Various Artists
TOWER RECORDS/TWMZ-4今年もまた大型連休の期間に行われる「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」の季節が巡ってきました。これが何回目なのかというのも分からないほど、この催しはすっかり日々の音楽生活の中に定着してしまったようですね。なにしろ、今では「フォル・ジュルネ」という言葉が俳句の季語にまでなっているのですから。
ふぉるじゅるね 今夜のおかずは とん汁ねそして、これも恒例になっていますが、その年のテーマ作曲家にちなんだコンピレーション・ボックスが、今年もタワーレコードから発売されました。
こちらでも取り上げた一昨年のモーツァルト同様、
NAXOSの音源を使って音楽ライターの山尾敦史さんが選曲、ライナーノーツも書いているというものです。なんせ、
10枚組で税抜き
2500円、コンサート帰りのお土産には格好のアイテムです。今年も、有楽町界隈には綿飴や水風船や金魚すくいに混じって、このボックスをうずたかく積み上げた屋台が登場することでしょう。
最初、このパッケージを見たときには「『未完成』全曲入り!」とタスキに書かれているのにちょっとびっくりさせられました。そこまでマニアックなことをやってくれたとは。最近は「7番」と呼ばれているその交響曲は、2楽章までしか演奏されないバージョンが殆どだというのに、それを4楽章まで「全曲」を聴かせてくれるなんて、えらいぞタワー!、えらいぞ
NAXOS!。・・・しかし、どうやらそれは全くの勘違いだったようです。そもそもこのシリーズのポリシーは、1つの曲の最大1つの楽章を、フェイド・アウトなしで「全部」聴かせるということ、ただ、「未完成」に関しては2つの楽章という「全曲」を収録して目玉にした、ということだったのです。そんなことだろうとはうすうす思っていましたが、ちょっとがっかり。
モーツァルト盤同様、シューベルト自身の作品が聴けるのは
10枚のうちの6枚だけです。しかし、その中に宗教曲やオペラが1曲も入ってはいないというのは残念です。ミサ曲などこんな機会でなければ聴くことの出来ないような名曲がいっぱいあるというのに、
NAXOSに音源がないことにはしょうがありません。その代わりと言ってはなんですが、例えばリストがピアノソロに編曲した「ます」などという珍品が聴けるのは嬉しいものです。もっとすごいのは、おなじ「ます」のゴドフスキ編曲版、ミサ曲もないのにこんなものがカタログにあるのですから、
NAXOSというのはほんとにヘンなレーベルですね。というより、こんな超珍品を見つけてきた山尾さんというのは、本当にヘンな人。
さらに、サラ・ヴォーンが歌った「アヴェ・マリア」とか、さりげなくヘンなものを忍び込ませているのですから、油断は出来ません。
その他のCDには、シューベルトが生きていた街ウィーンにちなんだ、ウィーンゆかりの作曲家たちの曲が入っています。グルックからウェーベルンまで、シューベルトに直接の関係があった人もなかった人も並べられているのは、ある意味壮観です。出来れば、グルックの「精霊の踊り」はきちんと中間部のフルートソロが入った「全曲」を入れておいて欲しかったものですが、ひょっとしたらこれが最初の形だ、という啓蒙的な意味もあったのかもしれません。侮れませんね。
最後の1枚は、ウィーンの演奏家たちのヒストリカル音源が集められています。その中で興味を惹いたのが、ブルーノ・ワルターが
1938年にウィーン・フィルを指揮したマーラーの「アダージェット」です。ここで聴けるのは、たっぷりしたビブラート、したがって、ノリントンがその頃のウィーンではまだオーケストラでビブラートをかけて演奏することはなかったと言っているのが真っ赤な嘘であったことが分かります。
選曲同様、油断の出来ないのが山尾さんの軽妙なライナーです。これを読破すれば、シューベルトの裏も表もすっかり分かり、ふぉるじゅるねも数倍楽しめることでしょう。