おやぢの部屋2
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MOZART/17 KIRCHENSONATEN
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Zsigmond Szathmáry(Org)
CARUS/18.067/99




今までのCARUSCDとはちょっと違った品番の付け方だったのでもしや、と思ったら、やはりこれは楽譜の品番と連携したものでした。ご存じのようにCARUSというのはシュトゥットガルトにある大きな楽譜出版社で、その楽譜を使って演奏されたものをCDとしてリリースするという、いわば「音のサンプル」を提供する役割を持っているのが、レコード部門なのでしょう。ただ、今までは楽譜とCDとの品番はそれぞれ独立していたのが、ここに来てこんなあからさまなことを始めたのは、なぜなのでしょう。
モーツァルトの「教会ソナタ」という作品群は、いわゆる「教会ソナタ(sonata da chiesa)」という、バロック時代に多くの作品が作られた緩-急-緩-急という4楽章の形式を指し示すタームとは全く無関係、「もっぱら教会で演奏されたソナタ形式の曲」ぐらいの意味なのでしょうね。もちろん、レコード会社の社員が演奏したものでもありません(それは「業界ソナタ」)。これらの単一楽章の曲は、実際に、ザルツブルクの教会での礼拝の合間に演奏されたものが大半だと言うことです。編成は弦楽器が主体ですが、教会で演奏されますから、そこにはオルガンが合奏に加わっています。それも、単に通奏低音のように地味なパートから、それこそコンチェルトと思えるほどの立派なソロを弾かされるものまで、さまざまなヴァリエーションが、この17曲の中には見られます。長いものでも5分、短いものではたった2分で終わってしまうという手軽さもなかなか捨てがたいもの、モーツァルトの音楽のエキスを味わいたいと思えば、この曲をまとめて聴いてみるのもいいのではないでしょうか。どれをとっても同じように感じられるのか、あるいはそれぞれに個性を見いだせられるのか、それは聴き手のモーツァルトに寄せる思い入れの度合いを測る絶好のバロメーターとなることでしょう。
そんな合奏用の曲を、オルガン独奏用に編曲したのが、ここで演奏しているジークムント・サットマリーです。もちろん、これが彼の編曲による初録音ということになります。いや、おそらくこの曲をオルガンだけで弾こうとした人など他にはいなかったでしょうから、そもそもオルガン版の初録音ということになるのでしょうね。
サットマリーの編曲は、それぞれの曲のキャラクターをきちんと踏まえて、その違いが良く伝わってくるようなものでした。オルガンが目立たない初期の作品ではシンプルに、そして、オルガンがソロとして活躍するようになる後期のものでは、オルガンパートとオーケストラパートを別の鍵盤で演奏して、音色的に違いを出そうとしています。楽譜の一部がブックレットに掲載されているK.329では、そのオルガンとオーケストラとのテーマの掛け合いが良く分かるような配慮が見て取れます。
ただ、若い頃には超絶技巧を誇ったサットマリーも、もはや70歳という高齢になっていました。モーツァルトではぜひとも聴かせて欲しい整った粒立ちのスケールなどはもはや望むべくもありません。それと、この人の昔からの「クセ」でしょうか、おそらくストップ操作を自分で行っているために生じる一瞬の「間」が、なんとも音楽の流れを損なうものになっていました。もっとも、これはストリート・オルガンのような「自動楽器」として聴いたときには、えもいわれぬ鄙びた味が出てくるものなのかもしれません。左手のアルベルティ・バスが奏でるパイプの音が、そんな、まるで遊園地のような雰囲気を醸し出していると感じられるのは、そんなに間違ったことではないはずです。
出版社としてのCARUSからは、オリジナルの「教会ソナタ」のクリティカル・エディションも出版されていますが、同じブックレットに、その校訂者ウルリッヒ・ライジンガーによる校訂報告の前書きが掲載されているのも、なかなか興味深いものです。

CD Artwork © Carus-Verlag, Stuttgart
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by jurassic_oyaji | 2009-11-01 22:48 | オルガン | Comments(0)