解決法を採るのだろうと思っていたら、この編曲を作ったグスタヴォ・トルヒーリョという人は、しっかり歌詞を「でっちあげ」ていましたよ。例えば第13変奏は「Ruhe sanfte, sanfte Ruh!」という歌詞、なんだか受難曲みたいですね。
最初のテーマでは、耳慣れた旋律はなかなか出てきません。まずは半音低いピッチで(バロック・アンサンブルですから)チェロが低音だけを演奏しています。そこにハミングの合唱が静かに入って和声を重ね、リコーダーがソロを加えたりします。そんなことがしばらく続いた後におもむろに合唱でテーマが始まります。何回か繰り返すたびに他の楽器も加わる、という構成です。ただ、バロック・アンサンブルとは言っても通奏低音としてのチェンバロなどは入っていません。
変奏に入ると、余計な前置きはなく楽譜通りに音楽が始まります。時折、合唱などに新たな旋律線が加わってゴージャスな響きとなったりして、かなり柔軟な編曲の方針が取られているようですね。中には、合唱は全く参加しないで、楽器だけで演奏するという変奏も、全部で7曲ほどあります。
なかなか変化にも富んでいて、編曲自体はとても楽しめるものになっているのですが、聴きはじめてしばらく経つと、合唱の人たちがかなりいい加減に歌っているのが耳についてきます。発声はほとんどアマチュアのレベルで、それだけで引いてしまうのですが、なんせバッハですからあちこちで出てくるメリスマの早いパッセージが、まるで歌えていないのですよ。第11変奏などは、楽器が入らずア・カペラでフーガを歌っているのですが、これは最悪。
この合唱団は、一応「プロ」が集まって様々なジャンルで活躍しているのだそうですが、「バッハ」に関する「プロ」でないことだけは確かなようです。

CD Artwork © Cobra Records

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by jurassic_oyaji | 2018-01-04 20:29 | 合唱 | Comments(0)