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至高の音楽/クラシック 永遠の名曲
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百田尚樹著
PHP研究所刊
ISBN978-4-569-81603-6



処女小説「永遠の0」が映画化され、大ヒットとなった百田さんは、実は筋金入りのクラシック・ファンであったことを世に知らしめるエッセイ集です。なにしろ、お持ちのレコードやCDは2万枚以上と言いますから、これはそんじょそこらの「マニア」だったら裸足で逃げ出すほどの物量、それだけで尊敬してしまいます。
この本は発売されてすぐ買ったのですが、暇な時に読もうとそのままにしてありました。しばらくしてたまたま車の中でかけていたラジオから、関西弁のやたらハイテンションの声で、クラシックについて熱く語っているのが聴こえてきました。その方は、番組の進行役の坂本美雨を相手に、有無を言わせぬ迫力で、クラシックの魅力をとうとうと、まるで何かに憑かれたようにしゃべり続けていたのですね。この時代に民放FMでこれだけクラシックについて無心に語れる人に、とてつもない違和感を覚えたものです。しばらく聴いているうちに、どうやらこの方はこの本の著者で、そのプロモーションのためにここに出演しているのだな、と分かりました。まあ、普段は、新しいアルバムを出したロックかなんかのアーティストが出ている番組ですから、そんなノリで登場していたのでしょう。確かにこのトークは、そんなアーティストと同じような滑らかな口調で、ひたすらクラシックの素晴らしさ、ひいてはそんなことをテーマにしているこの本の素晴らしさを、飽くことなくまくしたてていたのでした。
家へ帰って実際に本を読んでみると、最初の章と最後の章が、さっきまでしゃべっていた内容と全く同じものだったのには驚きました。これも、ニューアルバムの中のタイトルチューンを丸ごと番組でかけてもらう手法とよく似ています。卑しくもクラシック・ファンともあろうものが、こんなあからさまな形でクラシックを扱うなんて、許せません。それが、さきほどの違和感の主たる原因だったのでしょう。
いや、日ごろ寡黙さこそがクラシック・ファンの資質だ、という信条があるものですから、こんな「明るい」人種に出会うと、何か大切なものを土足で踏みにじられているような感じをつい持ってしまうのが、「暗い」クラシック・ファンのいけないところなのでしょう。
やり方はともかく、この本からは著者のクラシックに対する熱い思いは間違いなく伝わってきます。それも、極めて「古典的」な思いだというあたりが、ある種のすごさを感じさせるものなのでしょう。2万枚という枚数についても「自慢ではなく恥ずべきこと」と、ちょっと意外なコメントがきけるのが、嬉しいところです。たくさん集めるよりは、「1枚のレコードを宝物のように」聴く方がずっといいことを知っている人なら、音楽に関しては安心できるな、という気がします。
その「2万枚」にしても、「ゴルトベルク」だけで、編曲も含めて100枚以上お持ちになっているというのですから、その内訳はそれほど多くはないのかもしれませんね。確かに、「いずれ誰かが録音するかもしれない」と書かれている、マリウス・コンスタンの編曲によるラヴェルの「夜のガスパール」のオーケストラ版は、すでにプティジラールの指揮によるCDを始め、最近ではこんなのも出ているのに、どうやらまだ入手されてはいないようですから、そのようなレア物に対する執着は、あまりお持ちになっていないのかもしれませんね。このあたりから察するに、百田さんは「ファン」ではあっても決して「マニア」ではないように思えてしまいますが、どうなのでしょうか。
ひとつ気になるのは、表紙に写っているスコアが、ベルリオーズの「ローマの謝肉祭」のものだということです。一緒にCDが写っているように、この本ではサンプル音源が付録になっていますが、その中にはこの曲は入っていませんし、本文の中でも登場していないのですよね。これは、デザイナーの勘違いだろーま

Book Artwork © PHP Institute
by jurassic_oyaji | 2014-01-06 20:40 | 書籍 | Comments(0)