おやぢの部屋2
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2018年 01月 09日 ( 1 )
HAMILTON/Requiem
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Ilona Domnich(Sop), Jennifer Johnston(MS)
Nicky Spence(Ten), David Stout(Bar)
Ian Tindale(Org)
Timothy Hamilton/
Cantoribus, Rosenau Sinfonia
NAXOS/8.573849


1973年生まれのイギリスの作曲家/指揮者、ティモシー・ハミルトンが作った「レクイエム」の世界初録音です。これは、第一次世界大戦の勃発から1世紀となる2014年に、その犠牲者の追悼のためのセレモニーが行われるにあたって、2012年にロンドンのセント・ジョンズ・ウッド教会から委嘱されました。
初演は2014年にその教会の音楽監督のマイケル・ケイトン指揮で教会の聖歌隊が歌って行われましたが、その時には全12曲の中の7曲だけしか演奏されませんでした。
全曲が初演されたのは2015年の11月12日のこと、その時には作曲者自身が指揮をしました。彼が創設した合唱団「カントリブス」(田舎の醜女)など、その時のメンバーがそのまま2週間後に再集結して録音されたのが、このCDです。
編成は、4人のソリストと混声合唱に、オルガンと小編成のオーケストラ、テキストは、基本的にラテン語の典礼文ですが、それは例えばフォーレの作品のように、「Dies irae」の部分は全てカットされていますし、その後の「Donime Jesu Christe」も、前半はカットして後半の「Hosteas」から始まっています。そのカットされた部分に挿入されているのが、「戦士の詩篇」と呼ばれている第91篇の英訳のテキストです。
さらに「Prelude」と名付けられた第1曲目では、アイザック・ウォッツの有名な讃美歌「Give us the wings of faith」のテキストが使われています。そこの冒頭にはホルンによってB♭-Fという5度跳躍の音型が現れます。それは、まるでマーラーの交響曲第2番の終楽章の、合唱が始まるちょっと前の神秘的な部分のよう。あの曲のような深淵を味わわせてくれることを期待してもいいのでしょうか。
ただ、その後に「モア」という有名な映画音楽とよく似たメロディで讃美歌がア・カペラの合唱によって歌われると、俄然音楽は俗っぽいものに変わります。これがこの作曲家の持ち味なのでしょうが、なにか小手先だけで感動を引き出そうというあざとさが、チラチラと垣間見られます。
それは、この合唱団の資質によるものなのかもしれません。確かに、歌が上手な人たちが集められてはいるのですが、ピアニシモで歌っている時にはハーモニーもとてもきれいなのに、盛り上がってくるとそれぞれのソリスティックな声がだんだん目立ってきて、結果的に合唱としての重みのある盛り上がりを作ることが出来なくなっているのですよ。
2曲目の「Introit」では、「Requiem aeternam」のメロディには、酔いしれるものがあります。それが「exaudi」からは一転して激しい音楽に変わるのですが、最後にもう一度「Requiem aeternam」が繰り返されるところが、フォーレの作品の冒頭そっくりなのにはがっかりさせられます。
「Kyrie」を経て4曲目が、「戦士の詩篇」です。かなり長大なテキストなのですが、ここで作曲家は、もはやそれに美しいメロディを付けることをあきらめてしまったのでしょう。まるでラップのような、陳腐な抑揚の中にたくさんの言葉を詰め込んだ、全く魅力を感じることのできない音楽です。
「Sanctus」と「Benedictus」の後には、型通り「Hosanna」が続きます。それがなんとも大げさでハイテンションなんですね。さらに、後半にはフーガまで作られています。それがこの合唱団によって歌われると、なんともおぞましいものに変わります。
「Pie Jesu」と言えば、フォーレでもデュリュフレでもラッターでもロイド=ウェッバーでも、ソリストは女声(もしくは少年)と相場が決まっていますが、ここではなんとバリトンで歌われています。まるで女湯に飛び込んだじじい、みたい。
ハミルトンは、この「レクイエム」が委嘱された背景を考慮したのでしょうか、曲の中にさまざまな「戦争」に関するモティーフを取り入れているように思えます。1曲目の冒頭の5度跳躍は軍隊の就寝ラッパなんですって。さらに、後の曲で音楽が盛り上がる時に決まって現れるのがスネア・ドラムのロールです。気持ちは分かりますが、なんか低次元という気がしませんか?

CD Artwork © Naxos Rights Europe Ltd

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by jurassic_oyaji | 2018-01-09 21:50 | 合唱 | Comments(0)