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エスクァイア日本版 1月号
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エスクァイア マガジン ジャパン刊
雑誌コード
11915-01


前回この雑誌が初めて「クラシック」を特集した時には、大きな話題を呼んだものです。それほどまでに、このファッショナブルな雑誌とクラシック音楽との融合は、奇異に映ったのでしょう。カタツムリを食べるほどの奇異さはないでしょうが(それは「エスカルゴ」)。しかし、それに味を占めたのか、この雑誌はそれからも定期的にクラシック関係の特集を組むようになってきたようです。2008年の3月号で行った「ピアノ特集」に続いて、今回は「指揮者のチカラ」というタイトルでの指揮者、及びオーケストラの特集です。
いつもながらの、カルティエやらアルマーニといった超高級ブランドのゴージャスな広告の中に、「カラヤン」などという別の意味でのブランドがいきなり現れるのには、ちょっとした興奮を誘われるものでした。しかし、ここではそんな古くさいブランドは、高級腕時計と「クラシック」との間の単なる導入にすぎません。それに続くのは、まさに「今」のブランドの新鮮な情報です。ヨーロッパやアメリカの都市にライターとフォトグラファーを派遣して今もっとも注目されているオーケストラと指揮者のシーンを伝えてくれているのは、かなりエキサイティングなことです。そこでインタビューに答えている新鮮な指揮者たちは、それぞれに等身大のコメントを寄せてくれています。そこからは、もはやカリスマによって支配されていた時代は完璧に終わってしまっていることが痛感されます。
そんな中にさりげなく埋め込まれた「最新」情報も、要チェック。ベルリン・フィルのオーボエ奏者、アンドレアス・ヴィットマン(茂木大輔のエッセイの中で、一緒にオーディションを受けた時の模様が語られています)は、いつの間にか楽団代表になっていたそうですし、かつての東ベルリンのコンサートホール「シャウシュピールハウス」も、いつの間にか「コンツェルトハウス」と名前を変えていたそうなのです。世の中はどんどん変わっていくものなのですね。もちろん、次のニューヨーク・フィルの音楽監督には、アラン・ギルバートが就任するなどという情報は、決して見逃すわけにはいきません。しかし、トゥールーズ・キャピトル管弦楽団の音楽監督、トゥガン・ソキエフなんて人、知ってました?
後半は、なぜかローカルな話題となって「街のオーケストラに行こう!」というタイトルで、地方のオーケストラの活動が取り上げられています。その見開きのタイトルページでの「第9」を演奏している写真を見て、思わず目を疑ってしまいました。そう、これは先日行われた仙台版「ラ・フォル・ジュルネ」と言われている「仙台クラシックフェスティバル」、いわゆる「せんくら」での写真ではありませんか。オーケストラは仙台フィル、後ろに立っている合唱団は市民の有志ですが、見覚えのある顔がたくさんあります。こんな晴れがましい場所に仲間たちが顔を出しているなどということがあってもいいのでしょうか。それはともかく、そのページを含め、多くの紙面を割いて「仙台」そして「せんくら」のことが詳細に紹介されているのは、なんとも面はゆいものです。実はこの都市は、「楽都」などと呼ばれて持ち上げられるような資格などなにも持ちあわせていない、文化的には非常に貧しいところなのだということは、そこに住むものだったら誰でも知っているのですからね。なにしろ、まともな音楽ホールとしての公共施設が一つもなかったために、業を煮やした地元の大学が卒業生に寄付を募って、古い講堂を音楽専用ホールに造り替えたというぐらいなのです。そんな実態を伝えることは、この山野さんというライターの能力を遙かに超えているものなのでしょう。そもそも「ライター」とは、「ジャーナリスト」とは似て非なるものなのですから。
by jurassic_oyaji | 2008-11-26 20:59 | 書籍 | Comments(0)