Tugan Sokhiev/
Orchestre National du Capitole de Toulouse
NAÏVE/V 5192(CD+DVD)
最近は、若い指揮者の台頭が著しく、新しい名前が市場にはどんどん登場しています。
1977年にロシアに生まれ、キーロフ・オペラでゲルギエフの薫陶を受けたトゥガン・ソヒエフもそんな若手の代表格、このトゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団とともに
2009年に引き続き昨年末にも来日したばかりですから、一躍知名度もアップしたことでしょう。
トゥールーズ・キャピトルと言えば、
1968年から
2003年までという超長期にわたって音楽監督を務めていたミシェル・プラッソンのオーケストラというイメージはぬぐえません。プラッソンの退任後、
2005年に首席客演指揮者としてこのオーケストラを任されたのが当時弱冠
28歳のソヒエフでしたが、
2008年からは音楽監督に昇格、プラッソン時代とは一味違う魅力を、このオーケストラから引き出しています。
今回、「火の鳥(
1919年版)」と「春の祭典」がカップリングされたアルバムは、なんとも豪華な仕上がりになっています。まず、
69ページにも及ぶブックレットには、それぞれのバレエのあらすじとともに、ジャケットにも使われているソフィー・ショーサードという人のイラストが掲載されて、まるで絵本のような体裁になっています。黒を基調とした2色刷りのこのイラストが、ちょっと不気味。さらに、ここには
CDだけではなく「春の祭典」だけですがライブ演奏を収録した
DVDも同梱されているのですよ。ポップスの「初回限定」みたいですね。投票券とか。
まず
CDを聴いてみます。いかにも「ロシア」というような大時代的な表現は見られず、かなり知的であっさりした演奏なのですが、ところどころでハッとさせられる表現に出くわすこともあります。例えば、「火の鳥」の「子守歌」の最後の部分、次の「終曲」のホルン・ソロを導き出す弦楽器の扱いに、とても新鮮なものを感じることが出来ました。
「春の祭典」は、やはり破綻のない演奏で、変に盛り上げるようなところがないのが好感が持てます。ただ、なにか平板な感じがして、特に第2部になると幾分退屈させられてしまいます。
ところが、同じ曲を
DVDで見始めると、
CDとは全然印象が変わってしまいます。映像のあるなしだけではなく、音声だけでもかなり違います。
CDと同じテイクではないのかな、と思ってクレジットを見ると、
DVDでは「
2011年9月
17日」と、しっかり収録の日にちまで明記されていますが、
CDではただ「
2011年9月」とだけしかありません。ということは、
CDでは数回の演奏をおそらくお客さんが入っていないときのリハーサルも含めて、編集してあるのでしょう。実際に聴き比べてみると、
DVDでは客席のノイズがかなり派手に聴こえてきますが、
CDではそれがきれいに消えています。やはり、大半はライブではなくセッション録音のような気がします。もしかしたら、それが退屈に感じられた原因なのかもしれませんね。
そんなノイズの有無だけではなく、
DVDでは音そのものが
CDとはかなり違っています。最初は
PCで再生、音声もいつも聴いているシステムに引っ張って聴いていたのですが、ちゃんとした
BDプレーヤーで再生してみたら、その音はもっとグレードが上がりました。弦楽器などは
CDとは比べ物にならないほどのニュアンスのある音に変わりましたよ。高音の伸びも別物です。スペックの記載はありませんが、
DVDではまず
24bit/48kHz以上の
PCM(圧縮はされているでしょうが)の音声が採用されているはずですから、これはある意味当然のことなのでしょう。
さらに、映像ならではの楽しさもありました。このオケが、しっかり「バソン」を使っているのも分かります。ちなみに「バソン」とは俳人ではなく(それは「
ブソン」)、フランス式ファゴットのことです。
さらに、その並びのコントラファゴットが、ちょっと変わった楽器であることも分かります。
調べてみたら、これは「コントラフォルテ」という珍しい楽器でした。下の写真の左が普通のコントラファゴット、右がコントラフォルテです。こんな風に、演奏以外でもなにかと楽しめるアルバムでしたよ。
CD & DVD Artwork c NAÏVE