おやぢの部屋2
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カテゴリ:ポップス( 103 )
OPUS/All Time Best 1975-2012
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山下達郎
MOON/WPCL-11201/4



山下達郎のベストアルバムが発売になりました。何しろ、彼がデビューしてから37年にわたるアーティスト生活の中から生まれた20枚近くのアルバムの中からのベストですから、大変です。結局CD3枚組、それぞれ70分以上ぎりぎりまでカットして全49曲というラインナップになりました。もちろん、シュガーベイブ時代のものから、レーベルを超えて年代順にまんべんなく選曲されています。
タイトルの「Opus(オーパス)」は、湿布薬ではなく(それは「サロンパス」)おなじみ、「作品」という意味のラテン語ですが、それがこのように集まると複数形で「Opera(オペラ)」になるって、知ってました?
発売日は26日なのに、ネットで注文したら25日には手元に届いてしまいましたよ。とり・みきのジャケットがかわいいですね。これはコンサートのグッズとして売られていた「せんべい」とおなじです。
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このアルバムのプロモーションでは、かなりエグいことまでやっていましたね。彼は毎週日曜日にFMで自分がDJを務める番組を持っているのですが、発売日直前の23日の放送では、このアルバムの「全曲」をオンエアしてましたよ。ほんとに全曲ですよ。もっとも、1曲それぞれ数十秒という「早聴き」でしたけど。さらに、達郎本人が、同じ日の数時間後に放送される連続ドラマ(笑)「あ、安部礼司」にも出演していたのですよ。その回自体が、達郎の曲だけをかけるという見え見えのプロモーション仕様だったのですが、そこに「ヒムセルフ」として、「刈谷勇」から届いたリクエスト葉書を読むという設定です。待望の葉書を読まれて舞い上がる刈谷でしたが、達郎には「きったねえ字だなあ、社会人として恥ずかしいですよ」とか散々バカにされるので、凹んでしまう、という話だったような(車で聴いていたので、あいにく最後までは聴けませんでした)。そんなお遊びにまじめに付き合っていた達郎が、なんか愛おしかったですね。
まあ、そんな商売上のしがらみはいろいろあるのでしょうが、アルバム自体はしっかり手がかけられていて聴きごたえがあります。特に1枚目の、アナログ録音時代のものが、今回の新たなマスタリングで、1997年に出た「Greatest Hits」とは全然違う素晴らしい音になっていたのには、感激です。この中でアメリカで録音された「Windy Lady」は、LPでもさんざん聴いていた曲なので、今回さらに質感が高まって、よりLPに近づいているのがよく分かります。
「クリスマス・イブ」も、間奏のア・カペラ(パッヘルベルそのもの)が、今まではアナログのダビングなので音が濁っていてもしょうがないと思っていましたが、それが見事にクリアになっていたのにも、驚かされました。
そして、達郎の声も、そんな精緻なマスタリングによって、より、当時のままのリアルさが再現されているのでしょう。ほんと、デビュー当時の若々しい声からは、今の伸びやかな声は全く想像できません。まさに、30余年をかけて磨き上げられた声の軌跡が、このベストには刻まれているのです。
注文して買ったぐらいですから「初回限定」のボーナスCDも当然ついてきました。「これから先、決してCD化されないソース」というだけあって、珍品ぞろいですが、その最後には「希望という名の光」のアコースティック・バージョンが入っていました。これは、さっきの達郎の番組が、たまたま今年の3月11日の、ちょうど震災が起こった時間に放送されるということで、特別な構成になっていた中で流されたものです。この番組自体が、まさにかけがえのないものだったのですが、そこで、彼にとっては思い入れのあるこの曲が、余計なものをすべてそぎ落として曲の持つメッセージのみをストレートに伝えていたのには、心を動かされました。それと同じものが、ここでは聴くことができます。その番組、あるいは、震災にまつわる様々なものにリンクされて、このトラックは軽々しく「ボーナス」とは呼べないほどの感動を与えてくれます。

CD Artwork © Warner Music Japan Inc.
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by jurassic_oyaji | 2012-09-26 19:41 | ポップス | Comments(0)
The Greatest Film Scores of Dimitri Tiomkin
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Whitneky Claire Kaufman(Vo)
Andrew Playfoot(Vo)
Richard Kaufman/
London Voices
London Symphony Orchestra
LSO LIVE/LSO0720(hybrid SACD)




ロンドン交響楽団と言えば、かつては「スター・ウォーズ」、最近では「ハリー・ポッター」などの映画のサウンドトラックをどんどん演奏していたことで、一部の人にとってはお馴染みのオーケストラでした。これらのヒット作で、あのジョン・ウィリアムスのスコアを演奏、それが全世界の人々に「聴かれた」わけですから、このオーケストラは「世界で一番多くの人に聴かれているオーケストラ」と言っている人もいるぐらいです。もちろん、そのような言い方の中には、クラシック・オーケストラに対しての揶揄の気持ちもいくらかは含まれていることでしょう。あくまで伝聞ですが、実際にそのように言われたこのオーケストラの関係者は、あからさまに不快の念を表情にあらわしたといいますからね。
ジョン・ウィリアムスがそうであったように、このような重厚な「シンフォニック」の映画音楽を書いた作曲家は、最初はしっかりと「クラシック」の素養を身に着けていたものです。ハリウッドにそのようなスコアを提供する先駆者となったエーリッヒ・コルンゴルトも、本当はまっとうなオペラを作りたかったものが、やむなく映画音楽への道を選ばなければならなかった人です。
そのコルンゴルトの次の世代にあたるのが、このアルバムの主人公、ディミトリー・テイオムキンです。彼もリムスキー・コルサコフの孫弟子、あるいはグラズノフの弟子としてまっとうな「クラシック」を身につけ、さらにはピアニストとしても大活躍(ガーシュウィンのピアノ協奏曲をパリで初演したとか)していたものの、映画音楽の道へ入った後には、どっぷりその世界でまさに職人的な手腕を発揮し、大成功を収めることになりました。彼の仕事を聴く限り、コルンゴルトとは違い、もはや「クラシック」への未練は完全に断ち切られているように思えます。正直、「ローハイド」の作曲者がティオムキンだったなんて、初めて知りましたし、ここには入っていませんが、「北京の55日」などは、ブラザース・フォアが歌った主題歌のレコードがヒットチャートをにぎわしたこともあったのですからね。
今回、「コンサート」として映画音楽を演奏するというこのオーケストラのシリーズの最初を飾るにあたって、指揮者として選ばれたのが正真正銘の映画音楽畑の指揮者、リチャード・カウフマンだったというのも、当然のことでしょう。これは、同じロンドン交響楽団とは言っても、ゲルギエフやデイヴィスが指揮をしているオーケストラとは明らかに異なるキャラクターを求められるものなのですからね。もちろん、その中で映画の主題歌を歌うのも、「vocalist」とクレジットのある、自然な発声でマイクを使って歌う人たちでした。そのうちの一人、「野生の息吹」などを歌っているホイットニー・クレア・カウフマンは、指揮者の娘なのだそうです。彼女は「マンマ・ミーア!」のソフィーを歌うなど、ショービズの世界で実績を重ねている人で、ここでもポップ・ソングの王道を行く伸びのある声を聴かせてくれています。「真昼の決闘」の有名な主題歌を歌っているアンドルー・プレイフットも、なかなか渋い声ですね。
そういう音楽の中で、合唱が果たす役割は、ヴォーカリストほど重要ではありません。スコアの中では、彼らはもっぱら金切り声でその場を盛り上げるという仕事に従事しているように思えます。したがって、ロンドン・ヴォイセスがいかに卓越した合唱団であっても、その真の力を披露する場所は、ここにはありません。
おそらく、いくら「シンフォニック」なスコアだと言っても、コンサートホール内の「生音」でそのダイナミックスを表現するのは、極めて難しいことなのではないでしょうか。そういう意味で、いつものような地味なサウンド作りに終始しているSACDの録音チームの仕事ぶりには、大きな不満が残ってしまいます。

SACD Artwork © London Symphony Orchestra
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by jurassic_oyaji | 2012-09-01 23:36 | ポップス | Comments(0)
BELIEVE
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Che'Nelle
EMI/TOCP-71400




車を運転しながらラジオを聴いていると、ちょっと気になる曲がかかったりすることがあります。その曲も、1度聴いたら忘れられないインパクトを持っていました。よくあるしっとりと聴かせるバラードで、コード進行もオーソドックスな、キャッチーな曲だな、と思っていたら、サビに入ったところでいきなり半音高く転調したのですよ。一瞬、なにが起きたのか分からないほど、それはショッキングな転調でした。それがそのままエンディングを迎えて、2コーラス目に戻る時に、そのままでは最初のAメロまで半音高くなってしまいますから、そこでまた半音下げるための強引な転調が行われていたのですから、すごいものです。
こういう、元に戻れない一方通行の転調は、ポップスの場合なかなかお目にかかれるものではありません。こんな大胆な(というか、恐れを知らぬ)ことを堂々とやっているのは誰なのか、気になってしまいました。でも、おそらく最初に曲の紹介があったのでしょうが、そんなものは憶えていません。アーティストの名前なんて、知っていれば気が付きますが、全く知らなければ聞いても絶対に憶えてなんかいるわけがありません。なんせ、最近のアーティスト(そもそも、「歌手」なんて言葉は今では死語です)ときたら、「ジュジュ」だの「スーパーフライ」だの、とても「名前」とは思えないようなネーミングで通していますからね。歌いだしが「Destiny」というのだけは憶えていましたから、それを頼りにネットで検索してみても、引っ掛かるのは似ても似つかない曲ばかりでした。
でも、ある時、やっと、その曲が終わった時のMCで、その曲が紹介されたので、あわててメモを取ります。それが、「シェネル」の「ビリーヴ」でした。何でも、映画「海猿」の最新版のテーマ曲なんですってね。
「シェネル」なんて日本人離れした名前ですから、外人?それにしては日本語の歌詞が上手(いや、今の「日本人」の歌う歌詞ほど下手くそなものはありません)、などと思っていたら、確かに彼女は外国人でした。アメリカで活躍しているR&Bシンガーなんですって。でも、それにしては、この友近のようなルックスは、と思ったら、生まれはシンガポールだとか。
そもそもは、普通にアメリカで「洋楽」のシンガー、あるいはソングライターとして活躍していたのが、日本からのリクエストで久保田利伸の「Missing」をカバーしたら大ヒット、日本向けのカバー・アルバム(なんと、「上を向いて歩こう」までカバー)までリリースされてしまいました。そして、今回は「ビリーヴ」をタイトルにした、日本人の作家チームによるオリジナル・アルバムです。もっとも、前作からの流れで、カバー曲も2曲入っています。
驚いたことに、彼女は日本語が全くしゃべれないのだそうです。ただ、同じアジアの語感は共通しているので、歌うことにはあまり苦労はなかったそうですね。「ビリーヴ」にしても、日本語の歌詞の間に英語がちりばめられているという手法が、なかなか素敵です。2曲目に入っている「フォール・イン・ラヴ」という曲では、なんだか聴いたことのあるメロディだと思ったら、それは「大きな栗の木の下で」という、あの遊び歌ではありませんか。その歌詞の部分は英語で、「あなたと、わたし」というところを日本語で歌うという、シュールな引用です。カバー曲のアレンジも、中島美嘉の「STARS」をレゲエ風の後打ちのリズムに変えて、オリジナルとは全く違ったテイストに仕上げていますし。
彼女は、伸びのあるとても素直な声です。この手の「張って歌う」人たちにありがちな過剰なビブラートがないのが、とても新鮮な印象を与えてくれます。かと思うと、最後の「トゥ・ユー」などは、オブラートでくるんだような、とてもソフトに抑えられた声を使って、しっとりとした味を出しています。アルバムの最初から最後まで、これほど味わい深く楽しめたなんて、久しぶりのことです。

CD Artwork © EMI Music Japan Inc.
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by jurassic_oyaji | 2012-07-30 20:32 | ポップス | Comments(2)
愛のメモリー
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松崎しげる
AG/HUCD-10107



今から10年近く前、2003年に、グリコから「青春のメロディーチョコレート」というシングルCDが「おまけ」に付いているチョコレートが発売されました。それに関してのトークはこちらにあります。
そのCDは、1960年代から1970年代にかけてリリースされた「シングル・レコード」を忠実に復刻したもので、大ヒット商品となりました。その中に入っていたのが、この松崎しげるの「愛のメモリー」です。本命は10、二股相手は3(それは、愛の目盛)。
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このシングルのオリジナル(↑)は1977年にリリースされました。今年が、その時から35周年ということで企画されたのが、この「マキシ・シングル」です。「シングル」と言っても、収録トラックは全部で14、収録時間は68分、優に「アルバム」に相当するボリュームです。それで税抜き価格は952円、さっきのオリジナル・シングルが600円でしたから、なんというお買い得。実際は、2つのトラックはカラオケですから、曲としては12曲、そのうちの2曲が、今回新たに録音されたものです。つまり、この中にはこの35年間に録音された、12種類の「愛のメモリー」が入っているのですよ。
すでにお気づきでしょうが、このCDのジャケットはオリジナルのパロディになっています。さりげなくスカイツリーなどを取り込んで、「今」を演出しています。これで、ご本人が昔と同じポーズをとっていれば完璧なんですがね。せっかく衣装まで同じにしたのですから。
もう一つ違っているのが、左上にあるレーベルです。オリジナルにはニッパー・マーク、当時のビクター音楽産業の商標が付いていましたが、現在は「ハッツ・アンリミテッド」という会社からCDを出しているようですね。なにしろ35年ですから、そもそもいつまでも同じレーベルにいられるわけはありません。リストを見てみると、これまでにビクター→EMI→ソニー→ロック・チッパー→ジェネオン、そしてハッツと渡り歩いてきたようですね。それぞれのレーベルでベスト・アルバムなどを作るときに、新たに録音していれば、このぐらいのバージョンは集まってしまうのでしょう。この中にはDVDのサントラから取ったライブ・バージョンもありますし。
ただ、その中に、「愛の微笑」という、タイトルまで違っているのがありました。これは実は、1975年に作られた、いわば「愛のメモリー」の「原曲」なのだそうです。当時のヨーロッパの音楽祭に「出品」するために作られたもので、実際は晴れて「第2位」となったのですが、国内では全くヒットしなかったものが、山口百恵と三浦友和が共演したCM(グリコ!)に使われたことで一挙にブレイク、新たにタイトルを変えてシングルとしてリリースされて、大ヒット曲となったのでした。
ということで、正確には37年のスパンの中で行われた様々なアレンジを、まとめて聴くことができるという、この手のものが好きな人にとっては何よりのCDが出来上がりました。確かに、時代によってその時々の流行のサウンドが取り入れられているのがよくわかります。1988年には「チョーッパー・ベース」とか。変わったところではチェコ・フィルを起用してのシンフォニック・バージョン、なんてのもありましたね。でも、やはり一番安心して聴けるのは聴きなれた最初のバージョンです。いや、実は意外なことに、録音もこのアナログのものが一番心地いいのですね。「グリコ」のマスタリングはひどいものだったので今まで気が付かなかったのですが、今回最新のマスタリングで聴くと、アナログ録音の可能性がきちんと伝わってきて、下手なデジタル録音のものよりずっといい音なのですよ。
それと、一番新しいアレンジは、何か原点に返ったような、とても素直なもののように感じられます。巡り巡って、最終的に元のものに立ち返ったということ、やはり最初に新しいものを作り出す時のエネルギーは、アレンジにも反映されるのでしょうね。

CD Artwork © Hats Unlimited Co., Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2012-06-26 23:27 | ポップス | Comments(0)
Bach in Jazz
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Martin Petzold(Ten)
Stephan König(Pf)
Thomas Stahr(Bass)
Wieland Götze(Drums)
RONDEAU/ROP6048




バッハをジャズで演奏するというアイディアは昔からありました。なんでも、その最も早いものは、1937年ごろのジャンゴ・ラインハルトとステファン・グラッペリの演奏なんだそうですね。
最近になって、「キングズ・シンガーズ」が「クリスマス・オラトリオ」をジャズのビッグ・バンドをバックに歌ったアルバムが出ましたが、これはそんな流れとは一味違った仕上がりを見せていたものです。そこではオリジナルをそのまま歌う「声楽」が、「ジャズ」とコラボレーションしていたのです。あるいはそんな甘っちょろいものではなく、まさに「異種格闘技」の様相を呈していたのかもしれません。
今回も同じようなアプローチ、ここでは、このレーベルではおなじみのテノール、マルティン・ペツォルトがその「声楽」パートを担っています。まずは喉を滑らかにして(それは「トローチ」)。幼少のころからバッハゆかりのトマス教会聖歌隊で活躍、どっぷりバッハの世界に身を置いていたペツォルトが、このアルバムで「ジャズ」と対峙する時の意気込みは、このジャケットを見るだけで分かります。彼が手にしているのは、ブライトコプフ版のカンタータの楽譜のはず。
一方の「ジャズ」サイドは、ライプツィヒのピアニスト、シュテファン・ケーニッヒを中心とするトリオです。ベースのトーマス・シュタールという人は、ウッド・ベースだけでなく、6弦のエレキ・ベースも弾いてます。
アレンジはケーニッヒですが、選曲は誰が行ったのでしょう。最初と最後こそ、カンタータ第147番というベタなところが扱われていますが、ここではかなりマニアックな曲が選ばれているのが、興味をひきます。まずは「マタイ受難曲」の35番のアリアが、その前のレシタティーヴォとともに歌われます。前奏がかなりジャズっぽく自由にテーマを引き延ばしていますが、テノールが入ってくると、オリジナルのベースのオスティナートがそのままキレの良いエレキ・ベースで演奏されます。そこに絡むピアノも、なにか「バッハ」という雰囲気をたたえているのが面白いところ、まずは肩慣らしにあまりヘンなことはしないでおこう、というスタンスでしょうか。
しかし、次の曲は、なんと「ヨハネ受難曲」の「第2稿」だけで使われている13IIというアリアです。渋いですね。この曲はおよそバッハらしからぬドラマティックなテイスト満載ですから、「ジャズ化」のしがいもあったのでしょう。イントロからしてハイテンション、アリアの流れを中断してのエレキ・ベースのソロも、とことんパワフルに迫ります。
面白かったのは、カンタータ第26番のアリア。と言われてもどんな曲だかすぐ分かる人はなかなかいないはずですが、オリジナルはフルートとヴァイオリンのオブリガートが加わった、6/8拍子のとても快活な曲です。ちょっと「ヨハネ受難曲」の9番のソプラノのアリアに似ていますね。もちろんバッハの場合は、普通に十六分音符6個を1拍と数えて6+6の2拍子になっているのですが、ここでのケーニッヒのアレンジのプランは、これを前半は3+3、後半は2+2+2の「ヘミオレ」にして、「チャチャチャ・チャチャチャ・チャー・チャー・チャー」という、まるでバーンスタインが「ウェストサイド・ストーリー」の「アメリカ」で使ったようなリズムで押し通すというものでした。実はバッハ自身もこの「ヘミオレ」はいたるところで使っているのですが、これはその「拡大解釈」といった趣、バッハが内包していたリズムを現代風に置き換えたというかなりショッキングなアレンジでした。
しかし、このプランは、そういうリズムの中で、ペツォルトがあくまでもきちんとしたビートをキープしていればこそ、生きてくるものなのに、そのペツォルトがいかにも及び腰なのがちょっと残念、というかかわいそう。声もなんだか本調子ではないようですし、やはりこういう企画は難しいものがあることを再確認です。意気込みだけではなかなか。

CD Artwork © Rondeau Production GmbH
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by jurassic_oyaji | 2012-06-10 20:55 | ポップス | Comments(0)
It Don't Mean a Thing
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Marin Alsop/
String Fever
NAXOS/8.572834




マリン・オールソップと言えば、このレーベルでもおなじみ、世界中のオーケストラを相手に活躍している女性指揮者です。いや、別に「女性」などと特別扱いする必要など全くないほどに、他の音楽家同様、今では指揮者が女性であることに何の違和感もない時代になっています。
彼女は、1989年にクーセヴィツキー賞を取って指揮者としてのキャリアをスタートさせる前は、ヴァイオリニストだったということは知っていました。しかし、スティーヴン・ソンドハイムのミュージカル「スウィニー・トッド」のオリジナル・キャスト盤を入手した時に、劇場のオーケストラのメンバーの中に名前を見つけた時には、驚きました。彼女は、ブロードウェイの劇場のピットで演奏するという、まさに「ショービズ」の世界にどっぷりつかっていたことがあったのですね。ここではトップではなく、トゥッティのヴァイオリン奏者のようでした。
それは、1979年に録音されたものですが、1981年に、彼女がコンサートマスター(リーダー)となって結成したのが、この「ストリング・フィーヴァー」というユニットです。小編成の弦楽合奏団ですが、コントラバスは完全にリズム・セクション、そしてドラムスも加わっています。管楽器を全く使わない編成で「ジャズ」を演奏しようというコンセプトだったのでしょうね。それは、そんな彼女のキャリアからは十分に納得のいく活動です。
このCDには、1983年と、1997年に録音されたものが一緒になっています。最初からこういう形だったのか、あるいはコンピレーションなのかは、ここでは全くわかりませんが、1983年の時のプロデューサーが、ウディ・ハーマン楽団のサックス奏者だったゲイリー・アンダーソンなのが、目を引きます。彼はその時だけでなく、1997年の録音でも多くの編曲を担当していますから、このユニットのサウンドに関しては大きな貢献を果たした地位にいたのでしょう。その編曲のプランは、基本的には管楽器によるビッグ・バンドのサウンドを、弦楽器によって再現する、というものだったような気がします。
こういう「置き換え」を聴いていると、別の分野でも同じようなことをやっていることが思い出されます。それは、「吹奏楽」の世界。そこでは、逆に弦楽器のサウンドを管楽器によって再現しようと頑張っていたのですね。シンフォニー・オーケストラのヴァイオリンのパートをクラリネットに置き換えようというのが、彼らの基本的なプラン、それに真剣に取り組んでいる方には申し訳ないのですが、なぜ、わざわざそんなことをするのか、という素朴な疑問が、オリジナルを聴きなれている時には常に湧いてきてしまいます。
同様の違和感が、この、弦楽器だけによる「ビッグ・バンド」でも湧き起ってきます。確かにそれらしい音にはなっているのですが、なぜこれを弦楽器でやらなければいけないのか、という必然性がまるで感じられないのですね。しかも、有名な「In the Mood」などは、サックス・セクションはそれなりのものになっても、金管セクションのインパクトが出ないことには、なんとも「まがい物」にしか聴こえてきません。厳然と存在している「ジャンルの壁」を力ずくで壊そうとすると、こんな悲惨なことになってしまうのかもしれませんね。
ただ、「Liberated Brother」のような、わりと新しめでラテン色の濃いものは、リズム・セクションが「本物」ですからきちんとしたグルーヴが感じられて楽しめます。ブルーベックの「Blue Rondo a la Turk」なども、オリジナルは小さなコンボですし、ここでの変拍子はそもそも「ジャズ」とは一線を画すものでしたから、曲の生命が損なわれることはありません。まあ、だからと言ってわざわざこんなものを買って聴くことに、意味を見出すことはできませんが。
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それより意味不明なのが、国内盤の「帯」にある「カニも食べたい」というコピーです。これはいったいなんなのかに

CD Artwork © Naxos Rights International Ltd.
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by jurassic_oyaji | 2012-05-31 20:40 | ポップス | Comments(0)
Kisses on the Bottom
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Paul McCartney
HEAR MUSIC/HRM-33369-02




かなり昔のことで記憶が曖昧ですが、さる高名なクラシックの作曲家が、「ビートルズのような音楽は、20代の若者にしか作れない」というようなことを言っていました。ああいう音楽は年を取ったらやるものではない、というような意味が、その語感の中にあって、いかにもなロック蔑視だ、と、その時は思ったものです。
とは言っても、やはりその人が言うとおり、いい大人、というか、「初老」のジジイがいい年こいて大声を張り上げて「ロックンロールだぜ!」と盛り上がっているのがなんだかみっともなく見えてしまうのも、ひとつの真実ではないでしょうか。ロックに限らず賞味期間が存在する音楽というものは確かにあるようですね。かつてのアイドルが、還暦を迎えようというのに昔の持ち歌ばかりを歌っているというのは、間違いなく醜いものです。
そんな、かつては「ロッカー」であったポール・マッカートニーが、まさかと思われた「ジャズ」のアルバムを出したというのも、やはり年を重ねていった中での変化によるものなのでしょう。大げさな拒否反応を示す人もいたようですが、そんなに目くじらを立てずに、新しいポールを受け入れようではありませんか。なんたって、もうじき「古希」を迎えるのですからね。やりたいことをやらせてあげたらいいのではないでしょうか。
ここでのポールは「ボーカル」に専念しています。楽器は、すべて信頼のおけるジャズ・ミュージシャンに任せようという姿勢なのでしょう。もちろん、プロデュースやアレンジにも、クレジット上は一切関わっていないようですね。ただ、彼のクレジットが「Vocals」と、複数形になっているのが要注意です。
最初はリズム・セクションだけのバックで「I'm Gonna Sit Right Down And Write Myself
A Letter
」です。イントロのウッド・ベースのピッキングや、ブラシを使ったドラムスなどは、まさに「小粋なジャズ」という趣、それと、口やかましいジャズ・フリークにも通用しそうなとびきりの録音に、まず耳が反応してしまいます。このアルバムの音源の24/96FLACファイルがオフィシャル・サイトからダウンロード出来るそうですが、そんな「ハイレゾ」にも対応できるソースであることも納得できます。CDで聴くとボーカルがいまいちドライなのが気になるのですが、せめてSACDでも出してほしかったものです。
ここでは、コーラスがとても気持ち良くハモっています。それが「Vocals」ということだったのですね。基本的にここでのポールの歌い方は力を抜いたハスキーなもの、そこに彼自身のファルセット気味のコーラスが入ると、なんとも上品なハーモニーが生まれます。
次の「Home(When Shadows Fall)」になると、今度はなんとも渋いストリングスが入ってきます。演奏しているのはロンドン交響楽団。ポールはアメリカで録音していますが、このストリングスはロンドンのアビーロード・スタジオでのセッションです。もちろんスタジオ1でしょうが、ポールがさんざん使ったスタジオ2と同じ建物というのも、なにかの因縁でしょうか。実は、このアルバムには、スタジオ・ミュージシャンによる別のストリングスが入ったものもあります。それはアメリカで録音されているのですが、ロンドン響と比べると、弦の響きの深みが全く違いますね。
スタンダード・ナンバーに混じって、ポールの新作も2曲披露されます。「My Valentine」は、まさにマッカートニー節満載のキャッチーな、それでいてオトナの音楽で、見事に「ジャズ」になっています。「Only Our Hearts」は、ちょっとボーカルの印象が乏しい気がしますが、それはゲストのスティービー・ワンダーのハーモニカが、あまりにも存在感があり過ぎたせいなのかもしれません。
それが最後だと思っていたら、そのあとでジャケットにはなんの表示もないボーナストラックが2曲も入っていました。ちょっと得した気分。全くシャウトしていないポールも、なかなかいいものです。

CD Artwork © MPL Communications Inc.
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by jurassic_oyaji | 2012-05-11 23:13 | ポップス | Comments(0)
RAMIN
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Ramin Karimloo
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アンドリュー・ロイド=ウェッバーのミュージカル「オペラ座の怪人」が25周年を迎えた記念に行われた、ロイヤル・アルバート・ホールでの公演は、すぐさまBDDVDが発売されましたし、WOWOWでも放送されましたから、多くの人の目に触れたことでしょう。そして、それを体験した人たちは、タイトル・ロールを歌った、日本人にとっては全くの無名の新人の声に一様に魅了されてしまったのではないでしょうか。このイベントでは、アンコールとして歴代の「ファントム」役の歌手が声を競うコーナーがありましたが、その新人くんはそんな大御所たちをはるかに凌駕する素晴らしさだったのですからね。
彼の名前は、ラミン・カリムルー、イランで生まれた33歳の若者です。すでにロンドンではミュージカル・シンガーとして確固たる地位を築いている彼が、このたびなんとポップス・テイストのソロ・アルバムをリリースしました。
とりあえず、ほとんど知られてはいないカリムルーの経歴がライナーにありましたので、それをご紹介しましょう。彼がイランで生まれたのは、1979年の革命のゴタゴタの最中、まだ2ヶ月になったばかりだというのに、家族に連れられてローマ郊外の小さな町に逃げてこなければなりませんでした。さらに2年後には、彼らは今度はカナダに渡ります。そこで平穏な学校生活を送っていたカリムルーは、12歳の時に学校行事として連れていかれたミュージカル「オペラ座の怪人」を観たとたん、すっかりハマってしまいました。それまでは「オペラ」なんて大嫌いだったというのに。そこで歌われていたファントムの声に感動し、その時点で彼は将来の道を決めたのだそうです。
数年後の彼は、ロックバンドのヴォーカルなどでステージに立つようにはなったものの、生活のために工場で働いたりウェイターをやったりしている毎日でした。そのとき偶然、クルーズ船の中で公演を行うツアー・カンパニーのオーディションを受けたところ採用となってしまいます。ただし、それは「ダンサー」としての採用だったのです。ところが、2週間後にはカンパニーの歌手が突然いなくなってしまいます。そこで、彼は歌手としてステージに立つチャンスを得ることになったのです。
カンパニーはクルーズの途中でロンドンに立ち寄りますが、そこが気に入ったカリムルーは、船を降りてそのままそこで暮らすことになります。そこではやはり偶然に良い先生に巡り会え、何度もオーディションのチャンスを与えられて、ウェスト・エンドでの多くのミュージカルに出演することになりました。もちろん、「オペラ座の怪人」の舞台にも立ち、ついに夢を叶えるのです。
これはまさに「シンデレラ・ボーイ」を絵に描いたような成功譚ではないでしょうか。しかし、先日「25周年」のBDDVDのリリースを機に来日して、「劇団四季」のイベントに出演したカリムルーは、日本でのファントム役の第一人者である高井さんに会えたことを非常に喜ぶという謙虚な一面も披露してくれました。
このアルバムでは、ファントムのナンバー「Music of the Night」も歌われています。それは、高井さんのような洗練された声とは全く異なる、非常にパワフルな魅力をたたえたものでした。それでいて、高音のロングトーンなどは、誰にも真似の出来ないほどの澄んだ美しさを持っています。そこで思い出したのが、10年ほど前に騒がれたことのあるラッセル・ワトソンの声でした。彼は確か「七色の声」とか言われていたはずですが、カリムルーの場合はもっと沢山の「色」を持っていることは間違いありません。なんと言っても、彼の今後の「夢」は、ナッシュヴィルでカントリー・シンガーと共演することなのだそうですからね。確かに、アルバム中の彼の自作にはカントリーの「匂い」も感じられます。お酒の匂いじゃありませんよ(それは「サントリー」)。

CD Artwork © Sony Music Entertainment
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by jurassic_oyaji | 2012-03-22 22:58 | ポップス | Comments(0)
Duets II
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Tony Bennett
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巷で大評判のトニー・ベネットの最新アルバムを聴いてみました。去年85歳というとんでもない年になって作られたこのアルバムは、なんとBILLBOARDのアルバム・チャートで初登場1位を獲得したというのですから、すごいものです。芸歴の長いベネット自身にとっても、これが初めての「1位」だというのですから、感慨もひとしおでしょう。
実は、この5年前、2006年に彼が80歳になった時に、記念に作られたアルバムが「Duets/An American Classic」でした。タイトルの通り、彼がこれまでに歌ってきたスタンダード・ナンバーを、今をときめく人気アーティストと一緒に「デュエット」した、というもので、これもかなりの評判になったものです。せっかくだからと、こちらもついでに聴いてみたのですが、確かに素晴らしいアルバムでした。何より、ベネット本人の声がとても80歳とは思えないような力強いものでした。リズムやピッチには寸分の乱れもありませんし、高音で張った声も堂々たるものです。ですから、それにからむ歌手たちは、自分の個性を出す前に、まずこの声に圧倒されて、ほとんど「先生と生徒」みたいな歌い方になっているのですから、すごいです。ポール・マッカートニーやエルトン・ジョンといったロック畑の人が、そんな感じでかしこまって歌っているのがおかしくて。かと思うと、スティービー・ワンダーなどとは、まさに「真剣勝負」といった緊張感あふれるやりとりが聴かれたりしますから、とことん中身の濃いアルバムでしたね。
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それから5年、彼の歌は全く衰えてはいませんでした。いや、声の張りなどは、前作以上かもしれませんよ。さらに、サウンド的にも格段にパワーアップしたものが聴かれます。前作ではあまり使われていなかったビッグ・バンドのアレンジが、前面に押し出されているのですね。そんなキレのいいサウンドに乗って、まず登場したのがレディー・ガガです。うすうす気づいてはいたのですが、彼女は本当に歌が上手なんですね(いや、「歌手」なんだから歌がうまいのは当たり前なのかもしれませんが、なんせ○任谷由美が、歌が歌えなくても歌手になれることを証明してしまったものですから)。声が素晴らしいのはもちろんですが、ここではベネットと対等に渡り合えるほどのジャズ的なセンスも披露してくれています。年の差60歳の軽妙なデュエット、これは素敵です。
別の意味で素敵な味を出していたのが、こちらは80歳に手が届こうかというウィリー・ネルソンです。カントリーのフィールドでありながら、ベネットとはなんの違和感もなく溶け合っている彼のだみ声は、まさに「重ねた年輪」が感じられるものでした。おまけに、とことん渋いギター・ソロまで聴かせてもらえますよ。
ベネットは、どんな人が相手でも、常にリラックスしながら楽しんで歌っているようでした。豪華ですね(それは「デラックス」)。おそらく、あまりリハーサルなどは行わないで、その場の「ノリ」を重視したような作られ方なのでしょう。間に「今度は、君の番だよ」みたいなセリフまでが、極めて「音楽的」に入っているのですから、たまりませんね。
ただ、中には「なんでこんな人が」というのがいないわけではありません。その筆頭がアンドレア・ボチェッリ。まさに「水と油」を絵に描いたような唐突さには、笑ってしまいます。同じクラシック指向でも、ジョシュ・グローバンはなんなく馴染んでいるというのに。
前作のプロデューサー、大御所のフィル・ラモーンとともに、ここではベネットの息子、ディー・ベネットが、エンジニア兼任でプロデュースも行っています。彼の手によって、ほぼフルサイズのオーケストラによるストリングスのサウンドが、とても華麗で上品に仕上がっています。それは、前回のベルリン・フィルの弦楽器など比較にならないほどの美しさです。

CD Artwork © Sony Music Entertainment
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by jurassic_oyaji | 2012-01-25 20:36 | ポップス | Comments(0)
Hooked on Classics
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Louis Clark/
The Royal Philharmonic Orchestra
DELTA/60378




1980年代初頭に一世を風靡した「フックト・オン・クラシックス」のシリーズが、なんだか得体の知れないイギリスのレーベルから3枚組のボックスとしてリリースされました。ジャケットはオリジナルとは似ても似つかないデザインですが、3枚まとめてたったの1000円というので、買ってみましたよ。実は、かつてこれらの曲をまともに聴いたことはなかったものですから。
それにしても、このジャケット、例の、ト音記号の先が釣り針(フック!)になっているという印象的なイラストが再現されていないのは残念ですし、なんだか「五線」ではなく「六線」になっているのが、非常に気になります。ま、その程度の志なのでしょう。そもそも、肝心の指揮者の名前すら、ここにはありませんからね。
そんなかわいそうな扱いを受けている1947年生まれの指揮者、アレンジャーのルイス・クラークは、ジェフ・リンの「ELO」のストリングス・アレンジャーとして1974年にこの業界にデビュー、後には、ELOのツアーにもキーボードのメンバーとして参加しています。1981年に、クラシックの名曲をディスコ・ビートに乗せてエンドレスで演奏する、というアイディアで、彼自身がロイヤル・フィルを指揮して録音した「Hooked on Classics」というアルバム(LP)は、たちまちUKのヒット・チャートを躍り上がり、クラシックにはあるまじきセールスを記録することになりました。まあ、正確には「クラシック」は単なる素材だったので、「クラシックのアルバム」とは言えないのですが、「クラシック」がらみでそんなに売れてしまったのは、一つの「事件」だったわけですね。それに味を占めて、同じメンバーによって1982年には「Hooked on Classics 2」(後に「Can't Stop the Classics」)、そして1983年には「Hooked on Classics 3」(後に「Journey through the Classics」)という、全く同じコンセプトのアルバムがリリースされ、いずれも大ヒットとなりました。
クラークが関わったのはその3枚だけですが、そのあとは、よくあるような他のアーティストによる「便乗」アルバムが続出することになりますね。そんなわけで、この「フックト・オン」シリーズは、いったいどのぐらいのエピゴーネンを生んだのか、その実態を正確に把握するのは困難です。
この「フックト・オン」という言葉は、「引っかける」ということで、次々と色々な曲を連続して演奏するという意味を持たせているのでしょうが、最近になって、もうちょっと別な意味もあるのではないか、と思うようになりました。ポップスでは、例えば山口百恵の「♪ああ~、日本のどこかに」(いい日旅立ち)のように、曲の中で最も盛り上がる部分のことを「サビ」といいますが、「フック」には、この「サビ」と全く同じ意味があるのですね。つまり、このタイトルは、単に曲をつなぐだけではなく、その曲のまさに一番の聴かせどころがつながれている、という意味までが、込められているのではないでしょうか。
ジャケットはちょっとヘンですが、とりあえずここでは3枚のアルバムがきちんと3枚のCDに再現されています。それによって、リリースされてから30年も経って、初めてクラークの仕事に対峙することになりました。高音を強調した、いかにもポップス寄りのサウンドには、ちょっと引いてしまいますが、この、全く脈絡のない曲をつなぐというやり方には、とても潔い爽快感を味わうことが出来ました。というより、これを聴いて、思わずピーター・シックリーの「P.D.Q.バッハ」を思い浮かべてしまったのは、なぜなのでしょう。「本家」よりもアレンジはかっこいいし、演奏もしっかりしている分、「笑い」もより充実したものに感じられてしまいましたよ。
「曲名あてクイズ」として遊ぶのにも、これはもってこい。でも、難易度はかなり低いですね。このサイトを見ているような人だったら、簡単に全部分かってしまうはずですよ。

CD Artwork © Delta Leisure Group Plc.
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by jurassic_oyaji | 2011-09-26 19:51 | ポップス | Comments(0)