Lucia Popp(Sop), John van Kesteren(Ten)
Hermann Prey, Thomas Stewart(Bar)
Gottlob Frick(Bass) etc.
Kurt Eichhorn/
Münchner Rundfunkorchester
SONY/88843015172クルト・アイヒホルンがミュンヘン放送管弦楽団の首席指揮者に在籍中の
1970年代前半に録音したオルフの作品が、まとめてボックスになってリリースされました。これは、
1995年に作曲者の生誕
100周年記念として5枚分のCDのためにマスタリングとカップリングが行われたもののリイシューです。録音された時はレーベルは
Ariloa-Eurodiscでしたが、
1995年の段階では
BMG傘下に入っていて
BMG Ariola、それが
2014年になると、
SONYはこんな風に旧
BMGのレーベルをまとめて「
RCA」と表示するようになっていました。「歴史」ってやつを感じてしまいますね。なんにしても、こんな貴重な録音が安価で広汎に提供されるようになったのはうれしいことです。なんたって、
LP時代に買った最初の「カルミナ・ブラーナ」ですから、思い入れもハンパではありませんし。
それは、
CDが出始めた頃にさっそくこんなジャケットで
CD化されていました。そこからは、
LPの刺激的な音づくりによるインパクトは全く感じられないようになっていましたが、それが本来の音なのだろうと納得していましたね。なんたって
CDは
LPよりはるかに原音に忠実な再生が出来ると本気で信じていたころでしたから。
もちろん、今ではそんな妄想はこれっぽっちも抱いていませんから、今回の
CDを聴いてみると単に当時のマスタリングがあまりに幼稚だったことに気づくだけです。やはり、元の音は相当に高音を強調した派手なものだったのですね。それが見事にこの曲に合っていたので、強烈な印象が残っていたのでしょう。
それは5枚のうちの1枚、残りの4枚には、今まで全く聴いたことのない曲が並びます。まずはオペラが2曲、それぞれが1枚のCDに収まっています。「賢い女」と「月」という、さすがにタイトルだけは「オルフの代表作」という言い方で目にすることは良くあった2つの作品です。いずれもグリム童話を原作としたものですから、おぼろげにあらすじは知っているような気がします。もちろん、オペラでは細かい部分で手の入った台本が用意されていたのでしょう。ただ、こんなボックスですから、当然リブレットなどは付いていません。これが
NAXOSあたりだと、ネットからダウンロード出来るようになっているものですが、
SONYの場合はそんな配慮は一切ありません。そんな企業の
都合によって、ほんのたまにしか意味の分かる単語が聴こえて来ないドイツ語の台本によるオペラを味わわなければならないのですから大変です。
ですから、「言葉」が分からない分、もっぱら「音楽」によってのみ、この作品を楽しむしか、とる方法はありません。そこでもろに音楽だけが前面に出てくると、なんか、こんなことを言ったら失礼かもしれませんが、この作曲家はなんと少ない語彙で勝負をしているのだろうという気がしてきます。つまり、この2つのオペラの前に作られた「カルミナ・ブラーナ」で、もはや彼のオリジナルのフレーズは出尽くしてしまったのではないか、とまで思えてしまうのですね。「賢い女」で、ピッコロ、ファゴット、ピアノ(多分)による超高速のユニゾンが何度も繰り返されるのを聴いた時には、思わず笑い出してしまいました。もっとも、「カルミナ度」がより高いのは、「月」の方でしょうか。
もう少し後になって作られた「クリスマスの劇」と「復活祭の劇」になると、中身は殆どセリフで、音楽はほんの少ししかなくなってきます。こうなると、リブレットなしで延々とドイツ語だけのお芝居を味わうのは殆ど苦痛と化します。
しかし、そこでめげてはいられません。最後に収録された「アストゥットゥリー」になると、これは完全にモノドラマ、
37分もの間、一人の俳優がただ喋っているだけというものすごいものなのですからね。こういう「音楽」をオルフが作っていたなんて、全くのサプライズでした。ちゃんと楽譜も出ているんですよ。これって、もしかしたら「ラップ」?
CD Artwork © Sony Music Entertainment