おやぢの部屋2
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SIBELIUS/Symphonies Nos 1 & 4
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Osmo Vänskä/
Minnesota Orchestra
BIS/SACD-1996(hybrid SACD)




ヴァンスカとミネソタ管弦楽団によるシベリウスの交響曲全集は順調に制作が進んでいるようで、2011年の6月に録音された2番と5番に続いて、2012年の5月と6月に録音された第2弾、1番と4番のカップリングのSACDがリリースされました。残るは3番、6番、7番ですが、ヴァンスカが20年ほど前にラハティ交響楽団と、やはりBISに残した録音では、この3曲の演奏時間はトータルでほぼ80分、BISの場合、CDで最大8226秒まで収録した実績がありますから、恐らくこれを1枚にして、3枚組の全集が出来上がることになるのでしょうか。
「全集」というのは、なにもCDSACDに限ったものではありません。臨済宗でもありません(それは「禅宗」)。もっと曲のおおもとに迫った、一人の作曲家のすべての作品をまとめて出版しようという、「楽譜」の全集も、多くの作曲家について作られています。バッハやモーツァルトの場合は、2度にわたって全集が出版されたりしていますね。もちろん、最新の「全集」というものには、今までの楽譜をそのまま出すのではなく、それぞれの作品について自筆稿などの資料を基にして、印刷譜の誤りを正してより作曲家の意図に近いものを作るという「批判校訂」の手がかけられています。
シベリウスについても、「Urtext der Gesamtausgabe Jean Sibelius Werke(ジャン・シベリウスの作品の原典版全集)」というものが、1998年からブライトコプフ社から出版され始めています。さっきの7つの交響曲の場合、今までは1番、2番、4番はブライトコプフ、3番はロベルト・リーナウ、5番~7番はヴィルヘルム・ハンセンと、3つの出版社から出版されていたものが、全集完成の暁にはすべてブライトコプフのものが揃うことになります。現在までに20冊ほどの楽譜が出版されていますが(最終的には50冊以上になるはず)、交響曲では1、2、3、7番の4曲が完成、そのうちの1番と2番ではポケット・スコアも出ていますから、手ごろなお値段で最新の研究の成果を確かめることが出来ます。
もちろん、指揮者の中にはすでにこれらの「全集版」を使って演奏している人もいるはずです。日本におけるシベリウス演奏の第一人者である新田ユリさんなどは、全集版を使うときでも、以前の楽譜と異なっている箇所は自筆稿などを参考にして納得のいくまで考証を行い、それを演奏に生かしているのだそうです。
ヴァンスカも、せっかく新しい「全集」(こちらは録音)を作るのですから、この「全集」(楽譜の出版)が完成して、新しいシベリウス像が明らかになってからでも遅くはないと思うのですが、そこはなかなか「商売」との兼ね合いが難しいところですね。まだ3曲も残っていますから、それが出るのを待っていたら、恐らく同じオーケストラで録音することはできなくなっているでしょうね。今回の収録曲の「1番」は、すでに2008年に全集版が出ていますから、使っている可能性はあるのですが、耳で聴いて唯一違いが分かる第1楽章の62小節目(全集版では、下図のコントラバスの「arco」の指示がなくなって、それまでのピチカートで演奏)では、確かにピチカートですが、ヴァンスカは旧録音でもすでに自筆稿通りにピチカートで演奏していましたからね。ブックレットのクレジットは「ブライトコプフ」、これだけではどちらなのかは分かりませんし。
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前回同様、ヴァンスカの演奏自体は旧録音とそれほど変わっているところはありません。「1番」の颯爽たる運びは、どちらもカッコよくてしびれます。しかし、録音のスペックが16bit/44.1kHzから24bit/96kHzに変わった影響は、驚くべきものがあります。冒頭のクラリネットの超ピアニシモなどは、SACDでなければ聴けないもの、さっきのコントラバスのピチカートも、前の録音ではよっぽど集中して聴かないと分かりませんでしたが、今回ははっきり分かりますからね。
金管の輝きなども、こちらの方がワンランク上です。これから買うのだったら、こちらの方がだんぜんおススメ。

SACD Artwork © BIS Records AB
by jurassic_oyaji | 2013-04-15 21:09 | オーケストラ | Comments(0)