おやぢの部屋2
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The Chick Corea Songbook
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The Manhattan Transfer
4Q/FQT-CD-1819




40年近くという長い歴史を誇るジャズコーラスグループ、マンハッタン・トランスファーの最新アルバムです。所属レーベルも、かつてのATLANTICSONY、そして最近のRHINOとあちこち転々とした末に、今回は「Four Quarters」というワールド・ミュージックなどを主に扱っているレーベルからの登場です。
裏ジャケット(「ライナー」っていうんでしたっけ?)やブックレットには、最近のメンバーの写真が載っています。ティム・ハウザーあたりは元々老け顔でしたからあまり変わってはいないように見えますが、ジャニス・シーゲルなどは、集合写真を見てみるとほんとに「おばさん」というか、「老婆」っぽい顔になってしまったのは、時の流れのなせる業でしょうか。ブックレットの最初のページにある網タイツ姿のスナップなどは、顔がよく見えないせいかとてもセクシーだというのに。アラン・ポールも、髪には白いものが混じっていますね。シェリル・ベンティンだけは、いつまで経っても若さが弾けています。いったい彼女は何歳なのでしょう。
このアルバムでは、タイトルにある通りすべてチック・コリアの曲をカバーしたものが集められています。このジャケットを見ると、なんだかチック・コリアのかつてのアルバムを飾っていたさまざまなモチーフが登場しているようで、面白いですね。さらに、カバーだけではなく、このアルバムのためにチックは「Free Samba」という曲まで書き下ろしていますし、その中では彼自身が演奏にも参加しています。なんと豪華な。
その「Free Samba」、ブラジルのジャングルを思わせるような叫び声から始まる、まさにブラジル色満載の曲です。彼らのATLANTIC時代、1987年のアルバムに「Brasil」というのがありましたが、それを思い出させるようなちょっと哀愁が漂う曲、確かにチックは彼らの特質をよくつかんだ曲作りをしています。
おそらく、この中では最も有名なナンバーである「Spain」は、オリジナルのようにロドリーゴの「アランフェス協奏曲」のテーマが、最初に挿入されます。ガットギターのソロ(とても素敵な音色!)に乗って、まるで「スウィングル・シンガーズ」のようなコーラスが響きます。そして、いよいよ本編、あのスリリングなユニゾンを彼らはどのように料理しているのか、期待を込めて聴き進みます。と、それは、いともゆったりとしたビートに乗った、なんともユルい音楽でした。今風の重心の低い独特のノリのあるリズムには違いないのですが、こんなテンポではオリジナルの持つ息詰まるような緊張感など、出るわけがありません。まるで鼻歌のように、あのサビの複雑なリズムをスローモーションでこなしている彼ら、もはや彼らには、かつてのような一糸乱れぬアンサンブルなどは期待できないのでしょうか(一糸まとわぬ姿なら・・・)。正直、ここではかなりの失望感を味わってしまいました。
そうなってくると、かなりハードルを下げたところでの彼らとの対峙となるのもやむを得ません。残る期待は「Children's Song」でしょうか。お馴染み、チック自身も録音していましたし、クラシックのピアニストも取り上げることもあるというちょっと不思議な、(たとえば「現代曲」っぽいといったような)肌触りのソロ・ピースから、15番と1番が、ここではあまり厚くしないアレンジで、声も楽器のように扱われて録音されています。これは期待通りの面白さでした。15番はマリンバとフルート、1番ではピアノだけという編成で、メンバーがいかにも唐突なメロディを楽しみながら紡いでいる姿が、素敵です。
もはや、それほど高度なことは期待できなくなった彼らですが、音楽そのものを楽しませる力はまだまだ健在です。あえて「コーラス」にはこだわらないで接すれば、まだまだ応分の喜びは与えてもらえることでしょう。

CD Artwork © Four Quarters Entertainments, Inc.
by jurassic_oyaji | 2010-01-25 19:32 | 合唱 | Comments(0)