おやぢの部屋2
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カテゴリ:フルート( 211 )
CONNISON/Pour Soutir au Jour
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Mathieu Dufour(Fl)
Stépahne Denève/
Brussels Philharmonic
DG/481 2711


1970年生まれのフランスの作曲家、ギヨーム・コニソンのオーケストラ作品を集めたアルバムです。彼は、シリアスな曲だけではなく、コマーシャル・ソングも仕事と割り切って作っています(業務コマソン)・・・というのはウソですが、彼の音楽のルーツは決して堅苦しいものではなかったことは事実です。実際、彼の初期の作品の中にはポピュラー・ミュージックの要素がかなり含まれていたようです。「ディスコ・トッカータ」というタイトルの曲なども作っていたそうですから。
コニソンは、音楽のジャンルだけではなく、国籍もボーダーを取り払っているようです。フルート協奏曲はフランス、「3部作」はドイツ、イタリア、ロシアというように、それぞれの作品には別の国に由来するテキストやモティーフが用いられている、というのが大きな特徴となっています。
「3部作」の1曲目はドイツ語で「Flammenschrift(炎の文字)」というタイトルです。なんでも、ベートーヴェンのイメージを通してドイツ音楽へのオマージュを試みた、ということですが、確かに激しく荒れ狂うような音楽には強い「ドイツ的」なインパクトが感じられます。もちろん、それだけでは終わらずに、中間にメロディアスな部分を設けることも忘れてはいません。委嘱はラジオ・フランス、初演は2012年にダニエレ・ガッティ指揮のフランス国立管弦楽団によって行われました。
2曲目のタイトルはイタリア語で「E chiaro nella valle il fiume appare」ですから、谷や川が明るく姿を現すような情景が描かれているのでしょうか。まさに、これはイタリアの風景の美しさを音楽で表現したものなのだそうです。というより、ドイツの作曲家のリヒャルト・シュトラウスが作った「アルプス交響曲」とよく似たテイストが感じられます。確かにアルプス山脈はイタリアまでカバーしていますからね。こちらはブザンソン国際音楽祭からの委嘱で、初演は2015年、ブザンソン国際指揮者コンクールの3人のファイナリストがバーゼル交響楽団を指揮したのだそうです。
最後の曲のタイトル「Maslenitsa」は、ロシア語の固有名詞で「マースレニツァ」という、毎年春に行われるお祭りを指し示す言葉です。これはもう、例えば運動会のかつての定番、カバレフスキーの「ギャロップ」とかハチャトゥリアンの「剣の舞」といったイケイケの明るい音楽を連想させるようなテイストです。中間部で少し暗めの部分が登場するのもお約束、ここはムソルグスキーの「展覧会の絵」の「カタコンブ」あたりの影響でしょうか。ボルドー・アキテーヌ管弦楽団とベアルン地区ポー管弦楽団からの委嘱で、2012にそれぞれのオーケストラによって初演されています(指揮はアレクサンドル・ラザロフとフェイサル・カルイ)。
そして、アルバム・タイトルにもなっているのが、5つの部分が連続して演奏されるフルート・ソロとオーケストラの作品「死者の書」です。これは、もちろんエジプトで死者とともに埋葬される死後の世界を語った書物が題材になっていて、音楽もエジプト風のスケールやモティーフがふんだんに使われています。5拍子とか7拍子といった変拍子も頻繁に登場する中で、フルートがアクロバティックなフレーズを披露するという、これはストラヴィンスキーの「春の祭典」あたりを髣髴とさせる曲調です。最後に出てくるダンスは、まるで日本のお祭りのお囃子のように聴こえてしまうのも、なにか親しみを持たせてくれる計らいです。
ソロは、長らく務めたシカゴ交響楽団から、2015年にアンドレアス・ブラウの後任としてベルリン・フィルに移籍したマテュー・デュフォーです。彼の名人芸には、もう舌を巻くしかありません。シカゴ響とフランス国立管からの委嘱で、デュフォーに献呈されています。もちろん彼のソロによって2014年にデュトワ指揮のシカゴ響で世界初演、2015年にエッシェンバッハ指揮のフランス国立管によってフランス初演が行われています。

CD Artwork © Decca Records France

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by jurassic_oyaji | 2017-09-14 20:41 | フルート | Comments(0)
REINECKE/Flute Concertos, Flute Sonatas
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Tatjana Ruhland(Fl)
Eckart Heiligers(Pf)
Alexander Liebreich/
Radio-Sinfonieorchester Stuttgart des SWR
CPO777 949-2/


カール・ライネッケという人は、作品番号の付いたものだけでも300曲近く残した作曲家ですが、指揮者としても活躍していました。よく「メンデルスゾーンのあとを継いで、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の指揮者に就任した」という記述を見かけますが、正確には、メンデルスゾーンのすぐ後にはこの間ご紹介したニルス・ゲーゼが指揮者になり、さらにもう一人、やはり作曲家で、ベートーヴェンやメンデルスゾーンの楽譜の校訂(ベートーヴェンの場合は、「ブライトコプフの旧版」という、今の原典版によってさんざんに否定されているもの)を行ったユリウス・リーツがいて、そのあとにライネッケという順番なんですけどね。彼は、1860年から1895年までという長期にわたって、このオーケストラの首席指揮者を務めています。そして、ライネッケの後にはニキシュ、フルトヴェングラー、ワルターといった錚々たる顔ぶれが続くことになるのです。
現在では、作曲家としても指揮者としても、全く無名になってしまったライネッケですが、フルート奏者にとっては、彼のフルート協奏曲とフルート・ソナタは、間違いなくレパートリーに入れなければならないものとしての地位を誇っています。もちろん、それは作品番号283の協奏曲と、「ウンディーヌ」というタイトルの付いた作品番号167のソナタだけなのですが、このCDでは、協奏曲もソナタも「もう一品」追加されていました。
もう一つの「ソナタ」は、実はフルートのためのものではなく、ライネッケが指揮者だった時期のゲヴァントハウス管弦楽団の首席フルート奏者だったヴィルヘルム・バルゲが、1873年頃に作られたヴァイオリンのための「ソナチネ」をフルート用に編曲したものです。1882年に作られた「ウンディーヌ」は、このバルゲに献呈されています。
もう一つの「協奏曲」は、「バラード」というタイトルの、フルート・ソロとオーケストラのための10分ほどの作品です。作品番号が288となっていますが、これはライネッケが85歳の時に作った、彼の最後の作品です。
いずれも、かつて録音していた人はいて(アドリアンとか)別にこれが初録音というわけではないのですが、実際に聴くのはこれが初めてでした。最も作曲年代の早い「ソナチネ」の方はいかにも「習作」風の、後のライネッケのベタベタなロマンティシズムがあふれる、ということは全くない、シンプルな作品です。それに対して、まさに「遺作」の「バラード」は、とても味のある作品でした。曲は3つの部分に分かれていて、最初はとても重苦しい、なにか「死の予感」のような物まで感じられるような音楽で始まりますが、中間部のスケルツォ風の、まるでメンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」序曲のような軽やかなパートを経た最後の部分では、なにか達観のような物さえ漂うような明るさに満ちた音楽に変わります。
このアルバムの中では、この「バラード」だけがライブ録音、多少ソロがオフ気味に聴こえてきますが、なにか観客と一緒になった熱いものが込められた演奏なのではないでしょうか。
それに対して、残りの3曲はスタジオ録音、ルーラントのフルートも、細部のニュアンスまで爛々と捕えられた精度の高い録音です。そんな音で聴く彼女の音は、低音から高音まで見事に磨き込まれた素晴らしいものでした。細かいパッセージでも目の覚めるようなテクニックを披露してくれています。これで、第2楽章からもう少し深い情感がただよっていれば、それほど多くない協奏曲の録音の中では、間違いなく最高のものの一つとなっていたでしょう。
協奏曲の楽譜は、2003年にブライトコプフからヘンリク・ヴィーゼの校訂で出版された時に、それまでの楽譜とは細かいところで異なっている自筆譜の楽譜が付け加えられていました。しかし、彼女はそれを使ってはいなかったのも、ちょっと残念。

CD Artwork © Classic Produktion Osnabrück

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by jurassic_oyaji | 2017-09-05 23:09 | フルート | Comments(0)
WAGENSEIL, BONNO, GASSMANN, MONN/Flute Concertos
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Sieglinde Größinger(Fl)
Ensemble Klingekunst
CPO/555 078-2


このジャケットに使われているのはマリア・テレジアの肖像画。彼女は、父のカール6世が亡くなった1740年にハプスブルク家の後継ぎとして神聖ローマ帝国の皇后となり、自身が亡くなる1780年まで文字通り「女帝」として君臨していました。人見知りが激しかったそうですね(それは「テレヤ」)。ウィーンでは東京からの新婚さんや恋人たちがいちゃいちゃするので有名な観光地、シェーンブルン宮殿は、彼女が在位中の1748年に完成させたものです。ま、毎年テレビで見れますから、別に行きたいとは思いませんが。
そんな、今となっては観光資源としてこの都市に多大の貢献をしている豪華な施設を建設できたほどの財力を誇ったハプスブルク家でしたが、マリア・テレジアの王位継承が発端となった戦争によって、軍事予算が増えたことに反比例して、文化的な面での予算は徐々に削減されていったのです。宮廷の楽団も、カール6世の頃にはそのメンバーは150人ほどいたものが、マリア・テレジアの代になると次第に減っていき、たとえば、このアルバムにも登場する宮廷バレエ作曲家だったフローリアン・レオポルド・ガスマン(あの有名なアントニオ・サリエリの前任者)が1772年に宮廷楽長に就任したときには合唱も含めた楽団員は40名ほどになっていたそうですからね。
さらに、この18世紀というのは、それまでの絶対主義に代って、啓蒙主義が台頭してきた時代です。芸術面にもその影響はあらわれ、音楽もそれまでの「バロック」から「古典」へと、徐々に変貌していった頃になるのです。
このアルバムには、そんな激動の時代のウィーンで活躍していた4人の作曲家による5曲のフルート協奏曲が収録されています。それらは1740年から1760年までの間に作られたもので、いずれも楽譜は出版されてはおらず、各地の図書館に保存されていた自筆稿を使って演奏されています。当然のことながら、これらは全て世界初録音です。
唯一、2曲の協奏曲が取り上げられているゲオルク・クリストフ・ヴァーゲンザイルは、宮廷音楽家。いずれも1750年に作られたト長調とニ長調の協奏曲は、バロックの様式を色濃く残した中にも、例えば長調と短調の間をめまぐるしく行き来するパッセージなど、斬新な面も顕著な作品です。
彼と同じ時期にやはりウィーンの宮廷に仕えたジュゼッペ・ボンノのト長調の協奏曲は、どこかC.P.E.バッハを思わせるようなパッショネートな面が感じられます。
この中では最も初期、1740年に作られた、ウィーンの教会オルガニスト、ゲオルク・マティアス・モンの変ロ長調の協奏曲は、フルートとともにチェンバロもソロ楽器として大活躍する、いわば「トリオ・ソナタ」のような形態をとっています。
そして、先ほどのガスマンの作品からは、作られたのが1760年という時期のせいなのか、あるいはハ短調という調性のせいなのか、あのモーツァルトの出現まではあと少し、という期待が感じられてしまいます。
そんな、様々な作品を、それぞれのキャラクターを際立たせながら見事に演奏しているのが、バロック時代のワンキーの楽器から、マルチキー、さらにはベーム管まで、あらゆるタイプの楽器の演奏に長けた美しすぎるフルーティスト、ジークリンデ・グレシンガーです。もちろん、ここで吹いているのはバロック時代から使われていたワンキーの楽器でしょうが(さらにキーが増えた楽器が使われるようになるのは、もう少し先のこと)、その密度の高い音色は他の奏者の追随を許しません。この楽器ならではの調性によるピッチの変化の機微も存分に楽しめます。なによりも素晴らしいのは、彼女の装飾のセンスでしょう。完璧なテクニックで飾り立てられた旋律は、ゾクゾクするほど魅力的です。彼女自身と、チェンバリストのマヤ・ミヤトヴィッチが中心になって2009年に創設された「アンサンブル・クリンゲクンスト」の自発的なサポートも、これらの珍しい作品に命を吹き込む、素晴らしいものです。

CD Artwork © Classic Produktion Osnabrück

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by jurassic_oyaji | 2017-08-15 21:41 | フルート | Comments(0)
C. P. E. BACH/Quartette
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Linde Brunmaryr-Tutz(Fl)
Ilia Korol(Va)
Wolfgang Brunner(Fortepiano)
HÄNSSLER/CD HC16016


バッハのヴァイマール時代、1714年に最初の妻との間に次男として生まれたのがカール・フィリップ・エマニュエルでした。彼は作曲家、チェンバロ奏者として大成し、1740年から1768年まではベルリンでフリードリヒ大王の宮廷につかえ、それ以後はハンブルクで活躍、1788年に没します。そんなエマニュエルの、フルートとヴィオラとフォルテピアノのための作品を集めたアルバムです。
ベルリン時代の主君フリードリヒ大王は、ヨハン・ヨアヒム・クヴァンツにフルートを師事し、自身のフルート作品もあるフルーティストでしたから、1755年にエマニュエルは大王のために普通のフルートではなく「バス・フルート」のための曲を作りました。バス・フルートと言えば、現代でもそれほどなじみのある楽器ではありませんし、そもそもそんな時代にこの楽器があったのか、という疑問が最初に湧いてくるのではないでしょうか。写真でその姿を見れば、それはいかにも近代の工業技術が産んだもののように思えます。頭部管はきれいにU字型に曲がっていますから、18世紀の木管の楽器ではこんな形に出来るわけがありません。
ところが、あったんですね、そんな楽器が。この時代の楽器のコピーを作って販売しているこちらのサイトでは、1750年ごろに作られたバス・フルートのコピーが紹介されています。
サイトの写真をクリックするともっと詳細に部分的にアップされた写真も見ることが出来ます。普通のフラウト・トラヴェルソと同じ7つの音孔が開いていますが、人差し指と薬指で押さえるべき音孔は指が届かないのでキーを押さえて穴をふさぐようになっています。そして、やはり頭部管はU字型に曲がっています。その曲がっている部分だけが木製ではなく、金属(真鍮?)で作られていますが、このあたりは金管楽器の技術が使われているのでしょう。
ここで演奏されているのは、バス・フルート、ヴィオラと通奏低音のためのヘ長調のトリオ・ソナタです。ただ、ここでライナーノーツを書いているフォルテピアノ奏者のヴォルフガング・ブルンナーによれば、この曲には2つのヴァイオリンと通奏低音、そしてバス・フルートとファゴットと通奏低音という、他の楽器編成のバージョンもあるのだそうです。
これが、このアルバムで使われている楽器です。バス・フルートを演奏しているリンダ・ブルンマリル=トゥッツは、そんな珍しい楽器をいともやすやすと演奏していました。それは確かにフラウト・トラヴェルソの1オクターブ下の音ですが、その音色はきっちり保たれたまま、より幅広い深みのある音で迫ります。これは、モダン楽器のバス・フルートのちょっとハスキーな音とは明らかに異なる、とても魅力的な音です。曲自体はアンダンテ/アレグレット/アレグロという教会ソナタのような形式、特に、最初のゆったりとした楽章でのヴィオラとバス・フルートの対話と中低音の安らかな響きのハモリが素敵です。
アルバム・タイトルの「四重奏曲」は、作曲家の最晩年、1788年に作られたト長調、ニ長調、イ短調の3つの作品です。「四重奏曲」という割には楽器は3人だけ、つまり、フォルテピアノの右手と左手で「二重奏」分を賄っている形です。バロック時代にはこのような編成では左手のパートが始終チェロなどで補強されていたものですが、この曲の場合はそのような楽器は要求されておらず、あくまで3人だけでの合奏で、よりクリアなサウンドが目指されているようです。まさに、音楽の様式が変わりつつあった時代を象徴するかのような楽器編成なのではないでしょうか。
いずれも3楽章形式、真ん中の楽章はゆったりと歌い上げるというイタリア風の作品です。その、アダージョもしくはラルゴ(ニ長調では「Sehr langsam」というドイツ語表記)の楽章の深い味わいはとことん魅力的、これらの曲のどこをとってもエマニュエルでなければ作れなかったセンスであふれています。

CD Artwork © Profil Medien GmbH

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by jurassic_oyaji | 2017-06-17 20:33 | フルート | Comments(2)
MOZART/Flute Quartets
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Lisa Friend(Fl)
Brodsky Quartet
CHANDOS/CHAN 10932


モーツァルトのフルート四重奏曲は、常に4曲がセットで語られます。LP時代から、この4曲が収録されたアルバムは数多く作られてきました。そしてそれらのアルバムでは、その4つの四重奏曲に番号が付けられていることもありました。もちろん、そんな番号は作曲者が付けたものではなく、後の人が一応作曲されたと思われる年代順に付けたものです。その「年代」の根拠となったのは1964年に改訂されたケッヒェル番号の第6版「K6」です。
そこでは、「1番」はニ長調のK.285、「2番」はト長調のK.285a、「3番」はハ長調のK.285b、「4番」はイ長調のK.298と、1777年から1778年にかけての作品群とされていました。ただ、この中で自筆稿が残っているのは「1番」と「4番」だけで、その他の作品は正確な作曲年代も、さらにはモーツァルト本人が作ったものであるのかも疑問がもたれています。実際、「4番」に関しては使われた紙の鑑定とか、この曲の中で引用されている作品(すべての楽章に「元ネタ」があります)が作られた年代などから考えて、もっと後期、1786年に作られたのではないか、という説が有力になっていました。
それでも、相対的な順番は変わらないので、この番号自体はそれなりに意味のあるものとして、長年使われ続けていたのですね。ところが、今回の2016年3月に録音されたばかりの最新のアルバムでは、曲の並びが番号順ではありませんでした。「1番」、「2番」、「4番」、「3番」と、後半の2曲の順番が入れ替わっていたのです。別に、CDの曲順は作曲順に従わなければいけないという規則があるわけではなく、聴いた時の心地よさなどを考慮して順番を入れ替えるようなことはザラにあるので、これもそんなものかな、と思ったのですが、ライナーノーツを読んでみると、実際に「3番」の方が「4番」より後に作られていたと、そこでは述べられていたのです。
その根拠は、この曲の第2楽章。これは、1781年に作られた有名な12の管楽器とコントラバスのためのセレナーデ「グラン・パルティータ」(K.370a)の第6楽章の変奏曲と全く同じもの(調は違います)なので、かつてはこのフルート四重奏曲がその原曲だと思われていて、それ以前の作品だということになっていたのですが、どうもそれは違っていたようなのですね。現在では、この四重奏曲は1786年か1787年に作られたという説が有力なのだそうです。しかも、この曲の自筆稿も存在してはおらず、わずかに第1楽章のスケッチが残っているだけでしたから、それを元に、モーツァルト以外のだれかがその楽章を作り、さらに第2楽章としてセレナーデの変奏曲を「編曲」して付け加えたのだ、とも言われていますからね。まあ、世の中、研究が進むと知りたくなかったようなことまで明らかになってしまうというのは、よくあることです。
ここでフルートを演奏しているのはリサ・フレンド、まるでモデルのような金髪の美人です。アメリカでルネ・シーバート(ジュリアス・ベイカーが首席の頃のニューヨーク・フィルの2番奏者)、イギリスでスーザン・ミラン、フランスでアラン・マリオンに師事したという、華やかな経歴を持っています。多くのオーケストラと共演したこともありますし、なんでもライザ・ミネリとの共演、などというすごいことまでやっているそうです。
ただ、この四重奏曲の録音を聴くと、なんとも雑な印象が残ります。とても軽やかでキラキラした独特のセンスは持っているのですが、いまいち詰めが甘いというか、なにか肝心なことが抜けているのではないか、という気がしてしまうのです。一番気になるのがピッチの悪さ。特にフレーズの終わりで常に音が低めになってしまうという癖が結構目立ってしまいます。ソリストとしてコンチェルトを吹きまくる分にはそんなに目立たないのかもしれませんが、このようなアンサンブルではそれは致命的です。知名度も高い曲ですし。

CD Artwork © Chandos Record Ltd

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by jurassic_oyaji | 2017-04-22 21:11 | フルート | Comments(0)
SCHUBERT/Works for Flute
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Karl-Heinz Schütz(Fl)
Bruno Canino(Pf)
CAMERATA/CMCD-28343


立て続けにシュッツのアルバムを聴いています。今回はシューベルトの作品集。とは言っても、この中でオリジナルは「しぼめる花変奏曲」だけですが、カップリングはこういうアルバムを作るときにはよく一緒にされている「アルペジョーネ・ソナタ」と、テオバルト・ベームが編曲したシューベルトの歌曲集というまさに定番のラインナップです。
ピアノ伴奏がブルーノ・カニーノというのも、魅力的。もうかなりのお年になるのでしょうが、まだ「現代音楽」が元気だった時代には、目覚ましい活躍をしていたピアニスト、という印象の強い人です。なぜそんな人がシュッツと?という疑問がわきますが、彼はそんな時代に、オーレル・ニコレとかセヴェリーノ・ガッツェローニといった「現代音楽」のスペシャリストであるフルーティストとの共演を頻繁に行っていたのでした。彼はこのレーベルにも多くの録音がありますし、このレーベルが運営に関係している草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァルにも出演しています。その草津で、この二人が共演した時のことが、ブックレットで述べられていますが、シュッツにとってカニーノはアイドルのような存在だったようですね。実際にカニーノが初演したブルーノ・マデルナの作品を演奏するというので、シュッツはとても興奮していたのだそうです。
それは2015年のことですが、翌年に同じメンバーがイタリアの美術館で録音したものが、このCDです。
全くの偶然ですが、この時に録音された「アルペジョーネ」は、別の人の演奏で聴いたばかりでした。その時に彼女が使っていたのはゴールウェイ版とグラーフ版とのいいとこ取りというバージョンだったのですが、今回のシュッツは「グラーフ版」を使っているとしゅっと書いてありました。ですから、図らずもこの二つの版の比較ができることになりました。
やはり、こうして聴いてみると、シュッツにはグラーフ版の方が合っているような気がします。シュッツの場合、おそらく最も磨き上げているのは中音のように感じられますから、高音はとてもあっさりしていて、その結果全体のセンスがとてもいいんですよね。これは、ゴールウェイとは全く別の魅力です。それはそのまま、ウィーン・フィルの魅力へとつながっていくのでしょう。
楽譜の件でちょっと気になったところがありました。それは、第3楽章で流れるようなテーマが終わって調が変わり、ちょっとアクティブになってすぐ、タイムコードだと01:31あたりです。
この音は、このオリジナルのベーレンライター版では「F」なのですが、それをシュッツは「E」で演奏しているのです。つまり、この小節は「ファミミミ/ファミソシ」ではなく「ファミミミ/ミミソシ」となります。実は、ここはゴールウェイ版でも楽譜は「ファミソシ」なのに、ゴールウェイの録音では「ミミソシ」と吹いているのですよ。
この部分、シューベルトの自筆稿ではちょっと曖昧な感じ、「F」とも「E」ともとれるところに音符がありますね。ただ、スラーが付いているので同じ音だとタイになってしまいますし、その後何度か出てくる同じフレーズは、すべて「ファミソシ」の音型になっていますから、ここはまず「ファミソシ」ではないかと思うのですが。
ただ、このブライトコプフ版では、ここは「ミミソシ」になっているのです。グラーフ版(ZIMMERMANN)の楽譜はまだ見たことがないのですが、どうなっているのでしょうね。
ほれぼれするようなシュッツのフルート、そして低音のとても美しいファッツィオーリの楽器で絶妙のサポートをみせるカニーノのピアノも素晴らしいのですが、このCDには商品としてはあってはならない欠陥が。トラック6の、ベーム編曲による「漁師の娘」の冒頭のピアノの音が、ほんの何マイクロセカンドか欠損しているのです。これは明らかな編集ミス。マスタリングを担当したY.T.という男の、プロとは思えない失態です。

CD Artwork © Camerata Tokyo Inc.

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by jurassic_oyaji | 2017-04-06 21:21 | フルート | Comments(0)
SCHUBERT, REINECKE, FRANCK/Flute Sonatas
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Noémi Györi(Fl)
Katalin Csillagh(Pf)
HUNGAROTON/HCD 32767


ハンガリーの若い音楽家、1983年生まれのフルーティスト、ノエーミ・ジェーリと、1981年生まれのピアニスト、カタリン・シーラグのデュオによる、ロマン派のフルート・ソナタ集です。フルーティストの楽器はミヤザワの14Kだそうですが、頭部管だけは「ラファン」なのだとか。その楽器、ブックレットには「ミヤザワ・ボストン」とあったので、このメーカーもボストンに工場を作ったのかな、と思ったら、そんなことはなく、単にハンガリーの国内で販売されるときに、ハンドメイドのグレードが「ボストン・クラシックス」と呼ばれているだけのようですね。
そんな情報はCDを入手してから分ったのですが、そもそもシューベルトの「アルペジョーネ・ソナタ」、ライネッケの「ウンディーヌ」、フランクのソナタというありふれたカップリングのアルバムをわざわざ聴いてみたいと思ったのは、こちらのキングインターナショナルのインフォに、「アルペジョーネ」が「ゴールウェイ編曲」となっていたからです。ご存知のように、この作品は「アルペジョーネ」という弦楽器のために作られたものですが、現在ではその本来の楽器で演奏されることはまずなく、普通はチェロやヴィオラで演奏されています。それをランパルあたりがフルートで演奏し始め、今ではフルーティストのレパートリーとして完全に定着しています。
ただ、オリジナルの楽譜をそのまま演奏すると、フルートの音域をはみ出すところが出てくるので、その部分をオクターブ移動したり、音型を変えたりして吹かなければいけません。そんなわけで、いろいろな人がフルート用にアレンジ、というか、トランスクリプションを施した楽譜がたくさん出ています。そのようなものの一つに、1983年にジェームズ・ゴールウェイがこの曲をRCAに録音した時に彼自身でトランスクリプションを行い、その時のピアニストのフィリップ・モルが校訂を行って、同じ年にアメリカのSchirmer社から出版された楽譜があります。これを使って演奏した時に、それは「ゴールウェイ編曲による演奏」ということになります。
ゴールウェイが「編曲」を行った楽譜は数多く出版されていますが、彼は自分自身が吹いた時に最も美しく響くようなスタイルで編曲を行っています。具体的には、第3オクターブの音域を多用しているのです。ハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲も、フルート版では冒頭を2オクターブ高く編曲していましたね。この音域は指使いも難しくなりますし、何よりも息のコントルールにはとことん繊細さが要求されます。彼はそのために、公開レッスンでは生徒が後悔しないように、この音域を徹底的に練習することを要求していました。
この「アルペジョーネ」にも、そんな高音を使ったところがあります。それは第2楽章の後半、下の楽譜の部分です。
39小節から始まるフレーズが47小節から繰り返されるところの先では最高音はハイCのロングトーンになっています。ここをピアノで美しく伸ばせるかどうかで、ゴールウェイのようなフルーティストになれるかなれないかが決まってしまいます。
しかし、残念なことに、ジェーリ嬢はこの部分へのチャレンジを自ら放棄してしまいました。彼女は47小節の2つ目の音から、62小節までをこの楽譜より1オクターブ下で演奏していたのです。そもそも彼女の演奏には曲が始まった時からなんとも伸びのない音とシロートっぽいフレージングで失望させられていましたから、これは当然のことでしょう。
いや、ブックレットには「ゴールウェイ版とグラーフ版に基づいてノエーミ・ジェーリが校訂を行ったバージョン」とあるのですから、「ゴールウェイ編曲」というキングインターナショナルの表記そのものがすでに間違っていたのでした。録音場所が「フンガロトン・ラジオ」というのもウソですね。でも、フランクが「グラーフ編曲」というのは「正解」ですから、落ち込まないでくださいね。

CD Artwork © Fotexnet Kft.

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by jurassic_oyaji | 2017-03-28 23:10 | フルート | Comments(0)
Karl-Heinz Schütz plays BACH Solo
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Karl-Heinz Schütz(Fl)
CAMERATA/CMCD-28329



今一番気に入っているフルーティスト、カール=ハインツ・シュッツのCDで、今頃になって気が付いたものがあったのでご紹介。国内盤は殆どチェックしていないので、こんなこともあります。このレーベルは伝統的にウィーン・フィルのフルーティストのアルバムを作っているようですね。
2015年に録音されたこのアルバムは、フルート1本だけで演奏される作品だけが集められていました。タイトルは「バッハ」とありますが、ただ「バッハ」とだけ書いてあるところがミソ、普通に「バッハ」という時に意味するヨーハン・ゼバスティアン・バッハのオリジナルは「無伴奏パルティータ」しかありません。それ以外は、限りなく偽作に近い「フルート・ソナタ ハ長調」と、真作ではありますが、オリジナルはチェロのための曲だったものをフルートに編曲した「組曲第1番、第2番」、それに、息子カール・フィリップ・エマニュエル・バッハが作った「無伴奏ソナタ イ短調」というラインナップです。
有名な無伴奏チェロ組曲をフルートに編曲したものとしては、1980年に録音されたオーレル・ニコレの録音が有名です。チェロの最低音は「C」なので、チェロの楽譜をそのまま2オクターブ高く吹けば、それで全く同じ調で演奏できることになります。あとは、重音などを適宜アルペジオに直せば、それで「編曲」は完成します。確かに、音域がこれだけ違えば音色や肌触りは全くの別物に変わりますが、フルートでも低音と高音の使い分けをうまく行えば、チェロと同等の音楽は出来上がるのではないでしょうか。
ただ、チェロには必要ありませんが、フルートには絶対に欠かせないのが「ブレス」です。管楽器は途中で息を吸わないことには演奏を続けることはできません。ですから、ニコレはここで「循環呼吸」という「技」を使って、音をつなげてチェロのように演奏することを可能にしていました。ただ、そのLPを最初に聴いた時には「すごいな」と思いましたが、今聴きなおしてみるとなんとも不自然に聴こえてしまいます。ニコレは音を切らないことだけに腐心して、自然なフレージングが消えてしまっているのです。あくまでも個人的な感想ですが、それはまるでロボットが演奏しているようでした。
今回のシュッツの場合はごく普通にブレスして吹いている分、とても表情が豊かになっていて、別に音が途中で切れることに何の違和感もありません。音楽としてはこちらの方がより質の高いものが提供できているような気がします。そういえば、このニコレの録音は、まだCDが出来る前のDENONのオリジナル技術によるデジタル録音によるものでしたね(フォーマットは16bit/47.25kHz)。そんな、デジタルの黎明期、これに比べると、シュッツの時代はハイレゾも登場してもっと余裕のある音が楽しめるようになっていますから、演奏も録音技術の変化と呼応していたのかもしれません。
シュッツは、全ての曲に細やかな表現を駆使して、とても1本のフルートで演奏しているとは思えないほどの色彩感を与えてくれています。もちろん、バッハならではのがっちりとした構成は決して崩すことはありません。それが、息子のエマニュエルの作品になると、大幅に自由度を増した大胆な演奏に変わります。その結果、これまであまり魅力を感じることのない退屈な曲のような気がしていたものが、一変してとても立体的で起伏に富んだものに変わっています。
録音は、豊かな残響のある建物の中で行われたものでした。そのホールトーンはあくまでも心地よく響いているのですが、肝心のフルートの直接音が右チャンネルで時折ほんの少し歪んでいることが分かります。チャンネルを変えてみたり、別の機器で再生しても同じように聴こえるので、これは録音時のミスなのでしょう。いかにハイレゾになったからといって、エンジニアの耳が不確かだったら、オイソレとよい録音ができることはありません。

CD Artwork © Camerata Tokyo Inc.

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by jurassic_oyaji | 2017-03-11 20:22 | フルート | Comments(0)
L'inverno degli flauti
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Die 14 Berliner Flötisten
MDG/308 1932-2



なんか、最近は仙台と言えば「電子タバコ」のメッカになったような感がありますね。「グロー」という最新のものは仙台市内でしか買えないだけでなく、仙台に住んでいる人でなければ購入が許されないのだそうですよ。その、日本に一つしかないショップの前に行くと、警備員が「今日の販売予約は終了しました」という看板を持って立ってました。なんでも、朝早くから並ばないと、その日の割り当ては入手できないのだそうです。そんな苦労までしてタバコを吸いたいという人がいるということ自体が、異常です。タバコがこの世からなくなってくれる日など、あるのでしょうか。
先日ベルリン・フィルをめでたく定年退職したアンドレアス・ブラウが、ベルリンのオーケストラの団員や、元団員、あるいはフリーランスのフルーティストなどを集めて結成した「14人のベルリンのフルーティスト」の、最新アルバムの中には、そんな「タバコ」がらみの曲が入っていました。
それは、ロシアの作曲家アナトーリ・リャードフが作った「Une Tabatiére à musique」というタイトルの曲です。そのまま訳すと「音楽仕掛けのタバコ箱」ですから、タバコを収納する箱がオルゴールになっているものなのでしょう。ふたを開けるとオルゴールが動き出して音楽を奏でる、というものですね。ライナーノーツには、「かつては栄えたタバコ文化も、今では健康問題で見る影もない。管楽器奏者にとっては、これはとてもありがたいことだ」みたいなことが書かれています。この曲、なぜか日本では「音楽の玉手箱」という名前が付けられているピアノ・ソロのための曲ですが、そのシンプルなワルツはなんだかどこかで聴いたことがあるような懐かしさを秘めていました。終わりごろにはテンポがだんだん落ちていくのは、オルゴールのゼンマイが切れた様子を描写しているのでしょう。
これは、昨年の末にはリリースされていたクリスマス・アルバムです。メンバーは名前の通り「14人」のはずなのに、今回は全部で18人のフルーティストと1人の打楽器奏者が参加しています。
アルバムのタイトルが、イタリア語で「フルートたちの冬」となっていますが、それはこの中で取り上げられているヴィヴァルディの「冬」からのもじりなのでしょう。有名な「四季」の中のヴァイオリン協奏曲をフルート族のために編曲したものです。ソロ・ヴァイオリンのパートも、一人で吹くのではなく何人かでかわるがわる吹いているみたいですね。なかなか楽しく聴ける半面、ちょっと生真面目すぎるようなところもありますが、まあドイツの人たちのことですから、あまり融通が利かないところは我慢しましょう。
そんな、ちょっと堅苦しいところがもろに見えてしまうのが、「Have Yourself a Merry Little Christmas」という歌のアレンジ。ジュディ・ガーランドやフランク・シナトラが歌った元の曲を知っていてもいったい何が始まったのか、と思わせられるようなものすごい複雑なことをやっています。ラテンっぽいリズムでまとめてはいるのですが、軽やかさは全く感じられないという、恐ろしい仕上がりです。
でも、元々クラシックだったものには、きちんと敬意を払って原曲の味がきっちり味わえるようになっています。コレッリの「クリスマス協奏曲」などは、とても素直なアレンジで、しかもフルートの味がよく出ています。ピッコロが2本使われていて、左右に分かれて呼び交わしているのが素敵です。これは、エゴルキンとデュンシェーデという、ベルリン・フィルの現役とOBの競演なのでしょう。
でも、やはり一番しっくりくるのは、この団体のために作られた新しい曲でしょう。1974年生まれのスイスのオーボエ奏者で作曲家のゴットハルト・オーダーマットという人が作った「Perseus」という作品は、このフルート・アンサンブルの特性をしっかり見極めたうえでちょっと新し目の和声とリズムで、最大限に彼らの魅力を引き出しています。

CD Artwork © Musikproduktion Dabringhaus und Grimm

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by jurassic_oyaji | 2017-02-23 20:14 | フルート | Comments(0)
WAJNBERG/Works for Flute
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Antonina Styczeń(Fl)
Zuzanna Federowicz(Hp)
Paweł Czarny(Va)
Wojciech Rajski/
Polish Chamber Philharmonic Orchestra Sopot
TACET/232


1991年に生まれ、ジャック・ゾーンなどに師事したという、ポーランドのフルーティスト、アントニーナ・スティチェンのソロ・アルバム、名前すら知りませんでしたから、もちろん彼女の演奏はここで初めて聴くことになります。でも、音を聴く前に、このジャケットの写真でインパクトを与えられてしまいました。彼女の横に本物の馬が顔を摺り寄せていますね。なんでも、彼女はフルート以外にも乗馬でチャンピオンを目指しているのだそうです。
彼女の音は、とても素晴らしいものでした。高音は伸びがあって、キラキラ輝いています。そして、低音が、それほどパワーはないのですがその代りとても繊細な音色の変化が出せています。こういう、ただ弱いだけではない、しっかりと芯がある中で倍音を無くしてピアノの音色を出すという技は彼女の最大の「武器」になるはずです。
ここで演奏されているのは、1919年にポーランドに生まれ、当時のソ連に亡命してソ連の作曲家として一生を終えたヴァインベルクのフルート作品です。2曲の協奏曲は、こちらで聴いていましたが、それ以外の「フルートと弦楽オーケストラのための12のミニアチュール」と、「フルート、ヴィオラ、ハープのためのソナタ」は今回初めて聴きました。
最も若いころ、1945年に、フルートとピアノのために作られた「ミニアチュール」は、その名の通り1分ほどの小品を12曲集めた曲集です。一夜の過ちではありません(それは「アヴァンチュール」)。1983年にピアノ伴奏を弦楽オーケストラに編曲したバージョンが、ここでは演奏されています。それぞれの曲はしっとりと歌うものから超絶技巧を誇示するものまでそれぞれ特徴を持っています。また、1曲目の「Improvisation」はずっとフルートだけで演奏されていたものが、最後だけ伴奏が付いて一緒に終わるようになっていますし、7曲目の「Öde」では逆にずっと伴奏だけで、最後にフルートが一吹き、というちょっとユーモラスなところも見せています。8曲目の「Duett」で聴くことのできる彼女の低音のピアニシモは絶品ですよ。全体に新古典派風の作り方ですが、なにかアイロニカルな側面が顔をのぞかせています。
1961年に、親交のあったルドルフ・バルシャイが指揮をしていたモスクワ室内管弦楽団のフルート奏者、アレクサンドル・コルニエフのために作られたのが、「フルート協奏曲第1番」です。ここでのオーケストラは弦楽器だけの編成です。全体にプロコフィエフによく似たテイストを持っていますが、もう少し親しみやすい感じでしょうか。第1楽章の軽やかなテーマはドップラーの「ハンガリー田園幻想曲」の最後に出てくるテーマととてもよく似ています。第2楽章でのスティチェンのピアノの低音も素敵ですが、この楽章はもっと歌ってほしいような気もします。最後の楽章は陰のあるワルツで、ヴァイオリンソロとの掛け合いがスリリングです。
もう一つのフルート協奏曲は作曲家の晩年、1987年にやはりコルニエフのために作ったものです。作風は前の協奏曲とは大きく変わり、不思議な浮遊感が漂っています。最後の楽章に唐突にグルックの「精霊の踊り」とバッハの「バディネリ」が引用されているのは、友人だったショスタコーヴィチの影響でしょうか。
もう一つ、1979年に作られたのが、「フルート、ヴィオラ、ハープのためのトリオ」です。この楽器の組み合わせはドビュッシーの「ソナタ」と同じ。武満の前に、この編成で曲を作っている人がいたんですね。この曲もやはり3つの楽章から出来ていて、最初の楽章ではドビュッシーからの引用が見られますが、なんともダークな雰囲気に支配されています。真ん中の楽章で使われているフラッター・タンギングは、その不気味さを助長しています。
このレーベルは録音の良さでは定評がありますが、これは普通のCD。やはり、いつものBD-Aだったら、弦楽器がもっと柔らかく聴こえただろうに、と思ってしまいます。

CD Artwork © TACET

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by jurassic_oyaji | 2017-02-07 22:57 | フルート | Comments(0)