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Bernstein Conducts Stravinsky and Sibelius
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Leonard Bernstein/
London Symphony Orchestra
ICA/ICAD 5082(DVD)




以前こちらでご紹介したバーンスタインとロンドン交響楽団との1966年の共演の映像には、まだDVD化されていなかったものがありました。それが、今回のストラヴィンスキーの「春の祭典」とシベリウスの「交響曲第5番」です。いずれも、当時このオーケストラの団員だったジェームズ・ゴールウェイがフルートを演奏している姿を見ることができるという、貴重なものです。
これらの映像は、BBCのプロデューサーであったハンフリー・バートンの手によって作られたものだというのは、よく知られています。このDVDにも、ボーナス・トラックとしてバートンがバーンスタインにシベリウスについてインタビューしている映像が入っていますし。バートンに関しては、この2年前、1964年にウィーンまで出向いてその頃行われていたDECCAでの「神々の黄昏」のドキュメンタリー映像を作ったことでも知られていますね。そんな、元は「番組」のための素材だったものが、いまではDVD(こればっかりは、BDにしても何の意味もありません)として貴重この上ないアーカイヴとなっています。
この後も、バートンはバーンスタインとウィーン・フィルを使ってベートーヴェンやマーラーの交響曲全集を映像化することになりますし、さらには評伝まで出版するのですから、バーンスタインを語る上では欠くことのできない人でした(バーンスタインのお葬式には弔電を送りました)。
この2曲が収録されたのは、19661127日です。演奏された順序も、おそらくこのDVDと同じで、「春の祭典」が先だったのではないでしょうか。シベリウスでは空いた席が見当たらないので大編成の「春祭」が終わったら椅子を片づけてしまったのでしょう。シベリウスが終わったところで椅子を運び込むのは、ちょっと考えずらいことですから。
映像では、どちらの曲もまずバーンスタインの正面からのカットを、延々と続けます。もしかしたらこのまま最後まで行ってしまうのでは(それはそれで面白い試みですが)と思い始めたころに、やっとオーケストラのメンバーが画面に現れます。最初にフルートパートが映った時は、管楽器全体というフレーミングで、フルートだけでも5本という大編成、1人1人はほんの豆粒ほどにしか見えませんが、トップのゴールウェイは以前のDVDで当時の顔が分かっていましたから、難なく判別することが出来ました。ソロのアップになれば、もう間違いなくゴールウェイの音です。
しかし、この曲では1番フルートのソロを楽しむことはあまりできません。やはり、なんと言ってもしっかり暗譜でこの難曲に立ち向かっているバーンスタインの姿をこそ、味わうべきなのでしょう。正直、なんだかあまりバーンスタインらしくない「守り」に入った指揮ぶりなのが気になってしまいます。もともとそのような曲ではないので、こってり歌わせるというようなことはしていないのですが、そのためになにか大人しいというか、「知的」な音楽に聴こえてしまいます。申し訳ありませんが、帯解説にある「ストラヴィンスキー自身も驚くほどの熱狂的な『春の祭典』」というのは、なにかの間違いでしょう。それでも、後半の変拍子の嵐ともなれば、思わず体が動いてしまって、足で拍子を取り始めたりするのは、バーンスタインの「本能」のなせる業だったのでしょう。
シベリウスの方は、うって変わってチャーミングな「バーンスタイン節」が満載です。バートンとのインタビューでも語っている通り、ここではバーンスタインが信じたこの曲の魅力を、まさに全身を使って表現しているような気がします。そして、ここではゴールウェイのフルートも存分に堪能できます。あくまでアンサンブルの中という制約の中で、出来る限りのカンタービレを披露しようとしているゴールウェイの姿は、こんなショスタコみたいな顔の頃から健在だったのですね。
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DVD Artwork © International Classical Artists Ltd
by jurassic_oyaji | 2012-09-14 22:36 | オーケストラ | Comments(0)