おやぢの部屋2
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James Galway plays Flute Concertos
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James Galway(Fl)
Various Artists
RCA/88697828122




最近のCDのリリース状況を見ていると、もはやメジャー・レーベルはクラシックに関しては殆ど新しい録音をやめてしまったのではないか、と思えるほど元気がありません。そんな中で、過去のカタログのたたき売りだけには、ものすごい情熱を傾けているかのようにすら感じられます。なんせ、中には100年以上の歴史を誇るレーベルもあるのですから、抱えている音源の量はハンパではありません。もはや制作費などはすっかり償却が終わっているのですから、ビジネスに徹する課程でアーティストに対する畏敬の念を放棄することに罪悪感を抱きさえしなければ、いくらでも安価な商品を提供することは出来るのでしょう。
かくして、RCA、つまりBMGの音源を全て手中に収めたSONYによって、あのゴールウェイの12枚組みのボックスが、割引などを適用するとたったの2690円で買えてしまうという時代が来てしまったのです。1枚たったの200円程度、新しいアルバムが出るたびに買い集めていた、その同じものが10分の1以下の値段になってしまうのですから、なんとも複雑な思いです。
今回のボックスは、彼の膨大なカタログの中から、協奏曲を演奏しているトラックが集められています。似たようなコンピレーションは今まで幾度となくリリースされていましたから、曲目に関してはすでにその中に入っていたものが殆どだと、普通は考えてしまいます。しかし、実際に手に取ってみると、この中には知る限りではまだCDになっていないものが含まれていたので驚喜しているところです。ゴールウェイがベルリン・フィルを退団してソリストとしてのスタートを切ったのは、1975年のことでした。それ以来、彼のアルバムはRCAからリリース、最近まで、ほぼ「専属アーティスト」という感じで、このレーベルに貢献してきていました。しかし、ソロ活動を始めた当初は、EURODISC(オイロディスク、決してエッチなレーベルではありません・・・それは「お色気ディスク」)など他のレーベルにも録音は行っています。そのEURODISC(すでにBMGの傘下に入っていましたから、当然SONYからも出すことが出来ます)に残した数枚のアルバムの中の、1978年の録音、テレマンの組曲と2曲の協奏曲を収録したものの中から、ト長調の協奏曲が、多分初めてCDになっていたのです。組曲はすでに還暦記念ボックスに入っていましたから、残るはハ長調の協奏曲だけですね(すでにCDは出ているよ、という方の情報をお待ちしています)。
さらに、今回はマスタリングも新たに行われているようです。全部聴いたわけではないのですが、初出のCDに比べると、明らかに音が良くなっています。なんといっても、これらのCDがリリースされたのは80年代から90年代にかけてですから、まだまだマスタリングは手探り状態だったはずで、今聴き直してみると繊細な部分がかなり損なわれているように感じられます。というより、これを購入した頃は、とりあえずゴールウェイの演奏には魅力を感じても、ちょっと繰り返して聴くには抵抗があるような音だったことを思い出していたところです。技術の積み重ねによって、こんな安価でもはるかに素晴らしいものを作り出すことに成功していたのですね。ただ、それは輸入盤のケースであって、国内盤の場合はそれほど遜色のないものだったのも、新しい発見でした。当時は、このレーベルに関しては、日本のマスタリングの方が輸入盤より優れていたのですね。
ゴールウェイの演奏は、いまさら何も言うことはありません。特に、バックのオーケストラをも圧倒するような存在感は、小ぶりになってしまった今時のフルーティストには及びもつかないものです。これからもこれほどの演奏家が出てくることはないのではないかと思えるほどのスーパースターの克明な記録、繰り返しますが、それがこんなに安価に入手出来るなんて、まさに奇跡です。
(4/16追記)
自他共に認める「ゴールウェイおたく」のTさんから、「テレマンのト長調はこちらに入っています」という情報を頂きました。ちなみにハ長調はやはりまだCD化されていないそうです。

CD Artwork © Sony Music Entertainment
by jurassic_oyaji | 2011-04-15 21:07 | フルート | Comments(0)