おやぢの部屋2
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Nilsson/Celibidache
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Birgit Nilsson(Sop)
Sergiu Celibidache/
Swedish Radio Symphony Orchestra
WEITBLICK/SSS0186-2




ワーグナー歌いとして一つの時代を築いたビルギット・二ルソンが、そのキャリアの絶頂期、まさに脂ぎっていた頃に母国のスウェーデン放送交響楽団の演奏会に出演した時のライブ録音です。その時の指揮者がセルジウ・チェリビダッケだったという、今考えればとてつもなく貴重な顔合わせです。
これは、1967年の9月にストックホルムで行われたコンサートでのワーグナーと、翌年のやはり9月に同じ会場でのコンサートで歌われたヴェルディのアリアを収めたCDです。
ワーグナーは「トリスタンとイゾルデ」の「前奏曲」と「愛の死」、それに「ヴェーゼンドンクの5つの歌」のオーケストラ伴奏版(フェリックス・モットル編曲)からの3曲が演奏されています。二ルソンのイゾルデといえば、その年の前年、1966年のバイロイト音楽祭で録音されたカール・ベーム指揮の全曲盤が有名ですね。DGから出たLPに使われたヴィーラント・ワーグナーのステージの写真がとてもインパクトのあるものでした。その年の10月にヴィーラントは亡くなってしまったので、このLPのボックスには、追悼文が同梱されていました。二ルソン自身はそのヴィーラントの演出には心酔していたことが、彼女の自伝では述べられています。


今回のCDでのコンサートが録音された1967年には、バイロイトでは「トリスタン」の上演はありませんでした。しかし、この年の4月にはなんと大阪でバイロイトの引っ越し公演があり、二ルソンがイゾルデを歌っていたのですね。信じられないでしょうが、本当にそんなことがあったのですよ。もっとも、「引っ越し」とは言っても、やってきたのは指揮者とソリストと、そして舞台装置だけ、オーケストラ(N響)と合唱は現地調達というしょぼさでした。もちろん、演出家のヴィーラントも来られるわけはありません。
ただ、あの薄暗いバイロイトのステージが、実際に大阪で再現されていたのは感動的だったことでしょう。そして、この時の指揮者がピエール・ブーレーズという、1966年に「パルジファル」でバイロイト(本場)にデビューしてはいても、当時の日本ではワーグナーに関しては全くの未知数の人だったのも、すごいことでした。
一方のチェリビダッケがワーグナーを演奏した録音などというものも、かなり珍しいのではないでしょうか。まず聴こえてくる「トリスタン」の前奏曲は、まさにそんな「初物」を味わうには十分な、いかにも彼でなければなしえないようなワーグナーでした。それは、彼のブルックナーにも通じる、とことん細部を磨き込んだ、奥の深いものだったのです。ただ、そのような演奏にはとてつもない緊張感が要求されるのでしょう、管楽器のプレーヤーなどはもうコチコチなっているのがはっきり分かるほどの切羽詰まった演奏ぶり、アインザッツさえまともに揃えられないという恐ろしさです。
そのような中でのニルソンも、やはりいつもとは違って、ほんの少しいつもの伸びやかさが見られないな、というところがありましたね。でも、「ヴェーゼンドンク」の方は、もう少し楽に歌っているような気はします。こちらでも、オーケストラは委縮の極み、「Schmerzen」の最後でのトランペット奏者は、かわいそうなぐらいの失態を演じていました。
ところが、翌1968年のヴェルディでは、この指揮者はそれほどの締め付けは行わなかったのかもしれません。二ルソンはとても伸び伸びと、ちょっと普通のソプラノとは格の違うヴェルディを聴かせてくれています。
最後にはボーナストラックとして、「トリスタン」のリハーサルが収録されています。なぜか、これはモノーラル、こちらの二ルソンの方がコンディションが良かったように感じられるので、これも本体と同じステレオで録音されていればよかったのに。そういえば、先ほどのバイロイトの「トリスタン」のLPには、リハーサルももちろんステレオで録音されたものがおまけで入っていましたね。

CD Artwork © Weitblick
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by jurassic_oyaji | 2016-07-07 21:08 | オーケストラ | Comments(0)
キャノンのインクジェットプリンターは、買ってはいけません
 今週は、月曜日からひどい目に遭ってしまいました。来月はもうお盆なので、その時のイベントの案内のためのDM作りを始めようと思って、先週にはもう原稿が出来上がり、今週中にそれをハガキに印刷する、というスケジュールで準備を進めていました。そして、月曜日の朝から、まずは名簿の中から発送しない人を除いた新しいファイルを作って、それを元にその1200枚のハガキに宛名を印刷するというのが、最初の手順です。両面に印刷しなければいけませんから、インクジェット・プリンターを使います。数か月前にも同じようなハガキ印刷があったので、全く普通のやり方で始めたのですが、それが途中で突然止まってしまったのですよ。その時に、こんな見たこともないアラートが出ていました。
 それからあちこちチェックして異常がないことを確かめ、何度もやり直しても、必ず途中で同じように止まってしまうという現象はなくなりません。しかし、とりあえずこのプリンターを修理している時間はないので、同じものをもう1台買ってくることにしました。半年前には7500円で買えて驚いたものが、今回はさらに安くなって6000円ですって。スキャナーも付いてそんな値段なんて。
 ところが、この新品のプリンターをつないで印刷を始めると、全く同じトラブルで止まってしまうのですよ。ということは、このプリンター、あるいはそのドライバーの欠陥なのでしょうか。だったら、前にちゃんと1000枚以上の印刷が出来たのはなぜなのでしょう。とても不思議です。一応、あて名は確かにデータ量が多いのでこうなってしまうのかと思い、裏面に印刷する普通のWORDを何枚か試してみたのですが、それでもだめでした。さっきのアラートが出た時のプリンターの様子がこれ、たった5枚目でもう止まってますね。
 となると、プリンターではなく、PC自体に何か問題があるのでしょうか。そんなんだったらとても手に負えません。いったいどうしたらいいんでしょう。とりあえず、あて名用のタック紙はあったので、そこに住所だけはプリントアウトしておこうと思ったのですが、それにしてもせいぜい1枚ぐらいしかできませんから、いちいち宛名の範囲を設定して、1枚、タック12枚ずつ印刷を始めました。そうしたら、今度は紙詰まりが起き始めました。これは前からこのプリンターでは起こっていたことで、一番の問題はスキャナーなんかが付いているために紙を手前から入れて、プリンター内で180°折り返して印刷を行うためです。これで、ちょっと薄めの紙が挟まったきり取れなくなって修理に出したんですよね。
 それも出来ないとなると、最後の手段。レーザープリンターの出番です。これはいとも簡単にできました。つまり、大量のデータを送るときのトラブルは、PCが原因ではないことがはっきりしましたよ。そこで、ネットを調べたら、こんな私の場合と全く同じケースで途方に暮れている書き込みを見つけてしまいましたよ。「CanonのMG3630」って、メーカーも型番も一緒じゃないですか。やはり、プリンターの欠陥だったんですね。
 ですから、もうこのメーカーのプリンターを使っているうちはこのトラブルは解決できないことがはっきりしたわけなので、別のメーカーの、スキャナーなんかが付いていない一番シンプルなプリンターをAmazonに注文してしまいましたよ。もちろん、用紙は上から供給できます。それが今日の午前中に届いて、それは全く期待通りの働きをしてくれたために、何とかハガキ印刷は期限までに終わらせることが出来そうです。
 それにしても、いったいどこが悪いのかわからないで悶々としていた時の気分は最悪でしたね。こんないやな思いはもうしたくありませんから、私はこれからキャノンのプリンターを買うことは決してありません。というか、こんな欠陥商品をいまだに販売しているこのメーカーの良心を疑いますね。別のメーカーのプリンターを使って分かったのですが、キャノン製は色もちょっと異常でしたね。
 こんな、色は悪いし紙詰まりは頻繁に起こるし、5枚以上の連続印刷は出来ない欠陥プリンターでも欲しいという方がいらっしゃれば、差し上げますよ。半年使った黒と、新品同様の白の2色、ご用意させていただいてますから。プリンターはだめでも、スキャナーとしてなら使えるかも。生意気にも、保証書だって付いてますよ(何の保証だ!)。
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by jurassic_oyaji | 2016-07-06 22:39 | 禁断 | Comments(0)
Sämtliche Lieder für gemischten Chor a cappella
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Matthias Jung/
Sächsisches Vocalensemble
TACET/B 142(BD-A)




メンデルスゾーンの合唱曲は、オーケストラと一緒に演奏するものとか宗教曲など、多くの曲が知られています。なんと言っても合唱の付いた「交響曲」まであるのですから、彼の作品の中では合唱が持つ比重はかなり高いものになっています。でも、普通は「交響曲第2番」と呼ばれている「賛歌」は「交響曲」と「カンタータ」が合体したような作品ですから、本当は交響曲の中に参加させるのは反則のような気がします。たしかに、それまでに「合唱の入る交響曲」はありましたが、あちらとはだいぶ様子が違いますからね。
メンデルスゾーンが作った無伴奏の混声合唱のための合唱曲、いわゆる「パートソング」は、CD1枚に収まるぐらいの、せいぜい30曲程度しかありません。そんなアルバムが、かつてラーデマン指揮のRIAS室内合唱団が2007年に録音した超名演でリリースされていました。
その中に入っていたのはop.41の6曲、op.48の6曲、op.59の6曲、op.88の6曲、そしてop.100の4曲という、全28曲でした。演奏も素晴らしいし録音もよかったのですが、あいにく普通のCDでしたね。そこに、ほぼ同じ曲目で、さらにWoO(作品番号の付いていない=出版されていない作品)の2曲が加わった新しいアルバムが、なんとBD-Aでリリースされました。これは、一応サラウンドを前面に押し出した仕様になっていますが、このレーベルだったら録音はかなりのクオリティが期待できます。
しかし、これが実際に録音されたのは2005年だったことが、クレジットから分かりました。その時に普通のCDも出ていたんですね。つまり、ラーデマンより前に「全曲」のCDを出していたのでした。しかも、この時点ではWoOの2曲は「初録音」でした。今回は、新たにサラウンド・ミックスを行って、BD-Aでリイシュー、という形だったのですね。
まあ、そんな成り行きは、どうでもいいことで、実際にその音を聴いてみたら、とてもナチュラルで素晴らしいものだったので、まずは一安心でした。いや、そんな言い方では申し訳ないほどの、それこそ「2L」の録音にも匹敵するほどのクオリティの高さでした。ただ、その音の傾向は少し違っていて、あちらはとても瑞々しい、ある意味生々しい感じがしますが、こちらはもっと乾いて落ち着いたサウンドが聴けるようです。
そして、ここで歌っている合唱団が、そんな録音とぴったりマッチした落ち着きぶりを見せているのですよ。1996年に、ここでも指揮をしているマティアス・ユングによって創設された「ザクソン・ヴォーカル・アンサンブル」というのは、コアとなる21人のメンバーがいて、レパートリーによって柔軟にメンバーを増減させるという形をとっている合唱団なのだそうです(ここではメンバーは22人クレジットされています)。そして、彼らが最も力を入れているのがシュッツとバッハなのだそうです。すでにその2人の作曲家のCDも出しているそうです。
そんな彼らがメンデルスゾーンを歌うと、とても折り目正しい、まずは楽譜に忠実に歌おうという姿勢がはっきり感じられます。そして、その歌い方の端正なこと。特に男声が、あくまでアンサンブルに溶け込もうというフレキシブルな音色を持っているのが素敵です。テノールの高音はまるで女声のアルトのようですし、ベースも低音はしっかり出している上に、高音はしっかりテノールと溶け合っているという感じで、もう完全に彼らの声は合唱の中の本当の意味での「パート」になりきっているのです。
最後に収録されている「初録音」の2曲のうちの1曲は、メンデルスゾーンの先生のツェルターの70歳の誕生日のお祝いのために、あのゲーテが捧げた詩に作曲されたものです。ここでは、最初に重唱で合唱団の4人のメンバーによって歌われるのですが、それぞれの声はとても立派、芯があってピッチも正確です。そんな人たちが集まっているのですから、こんなすごい合唱が出来上がるのも当然ですね。

BD-A Artwork © TACET
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by jurassic_oyaji | 2016-07-05 23:13 | 現代音楽 | Comments(0)
月額100円で10GB
 きのう、久しぶりに一番町に行った時に、三越と旧141との間の通りから遠くを見ると、なんだか大きなアンテナのようなものを作っているのが見えました。その時は、一瞬地理関係が分からなかったので素通りしたのですが、しばらくしてもう一度同じアングルから見直してみると、その方向はどうやら新しいNHKの建物を作っているあたりのように思えてきました。かつては私が結婚式を挙げた時に写真だけ撮ったという縁のあるホテルがあった場所に、老朽化したNHKが引っ越してくるという噂を聞いていましたが、これがそうなのでしょう。放送局の建物ですから、当然アンテナが付属しています。それを作っているところなのでしょう
 これを見て、だいぶ前に東京に行った時にトイレの窓から見た、建設中のスカイツリーのことを思い出しました。なんか、骨組みがよく似ているんですよね。最近の「ツリー」はこんな形にするのがはやりみたいですね。もちろん、こっちの「仙台ツリー」の高さは100メートルもないものだそうですから、高さでは全然太刀打ちできませんが。
 ですから、近いうちに今の建物から全部こちらにやってくることになるのですから、昔のスタジオなどは当然なくなってしまうのでしょう。というのも、私はかつてはそのスタジオに毎週出入りしていた、という思い出があるものですから。とは言っても、別にワイドショーのコメンテーターをやっていたわけではなく、学生のころ入っていた合唱団が、そのNHKのスタジオで練習していた、ということなんですけどね。そもそも放送局の専属の合唱団として発足したので、その頃はもう普通の市民合唱団になっていたにもかかわらず、昔からの馴染みでスタジオを使わせてもらえていたのでしょうね。いや、一応そんな恩恵に対して、たまにはラジオ放送用の録音なんかもやってましたね。
 おそらく、今でもその合唱団はそこを使わせてもらっているはずですけど、これが新しい建物になってしまうと、彼らはどのような扱いになるのでしょうね。ちょっと興味があります。
 私の方も、このたびサイトの引っ越しをつつましく行ってみました。いや、これはNHKみたいな派手な外観は全く見せずに、というか、サイトを使っている人には全く分からないように一部の画像を別のサーバーに移転させた、というだけのことなんですけどね。私のサイトの本体はプロヴァイダーのサーバーが100MBまでは無料で使えるというところに入っていますが、当然すべてのデータをここに入れたのではとうの昔にパンクしていますから、画像データなどを、別の10GBまで使えるレンタルサーバーに入れてます。こちらはそれこそ演奏会の写真とか、ハイレゾの音源などを入れてもまだまだ余裕がありますから、画像ぐらいだったら「入れ放題」です。ですから、「おやぢ」や「禁断」の写真は、ある時からすべてこちらに入れるようになっています。
 とは言っても、本体のHTMLのデータはどんどん増え続けているので、さすがに最近はちょっと余裕がなくなってきました。そこで、その中身を点検してみたら、その「おやぢ」の画像が、まだたくさん残っていることに気づきました。それぞれはほんの10kBにも満たないほどの小さなサイズですが、それが何百と集まれば結構な量になります。それで、その画像をまずひと塊HTMLファイルで50個分ほど移動したら、それだけでディスク容量が9MBも空いてくれました。これだけあれば、当分大丈夫です。
 もちろん、そのHTMLファイルもリンク先をいちいち書き換えなければいけませんが、これはテキストファイルですから「置換」をかければ一発で書き換えられました。
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by jurassic_oyaji | 2016-07-04 00:05 | 禁断 | Comments(0)
SCHUBERTIADE
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Julian Prégardien(Ten, Nar)
Marc Hantaï(Fl)
Xavier Diaz-Latorre(Guit)
Philippe Pierlot(Bar)
MYRIOS/MYR018(hybrid SACD)




良心的なSACDを、まさに手作り感覚で作り続けているMYRIOSレーベルの最新アルバム、今回は、ユリアン・プレガルディエンを中心にしたメンバーが集まって、「シューベルティアーデ」を再現するという企画です。
「シューベルティアーデ」というのは、シューベルトが生前に行っていたサロンコンサートのことです。デザートは栗饅頭(それは「マロンコンサート」)。彼を取り巻くお金持ちの友人が自宅を提供し、そこにさらに仲間たちが集まって一夜の音楽会を催すという贅沢なイベントです。大広間の中央のピアノの前にはシューベルトその人が座り、出来たばかりの歌曲をシューベルトの伴奏で歌ったり、室内楽を演奏したりと、楽しいひと時は夜遅くまで続きました。
最初に開催されたのは1821年、その年の1月3日に、フランツ・フォン・ショーバーのお宅で開かれたコンサートから、「シューベルティアーデ」の歴史が始まります。それは、最盛期にはほぼ毎週開催されていたのだそうです。
1826年の12月15日に、シューベルトのコンヴィクト時代の先輩で友人であるヨーゼフ・フォン・シュパウンの家に集まったお客さんは40人ほどにもなっていましたが(参加していた画家のモーリツ・フォン・シュヴィントによって1868年に描かれたその時の模様の絵画が残っていて、そこにいたすべての人が特定できているのだそうです)、今回開かれた21世紀の「シューベルティアーデ」のお客さんは、あなた一人です。そして、歌手の伴奏をするのは、ピアニストではなくギターとバリトンの奏者です。もちろん、「バリトン」というのは歌手ではなく、この当時にしか使われることのなかったヴィオール族の楽器のことです。

そしてもう一人、同じようにこの時代にしか使われることのなかった、「フルート」の奏者も加わります。フルートという楽器は今でもありますが、それはこの時代のちょっと後に今のような形になったもので、それ以前は様々な形とメカニズムを持った楽器が混在していました。ここで使われているのは、おそらく1825年頃に作られた9つのキーを持つ楽器のコピーでしょう。
最初に聴こえてきたのは、プレガルディエンによる「歌」ではなく「朗読」でした。とてもリアルな音で、きれいなドイツ語の発音が聴こえただけで、すでに19世紀のウィーンのサロンの雰囲気が漂います。おそらく、このように仲間が作ってきた詩を読み合うようなこともあったのでしょう。それをシューベルトが気に入れば、その場で曲を付けて披露する、みたいな愉しみもあったのかもしれませんね。
そして、まずはギター1本の伴奏で歌が始まります。そのギターの音の、なんと魅力的なことでしょう。なんでもこれは1842年に作られた楽器なのだそうですが、その、ただ「柔らかい」などという言葉では表現できないような、とことん聴く人を喜ばせるためだけに長い間磨かれてきた音が、そこからは聴こえてきたのです。そして、それに応えるかのように、プレガルディエンも、ただ「声」を出すだけでそれが「歌」になっているという、ほとんど奇跡のようなことを繰り広げていました。それは、シューベルトの「歌曲」というものが持つ根本的な資質をも問われるほどのインパクトを伴って訴えかけてきます。シューベルトを歌う時には、別に本格的なベル・カントではなく、ほとんど鼻歌程度のささやきでもしっかりその音楽は伝わるのだ、と。まるで、そのことを知らしめるためにこのような「サロン」を再現したのでは、とさえ思えるほどに、彼の「歌」のさりげなさには強い力がありました。
そんな場では、シューベルトはとてもしなやかな柔軟性を持つことになります。誰でも知っている「野ばら」や「セレナーデ」にこれだけの装飾を施しても全く違和感がないのも、そんな「サロン」の空気のせいなのでしょう。その空気までも見事に収めた録音が、あなたの目の前に2世紀前の世界を広げて見せてくれます。

SACD Artwork © Myrios Classics
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by jurassic_oyaji | 2016-07-02 20:50 | 歌曲 | Comments(0)
テクニクスのSL-1200も登場します
 トム・クルーズって、それほど嫌いではない映画俳優です。だいぶ前に見た「ザ・ファーム」あたりが、結構いい役者だな、と思い始めたきっかけでしょうか。つい最近WOWOWで放送していたので録画して見始めたら、いきなりかっこいいピアノ・ソロが聴こえてきたのには驚いてしまいました。昔見た時には音楽なんか全然気にしていなかったのに。ただ、なんとなく別のところで聴いていたような気はしたのですが、クレジットを見てそれを弾いているのがデイブ・グルーシンだとわかって、納得しました。今ちゃんと聴いてみると、ちょっとやかましすぎるような気はしますが、音楽自体はとてもそそられるものでしたね。ですから、何年かぶりに見直した「ザ・ファーム」は、トムの演技とデイブの音楽とがとても小気味よくかみ合っていて、以前にも増して楽しむことが出来ました。映画のテンポ感も緊迫していて、最後までだれることはありませんでしたし。
 この時、トムの妻役で出演していたのが、ジーン・トリプルホーンだったんですね。この時はとても素敵な人に思えていたのに、これも最近の「クリミナル・マインド」に出てきたときには見る影もなく衰えてしまった容貌で、心底失望させられました。
 それからは、トムの出る映画はほとんど見てきましたが、なかなか当たり外れが多くて、本当に面白いと思えるものはあまりありませんでした。ただ、「ミッション・インポッシブル」のシリーズは、いつも裏切られることのない「当たり」でしたね。彼の場合、このぐらい羽目を外した設定の方が、ガラに合っているのかもしれません。
 それの最新作、「ローグ・ネイション」がやっとWOWOWで放送されました。やはり期待通りの面白さでしたね。もうオープニングから見るものをくぎ付けにしないではおかない展開ですから、それだけで安心して見ていられます。ただ、このオープニングのシーンで、大々的に「これは実写です」と宣伝しているのは、ちょっとウソくさいな、という気はしますね。たしかに、メーキングなどで、命綱をつけて輸送機のドアにぶら下がっているというのは出てきますが、あの出来上がった絵は、どう考えても合成にしか見えません。だって、例えば新幹線の外側に素手でつかまっていることなんかとても想像できませんが、ここではそれの何倍もの負荷がかかるわけですからね。ですから、これはそんなすぐばれるウソさえも本気にさせようと思って躍起になって楽しませてくれる製作者の熱意こそを賞賛すべきなのでしょう。
 そして、全く予備知識がなく見始めたので、とんでもないサプライズがその先には待っていましたよ。なんと、あのウィーンのシュターツオーパーでロケをやっていたではありませんか。ベンジーが地下鉄の駅から出てきた目の前にその建物がそびえていたのには、本当に驚きました。そして、中ではちゃんとお客さんを入れて「トゥーランドット」をやっているんですからね。後でもう1回「巻き戻して」見てみたら、「ネッスン・ドルマ」が女スパイのライトモティーフに使われているんですね。まあ、本当にそのアリアが終わったところでスタンディング・オベーションというのはあり得ませんが。そのシーンのオケピットにいたのはエキストラでしょうが、実際に演奏していたのはこのオペラハウスのオーケストラ(つまり、ほぼウィーン・フィル)だというのですから、それもすごいこと。しかも、録音したのがムジーク・フェライン・ザールだと。こういう、それこそナクソスの音源を使ったって絶対に分からないようなところに「本物」を使うというような無駄なゼータクは、大好きです。
 微妙なのは、オケの団員に扮して忍び込んだ殺し屋が持っていたのが「バスフルート」だというところでしょうか。「トゥーランドット」にはこの楽器は使われないはずなのに(べリオ版だったらあるかも)、それをチェックした警備員がOKを出すというのが、ちょっと。でも、この小道具を思いついた人のマニアックぶりには、いたく惹かれます。
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by jurassic_oyaji | 2016-07-01 21:26 | 禁断 | Comments(0)