おやぢの部屋2
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To Saint Cecilia
To Saint Cecilia_c0039487_201896.jpg
Lucy Crowe(Sop), Nathalie Stutzmann(Alt)
Richard Croft(Ten), Luca Tittoto(Bas)
Marc Minkowski/
Choeur des Musiciens du Louvre
Les Musiciens du Louvre
NAÏVE/V 5183



先日の「ロ短調」と同様、100ページを超える豪華ブックレットと一体化したジャケットにCDが2枚入っているというパッケージです。非常に凝ったデザインのその「表紙」には、タイトルやアーティストが本当に小さな字でレイアウトされています。ですから、フランスのメーカーでは店頭で分かりやすいように、タイトルだけ大きく印刷したステッカーを梱包シールの上に貼り付けるという配慮をしています。「ロ短調」の時にはその状態でスキャンできたのですが、今回は、そのステッカーの上に日本の代理店が、日本語タイトルやアーティストの来日公演の案内などを印刷した無粋な宛名シールを貼り付けてしまいました。剥がそうとしてもべったりくっついてかえって惨め、ステッカーを含めて全部剥がすしかありませんでした。本当に無神経なことをやってくれるキング・インターナショナルです。何をやっても構わないという、尊大な態度は許せません(それは「テング・インターナショナル」)。
「ロ短調」ではそのブックレットには英独仏三ヶ国語のライナーがびっしり書き込まれていただけですが、音楽家の守護聖人として知られる聖セシリアをたたえる曲を3曲集めたこのアルバムでは、それにちなんで、彼女がらみの絵画がたくさん掲載されています。このジャケットも、そんな絵画の一部、ここではオルガンを手に持っていますし、他には実際にその楽器を演奏しているものもあります。さらにはヴァイオリンやヴィオール、そしてリュートやハープも。17世紀頃に描かれたその精密で写実的な絵画からは、その当時に使われていた楽器の形をうかがい知ることが出来、ヴァイオリンの弓が現在使われているものとは全く異なるまさに「弓」の形をしていたことなどが良く分かります。
それらの絵画の中で描かれているセシリアの表情は、なぜかうつろな目をしてあらぬ方向を向いている、というものでした。それは、そこで鳴っている現実の音ではなく、彼女の頭の中でしか響いていない天空の調べを聴き取ろうとしているかのように見えます。
曲はパーセルの「万歳、輝かしいセシリア」、ヘンデルの「聖セシリアの祝日のための頌歌」、そしてハイドンの「聖チェチリア・ミサ」です。3曲合わせて2時間半、結構なボリュームで、続けて聴くにはちょっと辛そう。
確かに、最初のパーセルなどはつい眠気が襲ってくるような退屈な面がなくはありませんでした。主にソロを歌っているソプラノのクロウがそれほど魅力的ではないのと、合唱がちょっと雑なのが、そんな印象を与えていたのでしょうか。
しかし、ヘンデルあたりになると、レ・ミュジシエン・ドゥ・ルーヴルの卓越したアンサンブルに耳が向くようになって来ます。音楽もとても起伏に富んだもので、楽器の音を模倣したテノールとコーラスのアリア「The trumpet’s loud clangor」などはまさに目が覚める思いです。なかなか聴くことの出来ないバロック・チェロによるノン・ビブラートのオブリガートなどというものからも、新しい魅力が発見できます。
最後のハイドンは、通常演奏される1773年版のフルミサ・バージョンではなく、最近のランドンなどの研究で明らかになった1766年の初稿の形で演奏されています。それは、「Kyrie」と「Gloria」だけから成る「ミサ・ブレヴィス」という「イタリアン・スタイル」のバージョンです。ただ、それだけでは物足りないのか、ロング・バージョンから「Credo」の中の「Et incarnatus est」と「Et resurrexit」という、いずれもドラマティックな楽章が加えられています。
ここでは、アルトのシュトゥッツマンが加わります。これで声楽陣は万全、オーケストラの凄さもますます冴えてきます。「Gloria」の最初の曲での一糸乱れぬストリングスがかもし出す疾走感は、まさにハイドンの、そしてミンコフスキたちの真骨頂でしょう。

CD Artwork c Naïve
by jurassic_oyaji | 2009-10-12 20:21 | 合唱 | Comments(0)