おやぢの部屋2
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RZEWSKI/The People United Will Never Be Defeated!
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Igor Levit(Pf)
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ジェフスキの「不屈の民変奏曲」に、また新しいアイテムが加わりました。これで、この作品のアルバムは10種類を超えたことになります。ただ、今までリリースされていたのは、ほとんどがマイナーレーベルからのものでしたし、ピアニストもアムランなどを除けばそれほど広く知られている人ではありませんでした。
しかし、レコーディングまでは行わなくても、リサイタルで取り上げている人はもっとたくさんいることでしょう。2014年の6月にウィーンのムジークフェラインザールで行われる予定だったマウリツィオ・ポリーニのリサイタルが、急なアクシデントのためにキャンセルされた時に、急遽その代役を務めたイゴール・レヴィットもそんな一人です。リサイタル当日にオファーを受けて急遽ウィーンに飛んだ彼は、その時に演奏されるはずだったシューマンやショパンの曲に代わって、ベートーヴェンの後期のソナタ2曲と、この「不屈の民」を演奏したのです。ベートーヴェンはともかく、ポリーニが弾く「名曲」を期待していたお客さんは面食らったことでしょうね(チケット代は払い戻されたのだそうです)。
そんな事件で一躍有名になったレヴィットは、1987年にロシアに生まれた天才少年でした。その音楽の才能を伸ばすため、8歳の時に家族とともにドイツに移って音楽教育を受けています。小さなころから各地のコンクールで入賞、2004年には浜松国際ピアノアカデミーコンクールでも第1位を獲得しています。2012年には、ソニー・クラシカルと専属アーティスト契約を結び、翌年にはベートーヴェンの後期ピアノソナタ集のアルバムでメジャー・デビュー、2014年にはバッハのパルティータ集をリリース、そして、2015年にリリースされたのが、そのいわくつきの「不屈の民」と、バッハの「ゴルトベルク」、ベートーヴェンの「ディアベリ」がカップリングされた「3大変奏曲集」です。
そして、つい最近、その3曲がそれぞれ単売されるようになりました。これで、「不屈の民」のアルバムがソニーという超メジャーからリリースされることになり、単なる「現代音楽」を超えた「名曲」となってしまいました。
まず、今まで出ていたこの曲のCDと決定的に違うのは、音の良さです。やはり「現代音楽」にはなにか先鋭的なイメージがあるようで、妙にギスギスした音のものが多かったような気がします。今回はまず録音された場所が、こちらでも使われていた旧東ドイツのラジオスタジオです。非常にくせのない音響を誇っているようで、とてもふくよかな響きが感じられます。そして、レコーディング・エンジニアが名匠アンドレアス・ノイブロンナー(TRITONUS)ですから、芯のある、それでいて繊細な音を味わうことが出来ます。
なんせ、急に頼まれたリサイタルで演奏したぐらいですから、そもそもレヴィットはこの作品には愛着があったのでしょう。この難しい曲の音符は、隅から隅まできっちり磨き上げられていて、胸のすくような鮮やかさ、しかし、それぞれの音にはとても暖かみがこもっています。そして、時折聴こえるピアニシモの繊細なこと。この曲には、こんな「名曲」たる要素が、すでにしっかり宿っていたことを実感させられるような演奏でした。何しろ、テーマからして「おれたちは負けない!」というようなこけおどしの感じが全くない、いとも爽やかなものでしたからね。
それが、最後のテーマの前に出てくる「Improvisation」になると、足音や楽器を叩く音などを交えた過激なものに変わります。そんな落差も楽しめる素晴らしい演奏です。
蛇足ですが、これは「即興と主題」と表記された最後のトラックではなく、その前の第36変奏のトラックの途中、2分ごろから聴こえてきます。

ごく最近こんなのがあったばかり。CDの黄昏を目前に控えて、こういう「不良品」があふれかえってきたのは、あきれかえった事態です。というか、配信でもそのまま間違えてるし。


CD Artwork © Sony Music Entertainment
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by jurassic_oyaji | 2016-12-08 20:15 | 現代音楽 | Comments(4)
ずいぶん前に放送されていたんですね
 この間中から、よく「テレビで見ましたよ」と声をかけられるようになっています。いや、別に私が出ていたのではなく、私の職場が出ていたそうなんですね。「どこかで見たことのある石段だった」とか。
 それは、確かにご指摘の通りなのでした。かなり前にテレビの制作会社の人が来て、なんだかお墓のリニューアルを行う過程を実物で紹介したいので、撮影を許可してほしい、ということでしたね。
 それが、いつの間にか放送されていたのですね。私は見ていなかったので職場では録画ぐらいしているだろうと聞いてみたら、なんと制作会社から完パケのDVDが送られてきていたみたいですね。見てみたらこんなタイトルがついていました。
 それでは、順番に見ていきましょうか。まず、最初にこんなシーンが出てきました。
 そして、これが「石段」ですね。来たことがある人だったらすぐわかるはずです。
 そこに、こんなテロップが入れば、もうバレバレですね。
 この中にある、なんでも明治時代に作られたという墓石を修復する、というのが、今回のテーマなのだそうです。
 まず、お墓に宿っている魂を抜くために、「心抜き」のお経をあげます。
 墓石だけの状態だと、こんな感じでした。これを解体して工場まで運びました。
 途中の作業の経過は省きますが、石を洗ったり磨いたりして、ここまできれいになりました。
 というわけです。別に、職場自体は何もしていなくて、ただ撮影の場所を提供した、というだけの話です。
 実は、だいぶ前にも、同じように撮影に協力した、ということがありました。それはドラマの撮影で、その時には墓石だけではなく、本堂なども使って撮影が行われ、人がいっぱいあふれて大変でしたが、今回は副住職がお経を読むときに映っただけで、他の人は撮影が行われていたことにも気づきませんでしたよ。
 探したら、こちらに、映像がアップされていましたね。
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by jurassic_oyaji | 2016-12-07 21:40 | 禁断 | Comments(0)
MAHLER/Das Lied von der Erde
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Dietrich Fischer-Dieskau(Bar)
James King(Ten)
Leonard Bernstein/
Wiener Philharmoniker
TOWER RECORDS/PROC-1991(hybrid SACD)




1966年に録音された、バーンスタインとウィーン・フィルによるマーラーの「大地の歌」がSACDになりました。発売当時からかなりの評判をとっていたレコードですから、CDが流通し始めたかなり早い時期、1989年にはCD化され(左)、さらにその後も「オリジナルス」のような仕様(右)で新たにリマスタリングが施されたものもリリースされていました。

しかし、今に至るまでSACDやBD-Aでのリリースはなかったはずです。それが、この前のコンドラシンの「シェエラザード」で見事なハイレゾ化を見せてくれたタワーレコードの企画によって、めでたくSACDを聴くことが出来るようになりました。
なにしろ、プロデューサーはジョン・カルショー、エンジニアはゴードン・パリーという、あのショルティの「指輪」を完成させたパリパリのDECCAの黄金コンビによる制作、その音の神髄はとてもCDでは再生できるわけはありませんから、これには喜びもひとしおです。
その1966年というのは、バーンスタインが初めてウィーンの国立歌劇場で指揮をした記念すべき年でした。そこで上演された「ファルスタッフ」が人気を集めたので、バーンスタインをアーティストとして抱えていたアメリカのCBSは同じキャストでのレコーディングを企画します。そして、表向きはCBSのジョン・マクルーアがプロデューサーというクレジットで作られたレコードは、実際はエリック・スミス(プロデューサー)、ゴードン・パリーとコリン・モアフット(エンジニア)がウィーンのゾフィエンザールで録音を行ったという、完全にDECCAによる制作だったのです。その時のオーケストラのウィーン・フィルが、DECCAの専属アーティストだったからですね。
ですから、DECCAとしてはそのバーターとして、同じメンバーによってDECCAとしてのレコードを作ることが出来たのです。それが、この「大地の歌」でした。
さらに、バーンスタインは1968年にもこの歌劇場に登場して、シュトラウスの「ばらの騎士」を指揮して、やはり大評判となり、そのプロダクションが1971年に再演された時に、やはりDECCAのチームによって録音されたものがCBSレーベルからリリースされています。その時のプロデューサーは、すでに1967年にはDECCAを去ってBBCで仕事をしていたカルショーでした(エンジニアはゴードン・パリーと、ジェームズ・ロック)。
この「大地の歌」は、確かに今までのCDとは一線を画した、ハイグレードの音になっていました。解像度は明らかに増して、それぞれの楽器や歌手が立体的に聴こえてくる、というのは、今までの「良い」SACDでは必ず味わえたものです。ただ、2種類のCD(初版とオリジナルス)と今回のSACDを比べてみると、なんだかマスターテープそのものが違っているのではないか、という気がしてきました。
今回のブックレットには
本国のオリジナル・アナログ・マスターテープからダイレクトにDSD変換とマスタリングを行い、SACD層用のDSDマスターを制作しています。(略)なおアナログ・マスターテープはその経年劣化と保存状態に応じて、可能な範囲で入念な修復作業を行った後に変換作業を実施しています。

とありますが、その「修復」というのは具体的にはどういうものなのでしょう。SACDではヒスノイズが少なくなっていますし、ヴォーカルの音像が少し引っ込んだ感じになっています。さらに、2曲目の「Der Einsame im Herbst」で、初版では派手あちこちで認められたドロップアウトが、SACDでは全くなくなっています。あるいは、初版とSACDにはなかったドロップアウトが、オリジナルスにだけ存在していたりします。ですから、DSDにトランスファーする以前に、かなり大々的な修復作業(正確には、デジタル・エディティング)が行われていたのではないでしょうか(DSDでは、そのような精密な編集作業は不可能です)。それは「オリジナル・アナログ・マスターテープからダイレクトにDSD変換」というものには程遠い作業のような気がするのですが。

SACD Artwork © Decca Music Group Limited
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by jurassic_oyaji | 2016-12-06 23:08 | オーケストラ | Comments(0)
お弁当にはズンダ餅がつきました
 きのうと今日は、恒例の「角田第9」でした。丸2日、車で約1時間半の行程で角田まで往復して、リハーサルと本番をこなしてきました。去年は高速を使ったのですが、一般道とそれほど時間は変わらないようだったので、今年は普通のバイパスを通って、角田までの一本道というコースです。このコースは、去年地図を作りに角田まで行ってきた時には、帰りには通りましたが行きは別の道を行った(というか、入り口を間違えた)ので、こちらから通るのは、昔角田の体育館でやっていた時代以来ですから、なんと15年ぶりのこととなります。自分で地図を作っておきながらなんですが、あの地図を作るためにストリートビューできちんと調べておいたので、迷うことはありませんでした。予想通り、バイパスを降りてからの一本道は信号もなく快適なドライブを楽しめました。
 今年のパートは、私は第9はピッコロ、その前プロの合唱では、出来合いの「ふるさと」という唱歌の組曲の伴奏ですが、1番を吹きました。その中に「村祭り」のイントロでピッコロが祭囃子のようなソロを吹くところがあるのですが、なぜかこれを1番が持ち替えで吹くように書かれているので、それも私が吹くことになっていました。
 これは、音域的にも技術的にもとても吹きやすいメロディなので、ピッコロが必ずしも得意とは言えない私でも簡単に吹けるソロでした。ただ、これが打楽器だけの伴奏の中でのどソロですから、目立つのなんのって。それも、結構本物の祭囃子を髣髴とさせる編曲でしたから、なんだか私のところに様々な感想が寄せられるようになっていました。オケをやっていて、なかなかこういうことは出会わないのですが、今回はちょっと異常、もう「盆踊りでは引っ張りだこになりますね」なんてのから、「実際に祭囃子を体験していないと、絶対に吹けないソロ」なんてのまで、たくさんの人からの言葉が私に伝えられました。いや、私はただ楽譜に忠実に吹いていただけなのですけどね。「以前、篠笛の修行などをなさっていたのですか?」なんて聞いてくるひともいますから、すごいものです。あ、もう一つ、「別のオケでこの曲を演奏するのですが、フルート奏者の参考のためにこの音源を送ってやります」なんてのもありましたね。
 まあ、何にしても、私の演奏が他の人の心に響いたのでしょうから、これはとても満足です。とても楽しい思いをさせていただきました。残念なことに、角田ではもう来年はこの曲は演奏しないのだそうなので、他の人で別の味わいを聴いてもらうことは出来なくなってしまいました。
 メインの第9でもピッコロというのは、本当に久しぶり、でも、これも前にやった時よりは楽に吹けるようになっていたので、確実に進歩はしているのでしょうね。ただ、マーチの部分は何ということはないのですが、最後のところはやはり途中でばててしまうことの方が多かったですね。でも、それが本番では本当に楽に吹けてしまったのですから、不思議です。これで、やっと私も一人前にピッコロが吹けるようになった、ということでしょうか。
 今年は、座席に限りがあるということで、全席指定になっていました。でも、ゲネプロが終わって控室のそばをブラブラしていたら、当日券を目当てに聴きに来た以前団員だったに出会ってしまいました。そこで、果たして当日券はあるのか確かめるために一緒に私も受付に行って座席表を見せてもらいました。そうしたら、ほとんどの席は埋まっているようですが、ところどころ、まだ売れていないところがありました。10ヵ所ぐらいはあったでしょうか。完売ではなかったのですね。ですから、その方はちゃんと聴くことが出来たようです。
 それでも、ステージに上がってみると、空席は全くないように見えました。前の方にパイプ椅子は並べてありますが、それは予備だったようですね。そこにも1列分ぐらいは座っていましたからね。そんな非常に客席が近いところで、満席ですから、気合も入ります。第9が終わった時には、スタンディング・オベーションが起こっていましたね。それはなんと市長さんたち、うれしくなりますね。
 仙台市市長さんにこのぐらいの熱心さがあれば、角田より前に音楽ホールが出来ていたかもしれませんね。
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by jurassic_oyaji | 2016-12-04 21:03 | Comments(0)
BERLIOZ/LAVANDIER/Symphonie fantastique
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You Jung Han(Vn)
Maxime Pascal/
Le Balcon
Académie de musique de rue Tonton a faim
ALPHA/ALPHA539




フランスの若い作曲家アルテュール・ラヴァンディエが、やはり若い指揮者マキシム・パスカルと一緒にアイディアを出し合って編曲を行い、パスカルのバンド、「ル・バルコン」が演奏したベルリオーズの「幻想交響曲」です。このバージョンは2013年の「ベルリオーズ音楽祭」で初演されましたが、その時ラヴァンディエは26歳、パスカルは28歳でした。さらに、ベルリオーズがこの曲を作ったのは27歳の時だったのだそうです。どうでもいいことですが。
それを、2016年の7月にスタジオで録音したものが、このCDです。その際に、普通のステレオ・ミックスと、バイノーラル・ミックスの2種類のバージョンが作られていますが、CDに収録されているのはステレオ・バージョン、そして、バイノーラル・バージョンはネットからダウンロードして入手できるように、個別のパスコードが同封されています。ただ、それはZIPファイルになっているのですが、何種類かの解凍ソフトを使って試みても、ジャケット画像とブックレットのPDFしか解凍されず、肝心の音声ファイルはエラーが出て開けませんでした。これも、どうでもいいことです。別に必要ありませんし(それは「バイアグラ」)。
パッケージのアートワークもとてもユニーク。ボックスには白い表紙のブックレットと、白い紙ジャケに入ったCD本体の他に、ジャケットサイズの5枚の紙が入っていて、それぞれに楽章ごとのイメージのイラストが載っています。正直、そのイラストはあまりに説明的過ぎて陳腐の極みです。もちろん、そんなのもどうでもいいことですね

オーケストラの編成は、オリジナルの編成の楽器がそれぞれ1人ずつ(ヴァイオリンとヴィオラは2人ずつ)と、オリジナルにない楽器としてアルペン・ホルンとエレキギター、そしてピアノとキーボードが加わります。さらに、第2楽章と第4楽章にはブラスバンドも加わっているようです。
第1楽章は、いきなりヴァイオリンのソロで始まります。それはまるでカデンツァのようですが、次第に「幻想」の頭の部分を元にしたインプロヴィゼーションのような気がしてきます。そのうちに、オリジナルをきちんと少ない楽器で演奏したものも聴こえてきます。どうやら、この編曲のプランはそんな風に思いっきり崩す部分と、そのままほぼ忠実に演奏する部分とを交互に提供する、というようなものなのでしょう。
とは言っても、第2楽章ではまずエレキギターのリズムから始まって、まるでチンドン屋みたいな安っぽいワルツになったと思うと、それがさらにブラスバンドによる「スウィング」に変わります。この楽章は、ほとんどがそんなビッグバンド風のスウィングに支配されている感じ、あまりに明るすぎるそのノリノリのグルーヴには、かなりの違和感が付いてまわります。
第3楽章では、オリジナルではイングリッシュ・ホルンの物憂げな「呼びかけ」がとても印象的ですが、ここではなんとそのパートを「アルペン・ホルン」に吹かせています。なんとも雄大なその響きは、この楽章が本来持っている情感とは全くかけ離れたもの、いったい何を考えているのでしょうか。しかも、それは何とも不思議なメロディに変わっているので(応えるオーボエは普通のメロディなのに)、聴いていて気持ち悪くなってしまうほどです。
第4楽章は、「断頭台への行進」というタイトルを真に受けて、ブラスバンドが本当の「行進曲」を演奏していますよ。これから殺されるというのに、どうしてそこまで元気でいられるんでしょう。不思議です。
終楽章では、安っぽいコンピューター・プログラミングが大活躍、「Dies irae」のテーマも重々しさが全然ない間抜けな音源で、笑ってしまいますよ。
この、才能のなさをテクノロジーでしかカバーできない三文作曲家の仕事によって、ベルリオーズのオーケストレーションがいかに素晴らしいものであったか、ということに誰しもが気づいたことでしょう。

CD Artwork © Le Balcon
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by jurassic_oyaji | 2016-12-03 21:57 | オーケストラ | Comments(0)
ちゃんとした外国のオケは、年に2、3回しか来ません
 とうとう12月に入ってしまいましたね。あとはもう一気に年末に向けてまっしぐら、ほんとに嫌になります。今年は不順なお天気のせいなのでしょうか、いつも今頃になると届く「喪中」のハガキが、いつになく多いような気がします。やっぱり、サントリーホールで隣の隣に座っていた妙齢のご婦人も、今年はそんなハガキを出すのでしょうか(いや、本当に亡くなったかどうかは・・・)。
 そのサントリーホールのネタで、今月の「コラム」はまとめてみました。タイトルは「ジュラシック・クローク」です。「-ク」が元ネタと一緒ですから、かなり精度の高い作品なのではないでしょうか。もう300個近く作っているのに、まだこんなちゃんとしたのが残っているのがすごいですよね。
 最初は、あの巨大なクロークのことだけを書こうと思っていて、いったい幾つぐらいの棚が並んでいるのか調べてみました。私の記憶では10列ぐらいあったような感じでしたけどね。そこで、画像を検索してみたら、おあつらえのものが見つかりました。

 左の端が「A」であることは上の写真で分かりますから、右端のアルファベットが何かが分かれば、数は分かります。下の写真とあわせると、それは「H」のようですね。その先の斜めになっている部分は2階席への階段ですから、それ以上先にクロークがあるはずはありません。つまり、棚は8列あることになります。10列というわけにはいきませんでしたが、やはりかなりの数が用意されていたのですね。
 そこで上の写真のように、「A」から「H」まで8つの文字が並んでいるのを見ていると、なんだかそこに意味があるような気になってきました。そう、これはまさにドイツ語の音名そのものではありませんか。さすがサントリーホール。これは絶対に狙ってやったことに違いありません。ここでコートや荷物を預けると、番号札が渡されますが、そこには「A-21」みたいに、その棚のアルファベットが付いていますから、受け取るときにも迷わないのですね。
 ただ、そこのおねえさんたちは、例えば「E」の係りの人だと「『イー』の番号札をお持ちの方はこちらです」とか言って案内していますが、本当は「『エー』の番号札」と言わなければいけないんですよね。ただ、そうすると、「H」のおねえさんと「G」のおねえさんが案内するのがちょっとずれたりすると「『ハーゲー』の方」なんて聞こえるかもしれませんね。だから、今のところは英語で言っているのでしょう。
 そんなこだわりのあるホールですから、噂には聞いてはいたものの、実際に開場になった時に出てきたホールの係員が燕尾服を着ているのを見た時には、驚きましたね。まるで最高級のホテルにでも入るような気分になってしまいました。実は、4月にこのホールで歌った時にも、そんな格式の高さを思わせられるようなことがありました。我々合唱団員はちゃんとした楽屋なんかには入れずに、「リハーサル室」という名の大部屋に押し込められていました。男子も女子もおんなじ部屋で、真ん中を衝立で仕切ってその陰で着替えるようなところでした。そこは、2階のロビーの外側にあったので、そこからはいったんロビーに出れば客席に行けるようになっています。それで、みんなかわるがわるオルガンの前のP席あたりに行って写真を撮ったりしていたのですが、そこで声だしが始まる前に、事務局のGさんから、「絨毯の上は歩かないでください」と叱られてしまいました。というか、そういうクレームがホール側からあったそうで、お客さんが入る前に絨毯の毛並みが乱れているのは許されないことなのだそうですよ。そこまで気を使っているのですから、これはホテル以上の気の使い方なのではないでしょうか。
 そんなことを言われてしまえば、我々田舎者は黙って従うしかありません。なんせ、仙台のさるホールでは、かなり長い間絨毯に大きなシミが付いていたのを全く気にかけずに放置していたぐらいですからね。それと、サントリーホールでは楽屋のトイレにもちゃんとウォシュレットが付いていましたから、当然ロビーのトイレにもついているのでしょうが、仙台のホールで、例えばオーケストラが定期演奏会を開くようなところでも、いまだに付いていませんし、下手をすると和式トイレだったりしますからね。まあ、そもそもちゃんとした音楽ホールがないんですから、仕方がありません。「サントリーホールより立派なホールを作ってやる」ぐらいの意気込みのある人は、仙台にはいないのでしょうかねえ。川崎市にはミューザが出来たために、大物指揮者直々にコンサート会場として希望していたりするそうです。ヤンソンスもそうでした。仙台は、その点では川崎にさえ負けてます。情けない。
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by jurassic_oyaji | 2016-12-02 21:37 | 禁断 | Comments(3)
MOZART/Don Giovanni
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Dimitris Tiliakos(DG), Vito Priante(Leporello)
Myrtò Papatanasiu(DA), Kenneth Tarver(DO)
Karina Gauvin(DE), Mika Kare(Commendatore)
Guido Loconsolo(Masetto), Christina Gansch(Zerlina)
Teodor Currentzis/Musicaeterna
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今、最も過激な音楽を提供してくれているギリシャ出身の指揮者クレンツィスによる「ダ・ポンテ・ツィクルス」の完結編です。
彼のモーツァルトに対するスタンスは前2作と全く変わりません。使われている楽器はピリオド楽器ですが、中には実際にモーツァルトが使ったとは思えないようなものまで混じっているのは、なかなか楽しいものです。ただ、今回は今まで使っていた「ハーディ・ガーディ」に代って「ヴィオラ・ダ・ガンバ」が頑張っています。さらに、この作品では他の2作にはないトロンボーンがオーケストラに加わって、あの「石像」のシーンを盛り上げることになっていますが、そこではトロンボーンではなく、その前身の「サックバット」が使われているのですね。
例によって、早めのテンポ、レガートは殆ど存在しないクールな演奏で序曲が始まります。レポレッロから歌い始める劇的なイントロダクションに続いてドン・ジョヴァンニとレポレッロのレシタティーヴォ・セッコが始まったとたん、一瞬これはジンクシュピールだったのか、と思ってしまいました。その二人は、完全に「セリフ」として言葉をしゃべっていたのですからね。しばらくすると普通のセッコに変わりますが、それでも低音の即興性には目を見張らさずにはいられません。フォルテピアノは縦横に自由なフレーズを繰り広げていますし、そこにリュートなども加わってそれだけでもうおなかがいっぱいになってしまうほどですよ。
アリアになると、今度は繰り返しでの装飾が常に行われていて、聴きなれたメロディがさらに面白く聴けるようになっていました。その装飾、おそらくそれぞれの歌手の裁量に任されていたのでしょう、もう自分こそはここで目立ってやるのだ、という意気込みがストレートに伝わってくるほどに気合が感じられます。面白かったのは、ドン・オッターヴィオが、高音のロングトーンでトリルを入れていたこと。楽器ではよく使われる技ですが、それを歌で使うのはかなりの難易度でしょうに、そこまでやるか、という感じです。
もちろん、オーケストラも負けてはいません。ところどころに楽譜には無いフレーズが出てきてびっくりします。ドン・ジョヴァンニのカンツォネッタ(いわゆる「セレナーデ」)では、なんとオブリガートのマンドリン(リュートで演奏?)が2本使われてハモってますよ。さらに、本来楽譜にあったのに今まで全く気付かなかった隠れたパートの動きなども、見事に聴こえてきます。トゥッティのヴァイオリンが、こんな技巧的なことをやっていたなんて、と気づかされたところは数知れず。
歌手の顔触れは、まずドン・オッターヴィオがケネス・ターヴァーだったのには感激です。おそらくこの人は現在では世界最高のモーツァルト・テノールなのではないでしょうか。先ほどのトリルなども完璧にこなしていますし、なんと言ってもその透明な声がとことん魅力的です。
あとは、こちらで「マタイ」を歌っていたカリーナ・ゴーヴァンのドンナ・エルヴィラが素敵でした。エルヴィラというのはほとんどストーカーと化したある種の危なさを持ったキャストですが、彼女はその危なさ、というか、狂気を見事に体現していたのではないでしょうか。
他のキャストも粒ぞろい、それぞれが与えられたキャラクターを存分に表現してくれています。ツェルリーナのクリスティーナ・ガンシュが歌う「Là ci darem la mano」では、男の甘い言葉にメロメロになっている様子が手に取るように分かります。そして、それはドン・ジョヴァンニのディミトリス・ティリアコスの口説き方があまりにも素晴らしいからなのです。
ここでは、モーツァルトとダ・ポンテが作り上げたブッファ(諧謔)の世界が見事に眼前に広がります。こんな楽しいことを、せっかくですから「魔笛」あたりでもぜひ聴かせてほしいものです。

CD Artwork © Sony Music Entertainment
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by jurassic_oyaji | 2016-12-01 21:35 | オペラ | Comments(0)