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BRUCKNER, DURUFLÉ/Requiem
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Benoît Mernier(Org)
Guy Janssens/
Laudantes Consort
CYPRES/CYP1654



デュリュフレの「レクイエム」の新譜はもれなくチェックしていたはずなのに、この、ベルギーのCYPRESというレーベルから出ていたものは気が付きませんでした。というのも、このレーベルは日本の代理店が「国内盤」という扱いで販売していたため、通常の輸入盤のチェックでは引っかからなかったのですね。
このアルバムは、実は「レクイエムと7つの世紀」という4枚から成るシリーズのうちの1枚です。1枚目は15世紀のオケゲムと16世紀のラッスス、2枚目は17世紀のカンプラと18世紀のミヒャエル・ハイドン、そして、この3枚目が19世紀のブルックナーと20世紀のデュリュフレということになります。これから出る予定の21世紀のピエール・バルトロメーの世界初録音と合わせて、7つの世紀からそれぞれ1曲ずつの「レクイエム」を集めたアンソロジーが完成するのだそうです。21世紀の新作はともかく、18世紀や19世紀には、もっとメジャーな「レクイエム」があるのでは、などとは突っ込まないで下さい。これが「ポリシー」というものなのでしょうから。石油を入れておくやつですね(それは「ポリタンク」)。
ブルックナーの「レクイエム」などいうレアな曲が、「国内盤」でリリースされるのは、おそらくこれが初めてのことなのではないでしょうか。もっとも、輸入盤では1987年に録音された名盤、マシュー・ベストとコリドン・シンガーズのHYPERION盤がありましたね。それに比べると、今回のラウダンテス・コンソートの合唱も、そしてソリストたちも、かなり見劣りしてしまいます。なにしろ、合唱の歌い方がいかにも幼稚なのですよね。そこになまじオリジナル楽器のオーケストラが加わっているものですから、変に荒っぽい印象しか伝わっては来ません。
ところが、そんな合唱がデュリュフレになったとたん、なんとも素敵な味を出すようになっているのですから、ちょっとびっくりしてしまいました。幼稚だと思っていた歌い方が、なぜかこの曲のちょっと昔風のセンスに非常に良くマッチしていたのです。本当に、このデュリュフレの「レクイエム」というのは、なんとも不思議な曲だと、今さらながら思わずにはいられません。いくら、上手な合唱団がきちんと歌ったところで、その魅力が完全に伝えられるわけではなく、逆にいくらか危なっかしいような演奏の方がえもいわれぬ味を出していることがあったりするのですからね。
ついそんな風に感じてしまうのは、おそらくデュリュフレ自身の指揮による初録音(ERATO)を最初に聴いていたからなのでしょう。決して上手とは言えないそのフランスの合唱団は、しかし、この曲の魅力を決定づけるなにかをもっていたのでした。その「なにか」の一つが、もしかしたらフランス風のラテン語の発音だったのかもしれません。今回のベルギーの団体に同じような感触を見たのも、その発音が与える印象が強かったせいなのでしょう。
これはオルガン伴奏の「第2稿」による演奏です。しかし、「オルガン版」とは言っても、「Pie Jesu」には普通はチェロのソロが加わるのですが、ここにはそれはありません。さらに、その、メゾ・ソプラノのソロで歌われる曲が、ここでは合唱によって歌われています。もう一つ、バリトンソロが入る部分でも、そこはやはり合唱で歌われています。同じことをロバート・ショー(TELARC)がやっていましたが、その時はちょっと違和感があったものが、今回はすんなり聴けてしまったのは、そんなあまり上手ではない合唱のもたらす独特の雰囲気のせいだったのでしょう。
正直、最後の「In paradisum」で、オルガンの間奏の間に次のフレーズ「Chorus Angelorum」がどんな風に始まるのか想像していたら、まさにそれと同じものが聞こえてきたときの心の昂ぶりは、ちょっと味わえないほどの体験でした。こういうのも、やはり「感動」というのでしょうね。

CD Artwork © Kastafior
by jurassic_oyaji | 2009-03-30 19:33 | 合唱 | Comments(0)