おやぢの部屋2
jurassic.exblog.jp
ブログトップ | ログイン
Hooked on Classics
Hooked on Classics_c0039487_1950453.jpg



Louis Clark/
The Royal Philharmonic Orchestra
DELTA/60378




1980年代初頭に一世を風靡した「フックト・オン・クラシックス」のシリーズが、なんだか得体の知れないイギリスのレーベルから3枚組のボックスとしてリリースされました。ジャケットはオリジナルとは似ても似つかないデザインですが、3枚まとめてたったの1000円というので、買ってみましたよ。実は、かつてこれらの曲をまともに聴いたことはなかったものですから。
それにしても、このジャケット、例の、ト音記号の先が釣り針(フック!)になっているという印象的なイラストが再現されていないのは残念ですし、なんだか「五線」ではなく「六線」になっているのが、非常に気になります。ま、その程度の志なのでしょう。そもそも、肝心の指揮者の名前すら、ここにはありませんからね。
そんなかわいそうな扱いを受けている1947年生まれの指揮者、アレンジャーのルイス・クラークは、ジェフ・リンの「ELO」のストリングス・アレンジャーとして1974年にこの業界にデビュー、後には、ELOのツアーにもキーボードのメンバーとして参加しています。1981年に、クラシックの名曲をディスコ・ビートに乗せてエンドレスで演奏する、というアイディアで、彼自身がロイヤル・フィルを指揮して録音した「Hooked on Classics」というアルバム(LP)は、たちまちUKのヒット・チャートを躍り上がり、クラシックにはあるまじきセールスを記録することになりました。まあ、正確には「クラシック」は単なる素材だったので、「クラシックのアルバム」とは言えないのですが、「クラシック」がらみでそんなに売れてしまったのは、一つの「事件」だったわけですね。それに味を占めて、同じメンバーによって1982年には「Hooked on Classics 2」(後に「Can't Stop the Classics」)、そして1983年には「Hooked on Classics 3」(後に「Journey through the Classics」)という、全く同じコンセプトのアルバムがリリースされ、いずれも大ヒットとなりました。
クラークが関わったのはその3枚だけですが、そのあとは、よくあるような他のアーティストによる「便乗」アルバムが続出することになりますね。そんなわけで、この「フックト・オン」シリーズは、いったいどのぐらいのエピゴーネンを生んだのか、その実態を正確に把握するのは困難です。
この「フックト・オン」という言葉は、「引っかける」ということで、次々と色々な曲を連続して演奏するという意味を持たせているのでしょうが、最近になって、もうちょっと別な意味もあるのではないか、と思うようになりました。ポップスでは、例えば山口百恵の「♪ああ~、日本のどこかに」(いい日旅立ち)のように、曲の中で最も盛り上がる部分のことを「サビ」といいますが、「フック」には、この「サビ」と全く同じ意味があるのですね。つまり、このタイトルは、単に曲をつなぐだけではなく、その曲のまさに一番の聴かせどころがつながれている、という意味までが、込められているのではないでしょうか。
ジャケットはちょっとヘンですが、とりあえずここでは3枚のアルバムがきちんと3枚のCDに再現されています。それによって、リリースされてから30年も経って、初めてクラークの仕事に対峙することになりました。高音を強調した、いかにもポップス寄りのサウンドには、ちょっと引いてしまいますが、この、全く脈絡のない曲をつなぐというやり方には、とても潔い爽快感を味わうことが出来ました。というより、これを聴いて、思わずピーター・シックリーの「P.D.Q.バッハ」を思い浮かべてしまったのは、なぜなのでしょう。「本家」よりもアレンジはかっこいいし、演奏もしっかりしている分、「笑い」もより充実したものに感じられてしまいましたよ。
「曲名あてクイズ」として遊ぶのにも、これはもってこい。でも、難易度はかなり低いですね。このサイトを見ているような人だったら、簡単に全部分かってしまうはずですよ。

CD Artwork © Delta Leisure Group Plc.
by jurassic_oyaji | 2011-09-26 19:51 | ポップス | Comments(0)