おやぢの部屋2
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カテゴリ:ポップス( 99 )
Melodies
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山下達郎
MOON/WPJL-10009/10(LP)



山下達郎のオリジナル・ソロアルバムとしては7枚目となる「メロディーズ」は、1983年6月8日にリリースされていますから、今年は「30周年」ということになります。このアルバムでは、最後に収録されている「クリスマス・イブ」がだいぶ有名ですね。そんなアルバムが、今回は30年前にリリースされた時と同じ形、「LP」として再発されました。
この時代に新譜でLPとは、とお思いになるかもしれませんが、今ではLPの方がCDよりも良い音がすることはもはや常識となっていますから、真にオーディオファイルたるものはもはやLPを避けて通ることはできないというのが、正しい「時代」の認識なのです。達郎自身も、今までにファンクラブのメンバー向けにずっとCDのほかにLPも作ってきた、という実績もありますし。
ただ、今回は、最初は特定のサイトでの通販のみという予定だったものが、いつの間にかごく普通のファンのために、普通の販売ルートで入手できるようになっていました。
当初の予定と変わってしまったのは、販売経路だけではありませんでした。当初は、オリジナルと同じ1枚のLPだったのですが、しばらくして「2枚組になった」という告知がありました。その件については、達郎自身がラジオの番組で釈明していましたが、そこで述べられていたのは恐るべき事実でした。以前と同じような工程でLPを作ってみたところ、昔と同じ品質は再現できなかった、というのですね。特に、内周近くにカッティングされている曲は、CD程度のクオリティさえも維持できていないんですって。その理由として、カッティング・レースなどの機械が古くなったり、修理しようとしても部品が入手できなくて、もはや所期の性能は出せなくなっていることが挙げられていました。仕方なく、出来るだけ外周を使ってカッティングが出来るように、2枚組にした、ということなのです。そうすれば、「CD以上」の音で楽しめる、と。
クレジットを見てみると、カッティングを担当したのはほとんど「名匠」と崇められているJVCのマスタリング・エンジニア、小鐵徹さんではありませんか。さすが、達郎の選ぶスタッフは超一流です。実は、まだJVCのマスタリング・センターが横浜にあったころに、別のエンジニアのマスタリングの立会いに行ったことがあるのですが、小鐵さんのスタジオの前には、多くのミュージシャンからの感謝の言葉が並んでいましたっけ。その時に、「LPのカッティングを、今でもやっている」と、ほかの人から聞いたのですよ。
そんな小鐵さんの技をもってしても、もはや現状はそんなお粗末な対応しかできないようになっているなんて、とてもショッキングです。せっかくLPの良さが再評価されているというのに、しばらく本格的な使われ方をしていなかったために、機械そのものやその周りの技術がすっかり廃れてしまったのだとしたら、これほど憂うべきことはありません。
そんな、いわば「苦し紛れ」の製品ですが、その音にはやはりLPならではのすばらしさがありました。CDと比較したのは、最近のベストアルバムに入っている「悲しみのJODY」、「高気圧ガール」、そして「クリスマス・イブ」の3曲ですが、いずれも特にヴォーカルとコーラスに丸みが出ているのと同時に、バックに隠されない存在感がありました。それと、アナログならではの音の密度の高さ。「悲しみのJODY」でFOに入るあたりからのファルセットの「H」が、CDでは倍音が乖離して聴こえますが、LPではそんなことはありません。
とても残念なことに、「クリスマス・イブ」のコーラスだけになるあたり(01:45付近)で、5周ぐらいにわたってスクラッチ・ノイズが聴こえます。これは盤面を見ても何の異常もないので、おそらくスタンパー以前のトラブルか、もしかしたらプレスの際の素材のムラに起因するもののような気がします。これが、「廃れてしまった周りの技術」の表れなのでしょう。

LP Artwork © Warner Music Japan Inc.
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by jurassic_oyaji | 2013-11-19 23:00 | ポップス | Comments(0)
愛しきわが出雲
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愛しきわが出雲市民合唱団
岩谷ホタル
出雲市/
IZCD-17322



今年は島根県の出雲大社では、60年に一度という大行事「平成の大遷宮」が行われました。そのための予算は80億円だとか、いずもこんな出費があったら大変ですね。その機会に、出雲市出身のアーティスト、竹内まりやが、出雲市からの依頼を受けてこういうタイトルの歌を作りました。作詞、作曲はもちろん竹内まりや、リズムアレンジは山下達郎、ストリングスアレンジは服部隆之という、豪華スタッフです。
ただし、まりや自身はあくまで作家、プロデューサーという立場なのだそうで、ボーカルとしては登場していません。実際に歌っているのは岩谷ホタルさんというやはり出雲出身の若いシンガーです(これはピアノ伴奏)。それと、この出雲市レーベルのCDでのメインは、さっきのスタッフが作ったオケに乗って歌われる「合唱バージョン」なのです。なんでも、この曲のために出雲市内の中高生と一般の合唱団の中から選ばれた100人のメンバーが歌っているのだそうです。
曲は、まりやお得意のスローな6/8による、カントリー・テイスト満載のものでした。コード進行も、彼女ならではのドッペル・ドミナントを多用したとてもシンプルな親しみやすさ、サビの「♪空高き 出雲」あたりからのクリシェなどは、頭を聴いただけで3小節先のコードまで想像できるほどの(実際そうでした)耳に馴染む心地よさがあります。
ただ、これこそがまりやの曲の身上である、まさにポップ・チューンとしての明るさ、楽しさが一杯の曲に対して、歌詞のなんとも硬直した古めかしさは、なんなのでしょう。「育まれし愛は」などという文語調で名所旧跡をちりばめた陳腐な歌詞は、この音楽とはほとんどシュールなまでの違和感を抱かせるものです。まあ、なんせ大国主命が祭られ、時には全国の神々が集うというまさに「神話の里」の歌なのですから、これはこれで仕方がなかった帰結だったのかもしれません。
しかし、長年彼女のファンを続けてきたものとしては、何か納得できない思いが残ります。彼女を追っかけたいと思ったのは、その、とびきり都会的で弾けるような音楽の魅力を味わいたかったからでした。しばらくのブランクの後、レーベルも変わってカムバックした彼女は、デビューしたてのアイドル時代と全く変わらないポップさでそんな期待に応えてくれていました。しかし、そんな周りの期待とは裏腹に、彼女自身はアーティストとしての「成長」を目指していたに違いありません。気が付いてみたら、いつの間にか彼女の作品、とくに歌詞の世界は、そんな、まさに「老成」を思わせるような「深い」ものに変わっていたのです。ところが、彼女の音楽には、それについていけるだけの「深み」はありません。音楽に関しては決して冒険はせず、一貫してシンプルでありふれた路線をとり続けています(もちろん、それなりの「小技」は効いています)。いや、もしかしたら、それが彼女の「作曲」のスキルの限界なのかもしれません。逆に言えば、いくつになってもまるでティーンエイジャーのような曲を作り続けることが出来る事こそが、彼女の最大の魅力なのですよ。
しかし、彼女は、そんな10代の音楽に、実年齢の歌詞を付けるようになってしまいました。現時点では最新のアルバム、2007年の「デニム」に収録された「人生の扉」あたりが、そんなアンバランスな作品の筆頭です。
そして、今回の「出雲」で、彼女はそれ以上にアンバランスなものを作ってしまいました。もし、この合唱バージョンで、きちんとハーモナイズされた「合唱」を聴くことが出来ていれば、それほどの悪印象は持たなかったのかもしれませんが、暗めのピッチで終始ユニゾン(しかも、混声なのでオクターブ・ユニゾン)で歌われては、もう救いようがありません。カラオケで、達郎が「♪出雲~っ」とコーラスを入れているのは、なんかのジョークですか?。

CD Artwork © Izumo City
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by jurassic_oyaji | 2013-08-15 20:36 | ポップス | Comments(0)
RE:MAKE 1
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森恵
主婦の友社刊
(Album Book)
ISBN978-4-07-289087-5




1985年に広島で生まれ、高校時代よりストリート・シンガーとして活動、2005年にインディーズデビュー、2010年にAVEXのサブ・レーベルCUTTING EDGEからメジャー・デビューを果たした森恵の、初のカバーアルバムです。これを目にしたのは本屋さんの中にあるCDコーナー、出版社とレコード会社とのコラボレーションから生まれた「アルバム・ブック」という扱いですが、よくある普通の本のおまけにCDが付いている「CDブック」とは異なり、LP、つまり本来の意味での「アルバム」の大きさで作られたものです。「ブック」に相当するのは、LPサイズのブックレットということになります。
これを見れば、おそらく100人中100人が(@天野春子)この中には「12インチヴァイナル」が入っていると思うはずです。帯(実際は、帯を模した印刷)にもしっかり「LP盤」と書いてありますしね。でも、よく見るとその「盤」には「サイズ」というルビが入っています。しかも、ジャケットの隅にはCDのロゴも見られます。案の定、ポリエチレンの中袋に入っていたものは、直径12インチの丸い塩ビシートの真ん中に、爪で固定されたCDでした。これには大笑いです。見事に騙されてしまいましたよ。
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これは、そんな楽しい遊び心に包まれた「アルバム」でした。なんせジャケットの帯コピーの「ご唱和ください」というのにも、しっかり「ネタ」が込められているのですからね。ここで取り上げられているカバー曲は、一番古いものが1971年に作られた「風を集めて」、一番新しいものは1986年の「時には昔の話を」、つまり、すべて「昭和時代」の作品なのですよ。だから、「ご昭和ください」となるわけなのです。ここまで仕組まれたものだったら、LPと間違えてしまっても怒ったりするわけにはいきませんね(しょうは言ってもちょっと悔しい)。
全く初めて聴くアーティストだったので、なんの先入観もありませんでしたが、聴き進んでいくうちにこの人の素晴らしさに気づきます。ここで取り上げられている名曲たちは、オリジナルが偉大なだけに、これまでに多くの人によってカバーされてきたもの聴くたびに必ずと言っていいほど失望感を味わったものです。ところが、今回は、どの曲にも全く不満を感じることはありませんでした。もっと言えば、オリジナルすらも超えているのでは、と思えたものもありました。
そのように思えた最大のファクターは、彼女の「ことば」の美しさです。今の2030代のヴォーカリストで、彼女ほどきれいな日本語で歌える人などいないのでは、という気になるほどです。言いかえれば、他の人がいかに言葉を大切にしていないかということなのでしょう。例えば先ほどの松本隆/細野晴臣の「風を集めて」を、My Little Loverakkoがカバーした時などは、サビの「♪かぜをあつめて」という部分で、ありがちに「♪きゃぜをあつめて」と歌っているのを聴いて殆ど怒りに近いものをおぼえたものでしたが、森さんは決してそんな「汚れた」歌い方はしていませんでした。
山口百恵が歌った谷村新司の作品「いい日旅立ち」こそは、まさにカバーを超える名演でした。森さんは殆ど完コピに近いほどに、山口百恵の歌い方を再現しています。しかし、森さんが目指したものは単なるものまねではありません。スピーカーの前に浮かび上がったのは、山口百恵が作り上げ、かつて多くの人を魅了したこの曲の世界そのものでした。
逆の意味で荒井由美の「あの日にかえりたい」での完成度も素晴らしいものです。そこでは、オリジナルのシンガーの技量の拙さゆえに完全には伝わっていなかった作品の世界が、見事に広がっています。
そんな歌と、森さん自身のギターをはじめとするアコースティックな楽器によるサウンドは、とても柔らかく聴く者を包み込んでくれます。これだけの繊細な音だったら、マジでLPで聴きたくなってしまうのではないでしょうか。

Book Artwork © Shufunotomo Co., Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2013-05-07 20:41 | ポップス | Comments(0)
LIVE IN JAPAN, 1967
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Peter Paul and Mary
RHINO/R2-533277




「ピーター・ポール・アンド・マリー」と言えば、1960年代に一世を風靡した3人組のフォーク・グループです。「PP&M」あるいは単に「PPM」という略称で呼ばれてもいましたが、その後環境問題関係のタームとしてこの「PPMparts per million)」が登場し、空気中の汚染物質や食品中の有害物質含有量などの単位として大活躍を始めるころには、彼らは世の中から忘れ去られるようになってしまいました。いや、彼らだけではなく、同じようにメッセージ性を前面に出した泥臭い「フォーク・ミュージック」というジャンル自体が、「ロック」や「ニューミュージック」の波にのまれて廃れていったのです。
とは言え、「PPM」が何度目かの来日を果たした1967年には、まだまだ彼らの人気は絶大でした。コンサートは超満員、街中に張り出された彼らのポスターは、一夜にしてすべて持ち去られてしまったと言いますから、すごいものです。
その時に、1月16日の新宿厚生年金会館と、17日の京都会館でのコンサートの模様が当時の彼らのレコードの発売元であった東芝音楽工業(彼らが所属していたWARNERレーベルは、1970年までは東芝から発売されていました)によって録音され、同じ年の11月に「Deluxe/Peter Paul and Mary in Japan」というタイトルでLPが発売されました。これは、日本国内のみでのリリースで、本国アメリカでは発売されることはありませんでしたし、CD化されることもありませんでした。
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それが昨年、彼らのデビュー50周年を記念して、日本のWARNERから1960年代のオリジナルアルバムが紙ジャケット仕様で発売された時に、このアルバムも45年ぶりにCDとして日の目を見ることになりました。さらに、この時に、アルバムには使われなかった音源が大量に倉庫に眠っていたことが発覚するのです。それらがWARNER傘下の、リマスタリングにかけては定評のあるRHINOレーベルによって2枚組、全24曲収録のCDとして全世界で発売されました。1枚目にはかつての日本盤と同じ12曲、そして、2枚目には全世界のPPMファンがここで初めて耳にする12曲が収録されています。
実は、この初出テイクも入っているアルバムの存在を知ったのは、山下達郎がホストを務めているラジオ番組でした。彼が所属しているWARNERの話ですから、これが出ると決まった時に、国内盤のサンプルを放送したのですね(3分ぐらい)。そこでの目玉は、そのコンサートの時にアーティストと一緒にステージ上にいた司会者のMCでした。そういう時代だったのですね。こういう「外タレ(死語)」のコンサートには、必ず通訳も兼ねた司会者がいたのですよ。PPMの場合は、歌詞の理解が必要だということで、曲が始まる前に歌詞の日本語訳を朗読していたのですが、そこまで入っていたものが放送では紹介されていました。いかにも当時の音楽事情を物語るような光景ですが、正直これはかなりうざったいものでした。でも、そんな珍しいものなら欲しかったので、同じものが輸入盤ではるかに安く手に入ることを知って、これを購入したのです。
ですから、まずそんな聴きたくもない司会者の声が入っていることを覚悟して聴き始めたら、ごく普通に演奏が始まったので逆に拍子抜けです。ライナーを読んでみると、このMCは日本盤だけのサービスだったそうです(というか、日本盤LPにあったMCもカットした、と)。まずは一安心、彼らの全盛期の演奏を、堪能しました。写真を見ると、マイクは2本か3本しか使っていませんが、素晴らしい音で録音されています。恐らく、リミックスの際に手を加えたのでしょうが、マリーの声がパン・ポットしているところもありましたしね。
そのマリーも2009年に亡くなりました。さらに、このジャケット写真の隅にかすかに写っている、ずっと彼らのコンサートではサポートを務めていたベーシストのリチャード・クニッシュも、昨年お亡くなりになったそうです。でも、彼らの音楽は、このように「最高の音質」で残ることになりました。

CD Artwork © Warner Bros. Records Inc.
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by jurassic_oyaji | 2013-01-30 21:48 | ポップス | Comments(0)
Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band
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The Beatles
EMI/PCS 7027(LP)




前回の「Abbey Road」では、昔のLPが手元になかったので、2009年のリマスターCDとの比較しか出来ませんでしたが、今回は「Sgt. Pepper」の国内盤、1969年のセカンド・プレス(東芝音楽工業/AP-8163)がまだ散逸を免れていたのでそれとも聴き比べることが出来ました。
長い時間の中で、ジャケットの色はかなりくすんでしまっていたことが、「新しい」LPと比べるとよくわかります。
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もちろん、レーベルは当時はイギリスでは「PARLOPHONE」、日本では「APPLE」でした。
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ご存知のように、この時期の東芝のLPは、帯電防止剤を多量に混入した粗悪な(いや、当時これを開発した人は最高級品だと思っていたのでしょう)コンパウンドが原料でしたので、経時変化によってそのような添加剤が表面に浮き出し、音質に悪影響を与えていました。今回も、片面をかけていると、次第に針先にゴミがたまって、音が歪んでいくのが分かります。逆に、一度そうやって表面を掃除すると、しばらくはまともな音で聴けるのですがね。
ビートルズのLPは、最初はもちろんアナログのマスターを使ってカッティングが行われていました。ですから、この東芝盤も当然アナログマスターによって作られたものです。その後、1987年に全タイトルがCD化されたことに伴い、LPCD用のデジタルマスターによってカッティングされるようになったのだそうです。1度カッティングを行って作られたラッカー・マスターからは、せいぜい数万枚のLPしかプレスできませんから、それ以上製造する時には、新たにカッティングを行う必要があるのですね。今考えれば、そこで使われたのは16ビットのマスターのはずですから、かなりクオリティは落ちていたのではないでしょうか。この時期のLPがあれば聴いてみたいものです。そして、今回は2009年に新たにハイレゾ(24/192)でマスターテープからトランスファーされたデジタルマスターによるLPということになるのです。
ですから、東芝盤は、そんな最悪なコンディションであっても、オリジナルのアナログマスターの音を反映させているはずです。それは、若干の歪みと、決して無視はできないスクラッチ・ノイズの中からも、確かにうかがえるものでした。何よりも、ヴォーカルの存在感が、デジタルマスターによるものとはまさに一線を画しています。さらに、アコースティック楽器の音色や肌触りの違いは歴然としています。このアルバムの中でそんな編成のものはA面6曲目の「She's Leaving Home」ですが、録音時にすでに歪んでいたイントロのハープは仕方がないとして、そのあとに出てくる弦楽器のふんわりとした空気感は東芝盤でなければ味わえないものでした。今回の「新しい」LPでは、その「ふんわり」がなくなって、ちょっと硬質の部分が露出している感じ、CDでは、もはやアコースティック楽器とは思えないほどの音になっています。つまり、これはあくまで個人的な好みも含まれた評価になるのですが、「1969年のLP」>「2012年のLP」>「2009年のCD」という順位になっているのです。
LPCDよりも音が良いのは当たり前の話ですが、16ビットならいざ知らず24bit/192kHzというハイレゾでトランスファーされたデジタルマスターがアナログマスターと同程度でなかったのは、やはりマスターテープの劣化のせいなのでしょう。そんな劣化の跡は、B面の4曲目「Good Morning, Good Morning」の右チャンネルのブラスに顕著に表れています。1969年の時点では、トロンボーンのペダル・トーンはそんなに歪んではいませんでした。デジタル・テクノロジーの進歩は、マスターテープの劣化に追いつくことはできなかったのですね。
ただ、今回のLPでは、こちらで明らかになった、イギリス盤のファースト・プレスでしか聴くことが出来なかった「仕掛け」が、初めて味わえることになりました。針を上げない限り永遠に続く「Never needed any other way」というポールの声、これはクセになります(「ポルノ声」ではありませんからね)。

LP Artwork © EMI Records Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2012-11-17 19:53 | ポップス | Comments(1)
Abbey Road
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The Beatles
EMI/PCS 7088(LP)




最近のLPに対する新たな見直しは、なんだかすごいことになっています。なんでも、日本のUNIVERSALが材質やプレス、さらにはマスタリングなど凝りに凝ったLPを近々発売するのだとか、このブームはさらなる広がりを見せるのでしょうか。なんと言っても、ここではクラシックのアイテムが全くないというのがイマイチなところですが、とりあえずクラシックはシングルレイヤーのSACDに集中ということなのでしょうか。究極の再生音を求めた結果が、ハイレゾのデジタル音源と、昔ながらのアナログ音源という、全く反対方向を向いている二つの流れになって表れているというのが、実に面白いところです。
そんな流れの中で、今度は「ザ・ビートルズ」の全アルバムがLPとなって発売されました。例によって最初に聴いてみるのはやはり「Abbey Road」ということになります。
まず、このLPの品番を見て、驚きです。この「PCS 7088」というのは、このアルバムが最初に発売された1969年に付けられた品番なのですよ。驚いたのは、「そこまでこだわって復刻したのね」ということではなく、イギリスで今まで頻繁にリイシューされた時には、ずっとこの品番が付けられてきていた、という事実です。恐らく、イギリスでは今までもずっとこのLPは製造されていて、店頭でも販売されていたのでしょうね。それが、新しいマスタリングでまたリイシューされた(もちろん、同じ品番で)、今回のLPはそんな扱いなのですね。
しかし、これは今までのLPとは異なり、2009年に鳴り物入りでリリースされたデジタル・リマスターCDで用いられたデジタルのマスターが使われている、というのがセールス・ポイントになっているようです。もはや、オリジナルのマスター・テープは劣化が進んでいますから、現時点では、危なっかしいアナログ・マスターよりは、丹念に修復が施されたデジタル・マスターの方が、よっぽど信頼できるのでしょう。そのデジタル・トランスファーが、すべて24bit/192kHzで行われていたのも幸運でした。かえすがえすも、DECCAの「指環」のトランスファーが24bit/48kHz(あるいはそれ以下)でしか行われなかったことが悔やまれます。
今回のLPを、2009年のCDと比べてみると、とても同じマスターから作られたものとは思えないほどの違いがありました。それを「アナログとデジタル」の違いと言ってしまっては身も蓋もないのですが、LPの方がはるかにソフトで滑らかな感じがするのですね。CDは、ちょっと聴くととても細かいところまで精緻に再現出来ているような気がするのですが、LPを聴いた後には、それはなにか不自然なものに感じられてしまうのです。まるで、最初はなかったものを新たに付け加えたような感じでしょうか。それと、ヴォーカルの暖かさとか存在感は、間違いなくLPCDを凌駕しています。
そんな違いが特にはっきり分かるのが、A面の5曲目「Octopus's Garden」です。リンゴのヴォーカルは立体的に浮かび上がっていますし、それに絡むポールとジョージのコーラスの明瞭さも、全然違います。圧巻は間奏のギター・ソロ。LPでは突き抜けるような高音がまさに「浮き出て」聴こえてくるのに、CDではとても平板、音色までも全然地味になっています。
もう1曲、B面メドレーの最後の方の「Golden Slumbers」では、ポールが「Once there's a way」と歌い出すところで背後に流れるストリングスのテクスチャーが、まるで違います。LPではきちんと弦楽器のほんのり感が出ているのに、CDではまるでシンセみたい、そのあとのブラスも、やはり別物のように聴こえます。これらは、まさに16/44.1というCDのスペックから来る限界をまざまざと感じさせるものに他なりません。
今回のLPの盤質の良さも驚異的です。普通にスピーカーで聴いていると曲間のサーフェス・ノイズは全く聴こえないほどです。これで、盤面の経時変化さえなければ完璧なのですが、それはあと何年かしないことには分からないことです。

LP Artwork © EMI Records Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2012-11-15 20:23 | ポップス | Comments(0)
OPUS/All Time Best 1975-2012
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山下達郎
MOON/WPCL-11201/4



山下達郎のベストアルバムが発売になりました。何しろ、彼がデビューしてから37年にわたるアーティスト生活の中から生まれた20枚近くのアルバムの中からのベストですから、大変です。結局CD3枚組、それぞれ70分以上ぎりぎりまでカットして全49曲というラインナップになりました。もちろん、シュガーベイブ時代のものから、レーベルを超えて年代順にまんべんなく選曲されています。
タイトルの「Opus(オーパス)」は、湿布薬ではなく(それは「サロンパス」)おなじみ、「作品」という意味のラテン語ですが、それがこのように集まると複数形で「Opera(オペラ)」になるって、知ってました?
発売日は26日なのに、ネットで注文したら25日には手元に届いてしまいましたよ。とり・みきのジャケットがかわいいですね。これはコンサートのグッズとして売られていた「せんべい」とおなじです。
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このアルバムのプロモーションでは、かなりエグいことまでやっていましたね。彼は毎週日曜日にFMで自分がDJを務める番組を持っているのですが、発売日直前の23日の放送では、このアルバムの「全曲」をオンエアしてましたよ。ほんとに全曲ですよ。もっとも、1曲それぞれ数十秒という「早聴き」でしたけど。さらに、達郎本人が、同じ日の数時間後に放送される連続ドラマ(笑)「あ、安部礼司」にも出演していたのですよ。その回自体が、達郎の曲だけをかけるという見え見えのプロモーション仕様だったのですが、そこに「ヒムセルフ」として、「刈谷勇」から届いたリクエスト葉書を読むという設定です。待望の葉書を読まれて舞い上がる刈谷でしたが、達郎には「きったねえ字だなあ、社会人として恥ずかしいですよ」とか散々バカにされるので、凹んでしまう、という話だったような(車で聴いていたので、あいにく最後までは聴けませんでした)。そんなお遊びにまじめに付き合っていた達郎が、なんか愛おしかったですね。
まあ、そんな商売上のしがらみはいろいろあるのでしょうが、アルバム自体はしっかり手がかけられていて聴きごたえがあります。特に1枚目の、アナログ録音時代のものが、今回の新たなマスタリングで、1997年に出た「Greatest Hits」とは全然違う素晴らしい音になっていたのには、感激です。この中でアメリカで録音された「Windy Lady」は、LPでもさんざん聴いていた曲なので、今回さらに質感が高まって、よりLPに近づいているのがよく分かります。
「クリスマス・イブ」も、間奏のア・カペラ(パッヘルベルそのもの)が、今まではアナログのダビングなので音が濁っていてもしょうがないと思っていましたが、それが見事にクリアになっていたのにも、驚かされました。
そして、達郎の声も、そんな精緻なマスタリングによって、より、当時のままのリアルさが再現されているのでしょう。ほんと、デビュー当時の若々しい声からは、今の伸びやかな声は全く想像できません。まさに、30余年をかけて磨き上げられた声の軌跡が、このベストには刻まれているのです。
注文して買ったぐらいですから「初回限定」のボーナスCDも当然ついてきました。「これから先、決してCD化されないソース」というだけあって、珍品ぞろいですが、その最後には「希望という名の光」のアコースティック・バージョンが入っていました。これは、さっきの達郎の番組が、たまたま今年の3月11日の、ちょうど震災が起こった時間に放送されるということで、特別な構成になっていた中で流されたものです。この番組自体が、まさにかけがえのないものだったのですが、そこで、彼にとっては思い入れのあるこの曲が、余計なものをすべてそぎ落として曲の持つメッセージのみをストレートに伝えていたのには、心を動かされました。それと同じものが、ここでは聴くことができます。その番組、あるいは、震災にまつわる様々なものにリンクされて、このトラックは軽々しく「ボーナス」とは呼べないほどの感動を与えてくれます。

CD Artwork © Warner Music Japan Inc.
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by jurassic_oyaji | 2012-09-26 19:41 | ポップス | Comments(0)
The Greatest Film Scores of Dimitri Tiomkin
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Whitneky Claire Kaufman(Vo)
Andrew Playfoot(Vo)
Richard Kaufman/
London Voices
London Symphony Orchestra
LSO LIVE/LSO0720(hybrid SACD)




ロンドン交響楽団と言えば、かつては「スター・ウォーズ」、最近では「ハリー・ポッター」などの映画のサウンドトラックをどんどん演奏していたことで、一部の人にとってはお馴染みのオーケストラでした。これらのヒット作で、あのジョン・ウィリアムスのスコアを演奏、それが全世界の人々に「聴かれた」わけですから、このオーケストラは「世界で一番多くの人に聴かれているオーケストラ」と言っている人もいるぐらいです。もちろん、そのような言い方の中には、クラシック・オーケストラに対しての揶揄の気持ちもいくらかは含まれていることでしょう。あくまで伝聞ですが、実際にそのように言われたこのオーケストラの関係者は、あからさまに不快の念を表情にあらわしたといいますからね。
ジョン・ウィリアムスがそうであったように、このような重厚な「シンフォニック」の映画音楽を書いた作曲家は、最初はしっかりと「クラシック」の素養を身に着けていたものです。ハリウッドにそのようなスコアを提供する先駆者となったエーリッヒ・コルンゴルトも、本当はまっとうなオペラを作りたかったものが、やむなく映画音楽への道を選ばなければならなかった人です。
そのコルンゴルトの次の世代にあたるのが、このアルバムの主人公、ディミトリー・テイオムキンです。彼もリムスキー・コルサコフの孫弟子、あるいはグラズノフの弟子としてまっとうな「クラシック」を身につけ、さらにはピアニストとしても大活躍(ガーシュウィンのピアノ協奏曲をパリで初演したとか)していたものの、映画音楽の道へ入った後には、どっぷりその世界でまさに職人的な手腕を発揮し、大成功を収めることになりました。彼の仕事を聴く限り、コルンゴルトとは違い、もはや「クラシック」への未練は完全に断ち切られているように思えます。正直、「ローハイド」の作曲者がティオムキンだったなんて、初めて知りましたし、ここには入っていませんが、「北京の55日」などは、ブラザース・フォアが歌った主題歌のレコードがヒットチャートをにぎわしたこともあったのですからね。
今回、「コンサート」として映画音楽を演奏するというこのオーケストラのシリーズの最初を飾るにあたって、指揮者として選ばれたのが正真正銘の映画音楽畑の指揮者、リチャード・カウフマンだったというのも、当然のことでしょう。これは、同じロンドン交響楽団とは言っても、ゲルギエフやデイヴィスが指揮をしているオーケストラとは明らかに異なるキャラクターを求められるものなのですからね。もちろん、その中で映画の主題歌を歌うのも、「vocalist」とクレジットのある、自然な発声でマイクを使って歌う人たちでした。そのうちの一人、「野生の息吹」などを歌っているホイットニー・クレア・カウフマンは、指揮者の娘なのだそうです。彼女は「マンマ・ミーア!」のソフィーを歌うなど、ショービズの世界で実績を重ねている人で、ここでもポップ・ソングの王道を行く伸びのある声を聴かせてくれています。「真昼の決闘」の有名な主題歌を歌っているアンドルー・プレイフットも、なかなか渋い声ですね。
そういう音楽の中で、合唱が果たす役割は、ヴォーカリストほど重要ではありません。スコアの中では、彼らはもっぱら金切り声でその場を盛り上げるという仕事に従事しているように思えます。したがって、ロンドン・ヴォイセスがいかに卓越した合唱団であっても、その真の力を披露する場所は、ここにはありません。
おそらく、いくら「シンフォニック」なスコアだと言っても、コンサートホール内の「生音」でそのダイナミックスを表現するのは、極めて難しいことなのではないでしょうか。そういう意味で、いつものような地味なサウンド作りに終始しているSACDの録音チームの仕事ぶりには、大きな不満が残ってしまいます。

SACD Artwork © London Symphony Orchestra
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by jurassic_oyaji | 2012-09-01 23:36 | ポップス | Comments(0)
BELIEVE
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Che'Nelle
EMI/TOCP-71400




車を運転しながらラジオを聴いていると、ちょっと気になる曲がかかったりすることがあります。その曲も、1度聴いたら忘れられないインパクトを持っていました。よくあるしっとりと聴かせるバラードで、コード進行もオーソドックスな、キャッチーな曲だな、と思っていたら、サビに入ったところでいきなり半音高く転調したのですよ。一瞬、なにが起きたのか分からないほど、それはショッキングな転調でした。それがそのままエンディングを迎えて、2コーラス目に戻る時に、そのままでは最初のAメロまで半音高くなってしまいますから、そこでまた半音下げるための強引な転調が行われていたのですから、すごいものです。
こういう、元に戻れない一方通行の転調は、ポップスの場合なかなかお目にかかれるものではありません。こんな大胆な(というか、恐れを知らぬ)ことを堂々とやっているのは誰なのか、気になってしまいました。でも、おそらく最初に曲の紹介があったのでしょうが、そんなものは憶えていません。アーティストの名前なんて、知っていれば気が付きますが、全く知らなければ聞いても絶対に憶えてなんかいるわけがありません。なんせ、最近のアーティスト(そもそも、「歌手」なんて言葉は今では死語です)ときたら、「ジュジュ」だの「スーパーフライ」だの、とても「名前」とは思えないようなネーミングで通していますからね。歌いだしが「Destiny」というのだけは憶えていましたから、それを頼りにネットで検索してみても、引っ掛かるのは似ても似つかない曲ばかりでした。
でも、ある時、やっと、その曲が終わった時のMCで、その曲が紹介されたので、あわててメモを取ります。それが、「シェネル」の「ビリーヴ」でした。何でも、映画「海猿」の最新版のテーマ曲なんですってね。
「シェネル」なんて日本人離れした名前ですから、外人?それにしては日本語の歌詞が上手(いや、今の「日本人」の歌う歌詞ほど下手くそなものはありません)、などと思っていたら、確かに彼女は外国人でした。アメリカで活躍しているR&Bシンガーなんですって。でも、それにしては、この友近のようなルックスは、と思ったら、生まれはシンガポールだとか。
そもそもは、普通にアメリカで「洋楽」のシンガー、あるいはソングライターとして活躍していたのが、日本からのリクエストで久保田利伸の「Missing」をカバーしたら大ヒット、日本向けのカバー・アルバム(なんと、「上を向いて歩こう」までカバー)までリリースされてしまいました。そして、今回は「ビリーヴ」をタイトルにした、日本人の作家チームによるオリジナル・アルバムです。もっとも、前作からの流れで、カバー曲も2曲入っています。
驚いたことに、彼女は日本語が全くしゃべれないのだそうです。ただ、同じアジアの語感は共通しているので、歌うことにはあまり苦労はなかったそうですね。「ビリーヴ」にしても、日本語の歌詞の間に英語がちりばめられているという手法が、なかなか素敵です。2曲目に入っている「フォール・イン・ラヴ」という曲では、なんだか聴いたことのあるメロディだと思ったら、それは「大きな栗の木の下で」という、あの遊び歌ではありませんか。その歌詞の部分は英語で、「あなたと、わたし」というところを日本語で歌うという、シュールな引用です。カバー曲のアレンジも、中島美嘉の「STARS」をレゲエ風の後打ちのリズムに変えて、オリジナルとは全く違ったテイストに仕上げていますし。
彼女は、伸びのあるとても素直な声です。この手の「張って歌う」人たちにありがちな過剰なビブラートがないのが、とても新鮮な印象を与えてくれます。かと思うと、最後の「トゥ・ユー」などは、オブラートでくるんだような、とてもソフトに抑えられた声を使って、しっとりとした味を出しています。アルバムの最初から最後まで、これほど味わい深く楽しめたなんて、久しぶりのことです。

CD Artwork © EMI Music Japan Inc.
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by jurassic_oyaji | 2012-07-30 20:32 | ポップス | Comments(2)
愛のメモリー
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松崎しげる
AG/HUCD-10107



今から10年近く前、2003年に、グリコから「青春のメロディーチョコレート」というシングルCDが「おまけ」に付いているチョコレートが発売されました。それに関してのトークはこちらにあります。
そのCDは、1960年代から1970年代にかけてリリースされた「シングル・レコード」を忠実に復刻したもので、大ヒット商品となりました。その中に入っていたのが、この松崎しげるの「愛のメモリー」です。本命は10、二股相手は3(それは、愛の目盛)。
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このシングルのオリジナル(↑)は1977年にリリースされました。今年が、その時から35周年ということで企画されたのが、この「マキシ・シングル」です。「シングル」と言っても、収録トラックは全部で14、収録時間は68分、優に「アルバム」に相当するボリュームです。それで税抜き価格は952円、さっきのオリジナル・シングルが600円でしたから、なんというお買い得。実際は、2つのトラックはカラオケですから、曲としては12曲、そのうちの2曲が、今回新たに録音されたものです。つまり、この中にはこの35年間に録音された、12種類の「愛のメモリー」が入っているのですよ。
すでにお気づきでしょうが、このCDのジャケットはオリジナルのパロディになっています。さりげなくスカイツリーなどを取り込んで、「今」を演出しています。これで、ご本人が昔と同じポーズをとっていれば完璧なんですがね。せっかく衣装まで同じにしたのですから。
もう一つ違っているのが、左上にあるレーベルです。オリジナルにはニッパー・マーク、当時のビクター音楽産業の商標が付いていましたが、現在は「ハッツ・アンリミテッド」という会社からCDを出しているようですね。なにしろ35年ですから、そもそもいつまでも同じレーベルにいられるわけはありません。リストを見てみると、これまでにビクター→EMI→ソニー→ロック・チッパー→ジェネオン、そしてハッツと渡り歩いてきたようですね。それぞれのレーベルでベスト・アルバムなどを作るときに、新たに録音していれば、このぐらいのバージョンは集まってしまうのでしょう。この中にはDVDのサントラから取ったライブ・バージョンもありますし。
ただ、その中に、「愛の微笑」という、タイトルまで違っているのがありました。これは実は、1975年に作られた、いわば「愛のメモリー」の「原曲」なのだそうです。当時のヨーロッパの音楽祭に「出品」するために作られたもので、実際は晴れて「第2位」となったのですが、国内では全くヒットしなかったものが、山口百恵と三浦友和が共演したCM(グリコ!)に使われたことで一挙にブレイク、新たにタイトルを変えてシングルとしてリリースされて、大ヒット曲となったのでした。
ということで、正確には37年のスパンの中で行われた様々なアレンジを、まとめて聴くことができるという、この手のものが好きな人にとっては何よりのCDが出来上がりました。確かに、時代によってその時々の流行のサウンドが取り入れられているのがよくわかります。1988年には「チョーッパー・ベース」とか。変わったところではチェコ・フィルを起用してのシンフォニック・バージョン、なんてのもありましたね。でも、やはり一番安心して聴けるのは聴きなれた最初のバージョンです。いや、実は意外なことに、録音もこのアナログのものが一番心地いいのですね。「グリコ」のマスタリングはひどいものだったので今まで気が付かなかったのですが、今回最新のマスタリングで聴くと、アナログ録音の可能性がきちんと伝わってきて、下手なデジタル録音のものよりずっといい音なのですよ。
それと、一番新しいアレンジは、何か原点に返ったような、とても素直なもののように感じられます。巡り巡って、最終的に元のものに立ち返ったということ、やはり最初に新しいものを作り出す時のエネルギーは、アレンジにも反映されるのでしょうね。

CD Artwork © Hats Unlimited Co., Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2012-06-26 23:27 | ポップス | Comments(0)