おやぢの部屋2
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LIVE IN JAPAN, 1967
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Peter Paul and Mary
RHINO/R2-533277




「ピーター・ポール・アンド・マリー」と言えば、1960年代に一世を風靡した3人組のフォーク・グループです。「PP&M」あるいは単に「PPM」という略称で呼ばれてもいましたが、その後環境問題関係のタームとしてこの「PPMparts per million)」が登場し、空気中の汚染物質や食品中の有害物質含有量などの単位として大活躍を始めるころには、彼らは世の中から忘れ去られるようになってしまいました。いや、彼らだけではなく、同じようにメッセージ性を前面に出した泥臭い「フォーク・ミュージック」というジャンル自体が、「ロック」や「ニューミュージック」の波にのまれて廃れていったのです。
とは言え、「PPM」が何度目かの来日を果たした1967年には、まだまだ彼らの人気は絶大でした。コンサートは超満員、街中に張り出された彼らのポスターは、一夜にしてすべて持ち去られてしまったと言いますから、すごいものです。
その時に、1月16日の新宿厚生年金会館と、17日の京都会館でのコンサートの模様が当時の彼らのレコードの発売元であった東芝音楽工業(彼らが所属していたWARNERレーベルは、1970年までは東芝から発売されていました)によって録音され、同じ年の11月に「Deluxe/Peter Paul and Mary in Japan」というタイトルでLPが発売されました。これは、日本国内のみでのリリースで、本国アメリカでは発売されることはありませんでしたし、CD化されることもありませんでした。
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それが昨年、彼らのデビュー50周年を記念して、日本のWARNERから1960年代のオリジナルアルバムが紙ジャケット仕様で発売された時に、このアルバムも45年ぶりにCDとして日の目を見ることになりました。さらに、この時に、アルバムには使われなかった音源が大量に倉庫に眠っていたことが発覚するのです。それらがWARNER傘下の、リマスタリングにかけては定評のあるRHINOレーベルによって2枚組、全24曲収録のCDとして全世界で発売されました。1枚目にはかつての日本盤と同じ12曲、そして、2枚目には全世界のPPMファンがここで初めて耳にする12曲が収録されています。
実は、この初出テイクも入っているアルバムの存在を知ったのは、山下達郎がホストを務めているラジオ番組でした。彼が所属しているWARNERの話ですから、これが出ると決まった時に、国内盤のサンプルを放送したのですね(3分ぐらい)。そこでの目玉は、そのコンサートの時にアーティストと一緒にステージ上にいた司会者のMCでした。そういう時代だったのですね。こういう「外タレ(死語)」のコンサートには、必ず通訳も兼ねた司会者がいたのですよ。PPMの場合は、歌詞の理解が必要だということで、曲が始まる前に歌詞の日本語訳を朗読していたのですが、そこまで入っていたものが放送では紹介されていました。いかにも当時の音楽事情を物語るような光景ですが、正直これはかなりうざったいものでした。でも、そんな珍しいものなら欲しかったので、同じものが輸入盤ではるかに安く手に入ることを知って、これを購入したのです。
ですから、まずそんな聴きたくもない司会者の声が入っていることを覚悟して聴き始めたら、ごく普通に演奏が始まったので逆に拍子抜けです。ライナーを読んでみると、このMCは日本盤だけのサービスだったそうです(というか、日本盤LPにあったMCもカットした、と)。まずは一安心、彼らの全盛期の演奏を、堪能しました。写真を見ると、マイクは2本か3本しか使っていませんが、素晴らしい音で録音されています。恐らく、リミックスの際に手を加えたのでしょうが、マリーの声がパン・ポットしているところもありましたしね。
そのマリーも2009年に亡くなりました。さらに、このジャケット写真の隅にかすかに写っている、ずっと彼らのコンサートではサポートを務めていたベーシストのリチャード・クニッシュも、昨年お亡くなりになったそうです。でも、彼らの音楽は、このように「最高の音質」で残ることになりました。

CD Artwork © Warner Bros. Records Inc.
by jurassic_oyaji | 2013-01-30 21:48 | ポップス | Comments(0)