Sheila Armstrong(Sop), Gerald English(Ten)
Thomas Allen(Bar)
André Previn/
St. Clement Danes Grammar School Boys Choir
London Symphony Orchestra and Chorus
HI-Q/HIQLP008(LP)「
Hi-Q」という、行列を作ってお米などをもらう制度(それは「
配給」、いつの時代だ!)のようなレーベルが最近出来ました。これは、アナログ録音時代の
EMIの音源を、最高のカッティング技術によって
LPとして復刻するという、今の時代には逆行するようなことを本気で行っている、殊勝なレーベルです。いや、とかく最近は
SACD(
DSD)や
Blu-lay Audio(
24bit/192kHzの
LPCM)といったハイスペックのデジタル録音に目が行きがちですが、それほどまでに膨大なデータ量を必要とするメディアよりも、音声信号を直接ラッカー板に刻みつけるアナログ・ディスク(
LP)の方がはるかにいい音を聴かせてくれる場合もあるのですから、あながち「逆行」などとは言えないのかも知れません。なにしろ、最近出される
LPときたら、最初から最高の音を目指して作られていますから、盤質はいいしマスタリング(カッティング)も素晴らしいものばかり、これを聴いてしまうととてもただの
CDなどは聴く気がしなくなってしまうような代物が目白押しなのですからね。
このレーベルが
EMIとどういう関係にあるのかは分かりませんが、ロンドンにある
EMIのスタジオ(いわゆる「アビーロード・スタジオ」)に保存してあるマスターテープを使って、同じスタジオでカッティングを行っているというのですから、カッティング・エンジニアも
EMIの関係者なのでしょうね(クレジットはありません)。今までに
20枚以上の「新譜」がリリースされているようで、今回の「カルミナ」は、
2011年の3月にカッティングが行われたという最新盤です。
これは、プレヴィンがロンドン交響楽団に在任中、
1974年に録音されたものです。エンジニアは、他にも素晴らしい録音を残しているクリストファー・パーカーです。同じ時期のロバート・グーチの録音より、こちらの方がよりナチュラルな音が聴けるはずです。
CDの音と比較するために、
1997年にアラン・ラムゼイによって作られたマスターによるものを用意してみました(
6 31802 2)。

このリマスター盤は、かなり良質な音には仕上がっています。特に声楽の音像がくっきり浮き上がって聴こえてくるので、ちょっと見には
LPよりも優れているように思えてしまいますが、よくよく聴いてみると、その輪郭がかなりぼやけていて、ただふくらんでいるだけのことに気づきます。
LPの音像はきっちりまとまっていて、それだけ密度が高いのですね。
この演奏の特徴は、合唱がとても性格的な歌い方をしていることではないでしょうか。プレヴィンはこのあと
1993年にも
DGにウィーン・フィルと録音していますが、その時の合唱団、アルノルト・シェーンベルク合唱団は、このロンドン交響楽団の合唱団とは対照的に、なんとも「すました」演奏に終始しているのは、プレヴィンの「円熟」のせいなのでしょうか。いずれにせよ、その合唱の、ちょっとハメを外した暴走ぶりが、
LPではきっちり伝わってくるのに、
CDでは全く別の合唱団みたいにおとなしくなって聴こえてくるのですから、いかに
CDでは情報が欠落しているかが分かるのではないでしょうか。
ソリストの声も、全く違って聴こえます。録音当時は
30代だったアレンの「若さ」は、
LPでなければそれほど分かりませんし、アームストロングのクリアな声も
CDではぼやけてしか聴こえません。
そんな細々した聴き方をしなくても、全体に漲る瑞々しさは、
LPならではの魅力です。マスターテープ自体にかなりノイズが入っているのが分かるぐらい、サーフェス・ノイズも少なくなっているのは、最新のカッティングの賜物でしょう。スクラッチ・ノイズまでなくすことは出来なかったようですが、この程度であれば殆ど気になりません。もしかしたら、レコード業界は
1980年頃に、進むべき道を間違えたのでは、と、真剣に悩んでしまうほどの、これは素晴らしい
LPです。まさに期待通りでした。
LP Artwork © Resonance Recordings Limited