おやぢの部屋2
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「なごり雪」はスリーコードだけでは弾けません。
 夕べは、私にとっては今年唯一の忘年会でした。ニューフィルではこのところ公式行事としての忘年会は行われていないので、各パートでやりたいところがそれぞれやっているようですが、今年はヴァイオリンとヴィオラが合同でヴァイオリンのメンバーの送別会も兼ねて行うことになったので、そこに混ぜてもらうことにしました。私としてはその送別会の方がメインという位置づけで。
 会場は、かつては東北大学の北門のそばにあったお店なのですが、そこが震災でもう営業できなくなったものが、今年になってやっと別の場所でリニューアル・オープンしたというところです。サイトで前もって調べてみたら、なんだか生バンドが演奏できるようなステージや機材が店内に備えてあったりして、ちょっと面白そう。
 場所は「光のページェント」で賑わう街中ですから、車は置いて地下鉄で行ってみました。ですから、地下鉄を降りて外に出たら、そのあたりはものすごい人だかり、実はまだ実物は見ていなかったので私には初ページェントです。



 しかし、あいにく結構な雪が降り始めています。本当はこのページェントの中を会場まで歩いて行きたかったのですが(もちろんひとりで)、少しでも濡れないように一番丁のアーケードを経由して細横丁まで向かいます。そのあたりは「仙台の歌舞伎町」と呼ばれているホテル街ですから、こんな日でも結構人があふれていますが、どの入り口にも「満室」の表示がありますから、どうなんでしょう。
 ヘタをしたら、間違えてそんな中に入っていきそうにもなりましたが、前もって場所の詳細は確認してあったので何事もなくお店に到着です。入ってみると奥の方に座敷があってお客さんがいるみたいですが、土間にはまだ誰もいません。貸切のようですね。サイトで見たステージもちゃんとあって、マーシャルのアンプなんかも置いてあります。かなり本格的ですね。クラヴィノーヴァですがピアノもありますし。このパートは圧倒的に女性が多いので、私は目立たないように端のテーブルに座ります。
 結局、集まったのは30人ぐらいでしょうか。出てきた料理は、皮ごとまるまんま茹でたジャガイモとか、30センチぐらいの長さのある特大コロッケとか、なんか家庭的で素朴なものばかり、終わりごろにまるでボウリングのボールぐらいの大きさの味噌焼きおにぎりが出て来た時はびっくりしましたね。そもそも、割りばしの袋にはお店の名前がハンコで押してありますし。

 盛り上がってくると、最初にわざわざ楽譜まで用意してギターを演奏した人を皮切りに、なんだか隠し芸大会みたいな感じになってきました。

 そして、宴会の仕掛け人N岡さんが用意したビンゴの時間となりました。なにしろ、iPadでビンゴ用のアプリまで持ってきているのですからすごいものです。もちろん、賞品も彼が用意しました。ところが、もうかなりの人がビンゴを出しているというのに、私はなかなか上がれません。そのうちに、まだビンゴを出していない人はもう2、3人になってしまいました。そうしたら、進行役のK苗ちゃんは「最後に残った人は罰ゲームで一発芸」なんて言い出しましたよ。まさか、私がそんなことになるなんて、あり得ませんが。
 しかし、そのまさか、あと2人となったところで他の人がビンゴになってしまったので、私は一発芸を披露しなければいけなくなってしまいましたよ。いやあ、マジでパニックです。もう泣きだしたいくらい。こうなったらヤケで、「ピアノを弾きます」と言って、ピアノの前に座ります。最初はバッハの平均律の最初の曲(グノーの「アヴェ・マリア」の伴奏)でも弾こうかと思いましたが、ちょっと最後まで弾く自信はなかったので、とっさに作戦変更、これだったらなんとか弾けそうな気がするサティの「ジムノペディ」にしました。しかし、これは「一発芸」だったと気が付いて、そんな真面目なことをやってドン引きされるよりはと、イントロの4小節だけを弾いて、そこでやめてしまいました。これが意外と好評、まずはなんとかなりました。次回はちゃんと全曲弾きますからね。
 もうそれ以上目立つことをやるつもりは全くなかったのですが、このお店のマスターが弾くギターをバックにカラオケ大会が始まると、ついついこんな感じで、もう1ステージ披露してしまいました。人前でギターを弾くなんて、何十年ぶりだったでしょう。もちろん、ニューフィルの人たちは絶対に見たことのない姿です。

 それにしても、このパートは芸達者揃い、これもN岡さんが持ち込んだヴァイオリンで、もう盛り上がること。
 そういえば、ここにいた人のほとんどは知らないはずですが、だいぶ前には「忘年パーティー」という、これはきっちりと前もって仕込んだアンサンブルなどを演奏しつつ、持ち込みの料理を楽しむという公式行事を、旭ヶ丘の大ホールで何回かやっていたことがあったことを思い出しました。
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by jurassic_oyaji | 2014-12-28 10:33 | Comments(0)
The Ultimate Classic Best
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Tower Records Selection
Various Artists
TOWER RECORDS/TNCL-1009-18




今年もまた、「ラ・フォル・ジュルネ」の季節がやってきました。毎年様々なテーマを設けて、いろいろな側面からクラシック音楽を多くの人に聴いてもらおう、という東京のイベントですが、今回晴れて10回目を迎えるということで、今までにこのイベントを飾った10人の有名作曲家を一堂に集めよう、ということになっているのだそうです。ヴィヴァルディから始まってガーシュウィンまで、それは確かに「クラシック」の王道たる文句のつけようのないラインナップです。
そこで、それに便乗しようとタワーレコードがナクソスの音源を集めてこんなコンピレーション・ボックスを作りました。10人の作曲家にそれぞれ1枚ずつCDを割り振って、全部で10枚、その名も「永遠のクラシック・ベスト」ですって。ただ、なぜかCDでの作曲家が「フォル・ジュルネ」の面子とは微妙に異なっているのが気になります。1枚目はヴィヴァルディになるはずのものが、バッハになってたりしますからね。10枚目だって、ガーシュウィンとの抱き合わせでラフマニノフが入っていますし。ただ、こちらは「特別収録」という言い訳が付いているので許せますが、1枚目がなぜバッハなのかという説明は一切ありません。そんなんでいいわけ
実は、タワーがこういうボックスを作ったのは、これが初めてではなく、初期のフォル・ジュルネでは毎回マメに作っていたのですが、2008年のシューベルトを最後に、ぱったりその消息が途絶えてしまっていたのです。もうそんなことから足を洗ってしまったのかな、と思っていたら、それから6年経ってまた世間に登場してきました。
再会したボックスは、なんか様子がずいぶん変わっていました。6年前までは山尾敦史さんが選曲から解説の執筆まで担当していたものが、ここでは選曲は「タワーレコードの専門スタッフ」というだけで、個人の名前は明らかにされてはいません。そして、解説の執筆者が、最近ナクソスの国内盤のライナーノーツなどでよく目にする篠田綾瀬さんに変わっています。このあたりの制作上の変化が、しばらくリリースされなかった原因なのかもしれませんね。とは言え、密かにファンを気取っている篠田さんの解説文が読めるのはうれしいことです。
確かに、その解説は、通り一遍のものとはかなり肌触りが違うものでした。まず、あちこちに登場するのが、昔からこういうものによく使われていた逸話のようなものを、しっかり真実かどうか見極めている潔さです。「ベートーヴェンの交響曲第5番の冒頭のテーマは、運命が扉を叩いているものだ」、とか、「シューベルトの『魔王』は、『作品1』なので彼の最初の作品だ」といった、もしかしたらこういうアイテムの購入層にとってはすでにどこかで刷り込まれてしまった「俗説」に対して、「それは間違いなのよ」ときっぱり否定してくれているあたりが、さすがです。
このような俗説排除の姿勢は、ネット記事の弾劾にもつながります。ラヴェルの「ボレロ」の解説では、最後の部分に使われているオーケストラ内の楽器を全て挙げていますが、これをネット辞書「Wikipedia」と比べてみるとやはり微妙に違っていることが分かります。手軽にコピペ出来て何かと重宝する「Wiki」には、実はこんなに間違いがあるんですよ、と、暗に警告しているに違いありません。
選曲はもちろんごくオーソドックスなものですが、演奏者にはかつてのナクソスのような貧乏臭さは全くありません。この中で唯一全曲が収録されている交響曲であるドヴォルジャークの「新世界」(シューベルトの「未完成」は2楽章までですから、「全曲」ではありません)は、まさに新生ナクソスを象徴するようなこちらのオールソップ盤が使われているぐらいですからね。
なによりも、1枚目1曲目の「トッカータとフーガ」の最初の音のモルデントで、あなたは衝撃を受けるはずです。

CD Artwork c Naxos Japan Inc.
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by jurassic_oyaji | 2014-04-27 00:34 | Comments(0)
BIRTWISTLE/The Moth Requiem
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Roderick Williams(Bar)
Nicholas Kok/
BBC Singers
The Nash Ensemble
SIGNUM/SIGCD 368




1934年生まれのイギリス作曲界の重鎮、ハリソン・バートウィッスルの合唱曲集です。タイトルの「モス・レクイエム」に反応して、つい買ってしまいました。「モス」というのはハンバーガーではなく「蛾」のことです。ジャケットにも、明かりに群がる蛾の群れが描かれていますから、これは間違いなく「蛾のレクイエム」ということなのでしょう。いったいどんな曲なのか、聴きたくなりませんか?
バートウィッスルという人は、「現代音楽の作曲家」によくある、時流に乗って自分の信念を曲げてしまうような軟弱な精神の持ち主ではないようです。このアルバムに収められている、全てこれが初録音となる作品を聴いてみると、その中にはもはや「現代音楽」の世界ではほとんど顧みられなくなってしまったいにしえの技法が、逞しく生き残っている様を見ることが出来るはずです。それは、難解さゆえに聴衆が離れていってしまった「無調」をベースとする技法です。はっきり言って「時代遅れ」の技法ですが、それこそ「予定調和」の世界にどっぷりつかっているこの時代にあっては、逆に新鮮なインパクトが与えられるものになっています。
2003年に作られた「The Ring Dance of the Nazarene」という、ナザレ人(キリスト)と群衆の対話という形で進行する曲は、「ダルブカ」というアラブ系の太鼓がのべつ打ち鳴らされる中で、木管アンサンブルがいかにもなセリエルのフレーズを演奏するというバックが整えられています。そこでバリトン・ソロと合唱はあくまで無調という枠の中でドラマティックな物語を完成させています。ダルブカとの絡みでリズミックな要素もふんだんに盛り込まれていて、退屈することはありません。
この中で最も初期の作品は1965年に作られた「Carmen Paschale」という無伴奏の短いピースです。もちろん無調ですが、ちょっとメシアンのようなテイストもある美しい曲に仕上がっています。途中で鳥の鳴き声のようなものが聴こえてきますが、これは合唱ではなくフルートで演奏されたものでした。テキストの中の「ナイチンゲール」に呼応して、楽譜には「鳥のように自由に」という作曲家の指示で、オルガンのパートが入っているのだそうです。ただ、これは本当はフルートを使いたかったらしく、それがこの録音では実現されたことになります。確かに、ここはオルガンの無機的な音では、合唱との対比があまり感じられないでしょうね。ここでフルートを吹いている、ナッシュ・アンサンブルのメンバーのフィリッパ・デイヴィースは、見事にこの場面にふさわしい異物感を表現しています。
このフルーティストは、例の「蛾のレクイエム」でも大活躍です。この作品は、2012年に出来たばかりの最新作(初演はラインベルト・デ・レーウ指揮のオランダ室内合唱団)、ロビン・ブレイザーの「The Moth Poem」からテキストが使われています、この詩はなんでも、夜中にピアノの中に飛び込んできた蛾が発する音からインスパイアされて作られたのだそうです。そんなサウンドを表現するために、ここでは女声合唱の伴奏として、アルト・フルートと3台のハープが使われています。曲の冒頭でハープの弦が軋むような音を立てるのが、蛾がピアノ線に当たる音なのでしょう。デイヴィースのアルト・フルートは、この楽器ならではの深みのある音色と、超絶技巧で音楽をリードしていきます。
様々な種類の蛾の学名がランダムに挿入された象徴的なテキストに付けられた合唱パートの音楽は、まさに無調のオンパレードですが、それを歌っているBBCシンガーズは、他の曲ともども、いかにも居心地の悪そうな演奏に終始しているように感じられます。おそらく、心から共感できない部分がそのまま表れてしまっているのでしょうが、そんなものを聴かせられるのはとても辛いものです。

CD Artwork © Signum Records Ltd
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by jurassic_oyaji | 2014-04-14 23:07 | Comments(0)
あと1ページ
 今日は全国的に暖かい日和だったそうですね。こちらでも、あれほどしっかり凍りついていた根雪が、もうすっかりグズグズになっていとも簡単にスコップですくえるようになっていましたね。もうツルハシみたいな乱暴な道具を使わなくても大丈夫です。降ったままになって、誰も人が通らないようなところでも、場所によってはすっかり地面が見えるようになってたりしますから、太陽の力は偉大です。アスファルトではさすがにそうもいきませんが、ほんの1週間前にはとても車が入って行けそうもなかった駐車場も

このとおり、しっかり地肌が見えるようになっていましたよ。春はもうすぐですね。

 なんたって、明日からはもう3月なんですから、いつまでも雪が残っているわけはありません。そして、3月になれば最初の火曜日には新しい「かいほうげん」を発行しなければいけません。つまり、今日までには全ての編集作業が終わっていなければいけなかったのですが、結局1ページ分だけ手つかずで終わってしまいましたよ。いや、別にさぼっていたわけではなく、目いっぱい仕事をして普通だったら間違いなく終わっていたはずのスケジュールだったのですが、なぜか終わりませんでした。それは、単純作業で思いのほか時間が取られてしまったからです。今回は、お願いしてあった原稿も全て間にあうように届いていましたから、あとは写真や画像を揃えればいいだけのことだったのですが、その「画像」が問題でした。つまり、「展覧会の絵」のトークに必要な譜例を揃えるのに、とても手間がかかってしまったのです。
 たとえば、こんな楽譜です。

 一見、普通のスコアの断片のようですが、これを作るためには、細かいところで切り貼りが必要でしたし、最後の小節などは別のページにあったものですから、段の間隔も違っていて、それこそ1段1段貼り付けなければいけませんでした。こんなものを結局15枚ぐらい作ったでしょうかね。
 あとは、ふと思いついて、前に作ってあった画像をやめて、こんなのに差し替えたりしていました。

 最後の段階になって、どうしてもスペースが足らなくなってしまって、少し隙間を作るために何か方法がないか考えていたら、こういう風に「ピンで止める」という形にするとかなり無理なレイアウトでもそれらしく見えることが分かりました。これでまた新しい「技」を使えるようになりましたよ。言ってみれば「反則技」ですがね。
 そんなわけで、このところ全然CDなどが聴けてません。聴きながら仕事をすると、結局どっちも集中できないということになってしまうもので。聴かなければいけないものはたくさんたまっているのですがね。最近EMIのカタログが殆どWARNERに移った関係で、e-onkyoからラトルのアイテムが大量に「ハイレゾ」でリリースされているので、それはぜひEMI時代のCDと聴き比べてみたいな、とかね。ところが、チラッとサイトをのぞいてみたら、それはすべて24/44.1という、殆どCDと変わらないスペックだったので、ガッカリしてしまいました。こんなのは聴いたってしょうがありません。というか、中にはSACDで出ていたものもありましたが、そのマスターもこんなものだったのでしょうかね。確かにEMIの場合、よくCDもSACDもあまり変わらないようなことを言われていましたからね。元の録音はこんな「ローレゾ」なわけはありませんから、こんな舐めた話はありません。
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by jurassic_oyaji | 2014-03-01 06:54 | Comments(0)
Paths Through The Labyrinth - The Composer Krzysztof Penderecki
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Anna Schmidt(Dir)
C MAJOR/9861




先日NHK-BSで、昨年2013年に80歳を迎えたポーランドの作曲家、クシシトフ・ペンデレツキのドキュメンタリー映像を放送していました。これはいずれBDDVDとしてリリースされるということなので、ちょっと先走ったレビューです。
タイトルが「迷宮の小道」という大層なものですが、これはこの中で作曲家自身がたびたび口にしている「作曲とは、迷路の中を歩いているようなものだ」という、分かったような分からないような語録に由来するものなのでしょう。しかも、その「迷宮」というか、「迷路」の中を実際に歩き回っている彼の映像がシンクロしているという具体性までくっついていますから、いやでも納得させられてしまいます。そこで驚いてしまうのは、その生垣で作った背の丈ほどもある迷路などが点在している広大な庭園が、彼の自宅の敷地内にあるということです。いや、実はそんな瀟洒な庭園などはごく一部分、その背後に広がる巨大な樹木が生い茂る、なんと30ヘクタールにも及ぶ山野が、そのまま「自分の土地」だというのですから、彼はまさに「大地主」いや、もっとはっきり言えば「大金持ち」です。ロック界のスーパースター、マイケル・ジャクソンの「自宅」だって、これほど広くはないのではないでしょうか。
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そう、ロック・アイドルならいざ知らず、かつては「前衛」と言われていたクラシックの「現代作曲家」が、こんなにリッチな生活をしているなんて、とても信じられない、というのが、まずこの映像を見ての率直な感想なのでした。我ながら、なんと浅ましい。
そんな田園風景から、いきなり画面が野外ロック・フェスの会場へと変わります。詰めかけた何万人という聴衆の前に姿を現したのは、ペンデレツキその人、そして、彼に指揮されたステージ上の弦楽オーケストラが奏ではじめたのは、なんと彼の半世紀前のヒット曲「広島の犠牲者にささげる哀歌」ではありませんか。作られたころはお客さんはみんな眉間にしわを寄せて、ひたすら拷問のような音響に耐えていたというこの「前衛作品」に、お客さんたちは何の抵抗もなく、それこそ大音響のヘビメタでも聴くような感覚で、喝采を送っているのですよ。演奏者がアップになると、彼女ら(女性奏者が圧倒的に多いようでした)はいとも嬉々とした表情で、時には笑いながら、この、本来は難解そのものの音楽を全身で楽しんでいるようでした。
なにかが確実に変わっています。この頃のペンデレツキの作品に対して、今まで考えられなかったような方面からの「ファン」がいつの間にか生まれていたのですね。これに関しては、思い当ることがありました。それは、以前こちらでご紹介したレディオ・ヘッドのメンバー、ジョニー・グリーンウッドのアルバムです。これはこの映像のフェスの1年前に録音されたもの、これはまさにこのアルバムを引っさげてのライブだったのでしょう。もちろん、ここではそのペンデレツキの熱狂的なファンであるグリーンウッドの作品も演奏されていました。
ここで重要なことは、このフェスで聴衆が熱狂的に聴いていたのは、ペンデレツキの「過去の」作品だったということです。彼らが現在の彼の作品を聴いたら、いったいどのように感じるのか、非常に興味のあるところです。
このドキュメンタリーのハイライトは、先ほどの自分の地所の中に作られた、「クシシトフ・ペンデレツキ・ミュージック・センター」という名前のコンサートホールの、こけら落としコンサートです。彼の資産は、途方もないガーデニングだけではなく、ホールを1軒やすやすと建ててしまえるだけのものだったのです。この映像で語られているのは、彼より120年ほど前に生まれた作曲家は、自分のホールを作るためにパトロンに無心して国家予算をつぎ込ませたというのに、現代の作曲家はそれを自費でやれるほどお金を持っていた、というお話です。BDが出たらじひ(ぜひ)見てみてください。
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Package Artwork © C Major Entertainment GmbH
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by jurassic_oyaji | 2014-01-22 20:27 | Comments(0)
Jurassic Awards 2013
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今年も第2回(笑)ジュラシック・アウォードの発表の時がやってきました。今年も、絶対に役に立たないランキングをご覧くださいね。
その前に、カテゴリーごとのエントリー数の昨年比を見てください。

  • 合唱(今年54/昨年52)→
  • オーケストラ(39/50)→
  • オペラ(24/13)↑2
  • フルート(16/17)↓1
  • 書籍(16/13)↑1
  • 現代音楽(11/14)↓2
  • ポップス(6/11)→

こんな感じで、今年はオペラの躍進には目覚ましいものがありました。やはり、VさんとWさん関係のリリースが格段に多かった影響なのでしょう。そんな風に、世の中の流れを敏感に反映している「おやぢの部屋」です。
■合唱部門
山田和樹指揮の東京混声合唱団による「武満徹全合唱曲集」は、全く期待していなかっただけに、その素晴らしさには衝撃を受けました。プロの合唱団も捨てたものではありません。次点として、数多くリリースされたブリテンの「戦争レクイエム」の中から、その原点ともい言うべき自演盤を。これは、BAで蘇った録音も見逃せません。
■オーケストラ部門
なぜか、新しい録音には「これぞ」というものがなく、最後に滑り込んだジェームズ・ジャッドのマーラーの「交響曲第1番」が大賞になってしまいました。初期のデジタル録音ですが、とてもCDとは思えない音には驚かされました。次点も、昔のアナログ録音によるクーベリックのマーラーの「交響曲第3番」。もちろん、SACD化が最大のメリットになっています。
■オペラ部門
これは文句なしに「コロンのリング」です。原曲を半分の長さにしたというアイディアとともに、演出の斬新さには完全にやられました。次点は、これも昔の映画をBD化した「ジーザス・クライスト・スーパースター」です。
■フルート部門
ペーター=ルーカス・グラーフの日本でのリサイタル盤には、様々な面で刺激を受けました。ここまで現役で活躍できるのは奇跡です。次点はゴールウェイの名盤のオリジナルジャケットによる復刻版です。彼にも、グラーフの年齢まで頑張ってほしいものです。
■書籍部門
記念年にちなんだ「ヴェルディ/オペラ変革者の素顔と作品」は、時宜を得た素晴らしいものでした。著者ご本人(たぶん)からのコメントが寄せられたのも、高ポイント。「嶋護の一枚」は、実は著者から直接本を贈っていただいたもの。いや、そんなことを差し引いても教えられることの多い本でした。
■現代音楽部門
そろそろ「現代音楽」というカテゴリーは、いらなくなるのかもしれません。そんな中で、ラベック姉妹がミニマル・ミュージックに挑戦した「Minimalist Dream House」は、今の「現代音楽」の姿を見せてくれていました。
■ポップス
PPMの初出音源による「Live in Japan, 1967」は本当に素晴らしいものでした。必ずしもベストではない機材でも、演奏が良ければ全く気になりません。また、CTIの「春の祭典」がハイレゾ音源で聴ける日が来るなんて、思ってもみませんでした。

ハイレゾに関しては、やっと環境が整ったのでいろいろ試している最中ですが、正直こんな不完全な形で広まってしまうのでは後々問題が出てくるのではないかという失望感を味わっています。なにしろ、「e-onkyo」では、ファイルの名前すらまともに付けられないのですからね(ソートをかけたら曲順が変わってしまいました)。基本的なところを押さえないままに走り出しては、本当に良いものの足を引っ張るだけです。中には、単にアップサンプリングしただけのものをハイレゾと偽って販売しているものもあったりしますからね。
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by jurassic_oyaji | 2013-12-31 22:55 | Comments(0)
Okihiko Sugano/Recording Collection
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Amadeus Webersikne(Org)
Janos Starker(Vc),
岩崎淑(Pf)
Auréle Nicolet(Fl),
小林道夫(Pf)
宮沢明子(Pf)
AUDIO MEISTER/XRCG-30025-8(XRCD)




菅野沖彦さんというのは、ほとんど「伝説」となっているレコーディング・エンジニアの名前です。あるいは、ちょっと前までは「オーディオ評論家」として広く知られていたのではないでしょうか。4枚組のXRCD、それにしても、作曲家や演奏家ではなく、一人のエンジニアの仕事のアンソロジーなんて前代未聞です。
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実は、菅野さんに関してはこんな本が、2007年に出版されています。ここでもご紹介した、クラシックの名録音を集めた本の著者、嶋護さんが作った、菅野さんのすべての録音のディスコグラフィーです。その中では菅野さんの録音の素晴らしさを実証するために、実際の「音」が付録のハイブリッドSACDに収録されています。音源はマスターテープから直接DSDにトランスファーされたもの、確かに、それを聴けばこのエンジニアが飛びぬけて優れた耳を持っていたことがはっきりとわかります。
この本が今回のXRCDを企画するうえで何らかの意味を持っていたことは明らかです。この中で「古今の無数にある録音の中でも最高峰のランクに属するもの」と持ち上げられている、シュタルケルのチェロ独奏による「パガニーニの主題による変奏曲」など、SACDのサンプルに含まれている曲が収録されているのですからね。マスタリングはもちろん「XRCDの産みの親」杉本一家さんですから、おそらく最高のものが提供されることでしょう。同じマスターテープから作られたXRCDSACDとの「真剣勝負」を、この耳で確かめることが出来るはずです。
まずは、シュタルケルが弾いたハンス・ボタームントというチェリストが作った「パガニーニ変奏曲」から聴き比べてみましょうか。驚いたことに、これは、チェロの音色自体が全く違っていました。良く聴いてみると、SACDではかなり目立って聴こえていたヒスノイズが、XRCDではずいぶん少なくなっています。杉本さんは、ノイズを軽減するような措置を取っているのでしょうか。正直、これは意外でした。こんなことをしてしまったら、菅野録音の肝心なものがなくなってしまいます。実際、ここでは演奏の勢い自体が全く変わったもののようになってしまっています。
もっと違いがはっきりしているのがウェーバージンケが演奏しているバッハの「オルゲルビュッヒライン」からの「O Mensch, bewein' dein' Sünde großBWV622です。XRCDでは、ペダルの低音がヘ音譜表の下の加線E♭以下の音が全然聴こえないのですよ。SACDでは、その3度下のCまで、これでもかというほど重低音が鳴り響いているというのに。これは、タイムコード01:5002:17付近ではっきり聴き分けられます。おそらく、これはマスタリング云々以前の問題で、使ったマスターテープが別物だったのでしょう。嶋さんの本にはそのあたりのコメントがあって、LPを作るときには製造上の理由でこの重低音はカットされていたというのですね。確かにこんな重低音は、普通のカートリッジではトレースできません。杉本さんが使ったのは、このLP用のマスターテープだったのでしょう。嶋さんは、その前のもの、録音の際に回っていた4チャンネルから2チャンネルにミックスダウンしたマスターを使ったのだそうです。
しかし、杉本さんともあろう人がこんなお粗末なことをやっていたなんて、ちょっと信じられない思いです。そもそも、XRCDにはマスタリングの日にち以外のデータは全く掲載されていませんでした。シュタルケルの場合も、嶋さんの本では「菅野さんが録音したものではない」と明言されているコダーイが収録されているのですから、この企画自体が相当いい加減なリサーチのもとに進められていたとしか思えません。
とても残念なことですが、菅野さんの録音の本質を聴きたいと思っている人は、こんなXRCDを買ってはいけません。ブックレットに嶋さんのインタビューが載っていますから、何も知らなければこれだけで信用してしまうのでしょう。極めて悪質です。

XRCD Artwork © Japan Traditional Culture Foundation
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by jurassic_oyaji | 2013-04-27 23:19 | Comments(0)
Jurassic Awards 2012
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今年も「おやぢの部屋2」をご覧いただき、ありがとうございました。おかげさまで、2日に1本というペースをきっちり守って書き続けた結果、本年中には全部で182本の「おやぢ」をアップすることが出来ました。これも、ひとえにご声援を賜りました皆様のおかげです。
そこで、今年からは、「ジュラシック・アウォード」というものを設立して、この1年間に見たり聴いたりしたアイテムを振り返ってみることにしてみました。某レコード芸術の「レコード・アカデミー賞」などには絶対に登場しないヘンなラインナップをお楽しみください。
カテゴリーは、ブログで便宜上付けているものに従って、7つの部門を用意しました。実はブログのカテゴリーはもっとあるのですが、作ってはみたけれど、実際に当てはまるものがあまりにも少なかったものは割愛させていただきます。「室内楽」とか。
カテゴリー・ナンバー1:合唱曲(エントリー数52
バッハの「マタイ受難曲」(4/5アップ/BD)はラトル指揮のベルリン・フィルのライブ映像です。ピーター・セラーズの演出で、フィルハーモニーの客席まで使ったシアター・ピースとしての「マタイ」を見せてくれました。なによりもすごいのは、オーケストラのメンバーまでがしっかり「演技」していたことでしょう。ソリストに寄り添うようにオブリガートを暗譜で演奏していたのは感動的でした。次点はトルミス(8/15アップ)と、久しぶりのデュリュフレ(12/15アップ)です。
カテゴリー・ナンバー2:オーケストラ(エントリー数50
アラン・ギルバート指揮のニューヨーク・フィルによるニールセンの交響曲第2、3番(12/5アップ)では、なによりも、しばらくCDのリリースから遠ざかっていたかに見えたアメリカのメジャー・オケの演奏が、SACDで聴けたことに感激。しかも、SACDのスペックを最大限に生かした素晴らしい録音にも感激です。当然のことながら、次点のティツィアーティの「幻想」(4/19アップ)とリットンの「火の鳥」(3/2アップ)も、SACDならではの音の良さでのランクインです。
カテゴリー・ナンバー3:フルート(エントリー数17)
本当の意味でインパクトのあるアルバムはありませんでしたが、寺本さん(12/23アップ)、デュフォー(2/18アップ)、故フォーグルマイヤー(9/4アップ)あたりが、素晴らしい出来を見せていました。
カテゴリー・ナンバー4:現代音楽(エントリー数14
ヴィット指揮のペンデレツキが3枚(11/48/95/3アップ)出ましたが、いずれもが選曲の妙でこの作曲家の問題点を暴いてくれていました。「ビサイズ・フェルドマン」(1/19アップ)とジャック四重奏団(8/27アップ)は、エンターテインメントとしての側面が光っていました。
カテゴリー・ナンバー5:オペラ(エントリー数13
ショルティの「リング」(12/26アップ)は、今年最大の収穫でした。本来は再々リマスタリングのCDのパッケージなどですが、「おまけ」について来たBD-Audioがとんでもないものでした。今までのCDや、そしてSACDは一体何だったんだろうという気にさせられるほどのものすごいリアリティあふれる音でした。「オペラ座の怪人」のロイヤル・アルバート・ホールでのライブ(1/29アップ)と「ドン・ジョヴァンニ」(9/22アップ)はそれぞれコンサートホールで演奏されたプロダクション。新しい可能性を示していました。
カテゴリー・ナンバー6:書籍(エントリー数13
ビートルズのエンジニアであったジェフ・エメリックの著書(1/15アップ)は、貴重な資料としての価値が満載、サンフランシスコ響のレポートをまとめた本(10/20アップ)では、最新のオーケストラ事情を知ることが出来ます。マーラーの交響曲第2番の新校訂スコア(8/5アップ)のようなものまで、簡単に入手できるようになった時代にも感謝。
カテゴリー・ナンバー7:ポップス(エントリー数11
LPでリリースされたビートルズの「サージェント・ペッパー」(11/17アップ)と「アビ―・ロード」(11/15アップ)を、昔のLPと何種類かのCDと聴き比べることによって見えてくるマスタリングやアナログ磁気テープの劣化の問題は深刻です。後世に残すには、CDというフォーマットはお粗末すぎます。山下達郎のベスト(9/26アップ)では、そんなCDでも最高のものを作ろうとする愛情がひしひしと感じられます。


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by jurassic_oyaji | 2012-12-31 23:37 | Comments(2)
HOLST/Choral Works
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Graham Ross/
Choir of Clare College, Cambridge
The Dmitri Ensemble
HARMONIA MUNDI/HMU 907576




「ホルスト」の合唱曲集、です。しかし、この「ホルスト」は、あの「惑星」で有名なグスターヴ・ホルストではなく、その娘さんのイモジェン・ホルストのことです。以前からこの「イモジェンさん」の名前は、例えば「惑星」の2台ピアノのためのバージョンを出版した人というような、父親の作品の校訂や出版に尽力したという方としての認識はあったのですが、彼女は作曲家としても活躍していたのですね。今まで、室内楽などの録音はあったのだそうですが、今回はすべて世界初録音、つまり、ほとんどの人が初めて耳にすることになる合唱曲が集められているCDが出ました。
イモジェン・ホルストは、1907年に生まれて、1984年に亡くなっています。このアルバムにはかなり厚ぼったいブックレットが付いていますが、それには彼女の晩年の写真がたくさん掲載されています。かなり大きめの鼻が特徴ですが、これは父親譲りのようですね。それらの写真からは、音楽学者、指揮者、作曲家として生涯独身で過ごした女性の老後の穏やかさのようなものを感じることはできないでしょうか。ジャケットの丸い眼鏡はジョン・レノンみたい(それは「イマジン」)。そのほかに、彼女の自筆の楽譜の写真も載っていますが、とても読みやすい楽譜ですね。
そして、アルバム自体のプロデュースと、さらに録音までも手掛けているのが、あのジョン・ラッターだというのにも、注目です。ここで演奏している「ドミトリー・アンサンブル」のデビュー・アルバムで、プロデュースと録音を担当したのがこのラッターでしたし、クレア・カレッジの合唱団で自作を録音した時にも、やはりプロデュースだけではなく、録音も担当しています(NAXOSの「Mass of the Children」など)。作曲家でありながらエンジニアのような特殊な能力が要求される仕事のプロなのですから、ラッターという人はすごいものですね。
このイモジェンのアルバムでも、ラッターは選曲などにも関与しているのでしょうね。そのラインナップは、まず彼女の若いころ(20歳!)のものから始まって、年代順に作品が並べられているというものでした。さらに、最後には彼女の親友であったベンジャミン・ブリテン(彼女のお墓は、そのブリテンとピーター・ピアーズのお墓のすぐ後ろにあるそうです)に頼まれて、オルガン伴奏の合唱曲にオーケストレーションを施したものなども収録されていて、彼女の「編曲家」としての成果も紹介されています。
まず、1927年に作られた「Mass in A minor」という、初期の作品です。無伴奏の混声合唱のためのフル・ミサですが、ポリフォニーの技法を取り入れたり、中世風の旋法が聴こえたりと、きちんと過去の遺産を受け継いでいこうという姿勢が見て取れてほほえましくなるような曲です。その中には、彼女の一世代前のイギリスの作曲家が共通して持っているようなテイストも満載、聴いていてとても心が温かくなるような気がします。
それ以後の作品になると、そのような素朴な作風からは少し離れて、同じ時代の「新しさ」をしっかり取り入れ、過去の再生産ではない、彼女自身のアイデンティティを見つけようと模索しているような姿勢が感じられるようになってきます。確かに、それは素晴らしいことなのですが、その結果「現代」の人たちが聴いたときになんとなくつまらなく感じられてしまうのは、仕方のないことです。このころは、誰しもがそんな「新しさ」を追い求めることに汲々としていたのですからね。
ただ、そんな中でハープと女声合唱のための「Welcome Joy and Welcome Sorrow」は、素直な心情が表に現れていて気持ちよく聴けました。
ブリテンの作品の編曲も、なかなかいい感じではないですか。おそらく、原曲よりも数段親しみが増しているのではないでしょうか。
合唱は、何か声が散漫に聴こえてしまいます。グラハム・ロスは、合唱を指揮するのはあまり上手ではないのでしょうか。

CD Artwork © Harmonia Mundi USA
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by jurassic_oyaji | 2012-08-31 10:19 | Comments(0)
OCKEGHEM, SØRENSEN
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Paul Hillier/
Ars Nova Copenhagen
DACAPO/6.220571(hybrid SACD)




北欧のミュージシャンの日本語表記にはいつも悩まされます。15世紀フランドルの作曲家ヨハネス・オケヘムが、いわゆる「オケゲム」と同一人物なことぐらいはすぐ分かりますが、20世紀生まれのデンマークの作曲家ベント・セーアンセンをこのスペルから読み取るのは至難の業です。日本の代理店のサイトではかろうじて「セアンセン」になっていますが、通販サイトあたりでは「セレンセン」とか「ソレンセン」とか、まるでカニ漁にでも行くみたい(それは「ソ連船」)。
そういう二人の作曲家の作品をマッシュ・アップして、一つの「レクイエム」として演奏したのが、ポール・ヒリアーが指揮する「アルス・ノヴァ・コペンハーゲン」です。現存する世界最古のポリフォニーによる「レクイエム」として知られるオケヘムの作品(本当は、ギョーム・ド・マショーのものの方がもっと古いのだそうですが、あいにく楽譜が見つかっていません)は、今普通にみられる「レクイエム」の全曲は揃っていなくて、テキストも少し違っているのだそうですが、そんな足らない部分+アルファを、セーアンセンの作品で埋めようというコンセプトなのでしょう。よくある形では、ヒリアー自身が1984年に「ヒリアード・アンサンブル」の一員として録音したEMI盤のように、そこにプレイン・チャントを挿入して補うということも行われていました。このヒリヤード盤は、その先輩格のPCA1973年にARCHIVに録音したもの(これは、オケヘムのオリジナルだけが収録されています)よりも、演奏も含めてはるかに柔軟性にあふれたものとして受け止められていたのではないでしょうか。
そうは言っても、この、20世紀に男声だけの6人で歌われたオケヘムは、21世紀になって女声も交えてその倍ほどの人数によって歌われた今回のオケヘムに比べれば、同じ指揮者による演奏とは思えないほどストイックに感じられてしまいます。それはもちろん、合唱団のキャラクターの違いにもよるはずです。このデンマークのハイテク集団のソノリテは、なんと艶っぽいことでしょう。
あるいは、そんなアプローチも一つの要因なのでしょう、ここでオケヘムとセーアンセンという5世紀ものスパンに隔てられている作品は、何の違和感もなく融合しているかのように見えてしまいます。というか、そのスパンの真ん中あたりで確立された「西洋音楽」の理論に基づいたいわゆる「クラシック音楽」の「ビフォー」と「アフター」が共に同じテイストを備えていると感じられてしまう体験によって認識すべきことは、まさに文化の歴史における「再現性」なのではないでしょうか。音楽が一つの方向に「進化」すると考えられていたのは遠い昔、今の歴史観は、古いものが形を変えて後の世にも表れることを明らかにしているのです。オケヘムとセーアンセンのそれぞれの作品の中から見えてくる「機能和声」からはちょっと距離を置いた響き、それらはともに、音楽を作るにあたってはいかなる束縛にもとらわれまいとする作曲家たちの強い意志のようにも思えてきます。
録音の方も、まさか「5世紀」とはいきませんが、それほど長くはない録音技術の歴史の中では充分に「大昔」と言える、50年以上も前のテクノロジーがそのまま使われているというのも、「文化」の一つの形なのかもしれません。このアルバムでは、今までこのレーベルでは紹介されることのなかった録音機材がブックレットに掲載されています。たまたまこの「レクイエム」の中の「Sanctus」や「Benedictus」では、セーアンセンの指定で演奏家が聴衆を取り囲むように配置されるために、それをサラウンドで録音した時のマイクアレンジが明らかにされているのですが、メインは3本のマイクを三角形にセットしたという、あの1956年にDECCAによって開発された「デッカ・ツリー」そのものなのですからね(EXTONあたりでも、この方式を採用しているようです)。

SACD Artwork © Dacapo Records
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by jurassic_oyaji | 2012-04-15 20:08 | Comments(0)