おやぢの部屋2
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DUKAS/L'Apprenti sorcier, Velléda, Polyucte
DUKAS/L\'Apprenti sorcier, Velléda, Polyucte_c0039487_2082020.jpg
Chantal Santon(Sop)
Julien Dran(Ten)
Jean-Manuel Cadenot(Bar)
François-Xavier Roth/
Les Siècles
ACTES SUD/ASM 12




ほとんど「近代」という位置づけの時代に作られた音楽でも、あくまでその当時の楽器を使って演奏するという、ロトとレ・シエクルのチームが、今度はポール・デュカスの作品を録音しました。デュカスといえば、ストコフスキーがサウンド・トラックを担当したディズニー・アニメの中で使われて一躍有名になった「魔法使いの弟子」と、もう1曲、こちらはNHK-FMのテーマ音楽として、作曲家の名前も分からずに耳に馴染んだ「『ラ・ペリ』のファンファーレ」以外には全く知られていないクラシック界の「一発屋」、いや「二発屋」です。ここでは、そんな、今まで全くタイトルすらも知らなかった「ヴェレダ」というカンタータと、「ポリュークト」序曲も聴くことが出来ます。
もちろん、メインは「魔法使いの弟子」です。ケムンパスのお仲間ですね(それは「魔法使いのべし」・・・わかんないだろうなぁ)。なんと言っても聴きどころは、あのユーモラスなテーマを演奏しているファゴットの音色でしょう。この楽器は、今でこそ世界中どこに行ってもその「ファゴット」という名前を持つ楽器を使っているオーケストラしかいなくなってしまいましたが、デュカスが想定しているのはもちろんフランス風の楽器「バソン」でした。
ところが、そのバソンが出てくる前の弦楽器の音で、すでに全く今まで聴いてきたものとは別物のサウンドを体験することになります。それは、なんとも言いようのない、「これぞ、おフランス」という、くすぐったくなるような肌触りを持っていたのです。こんな弦楽器に先導されれば、そのあとに出てくるのはやはりホンワリとしただらしなさ(もちろん、いい意味です)を振りまいているバソンしかありません。
ライナーには、例によって使われている楽器のメーカーまで書いてありますから、ビュッフェ・クランポンの名前があればそれがバソンであることははっきりします。そんな風に他の楽器を見てみると、フルートはルイ・ロットでしたね。そういえば、そんなまろやかな音でノン・ビブラートのフルートが聴こえていました。こうなると、木管のハモリが全然別物に聴こえます。
さらに打楽器の欄には「Jeu de timbres Mustel」というクレジットが見えました。ミュステルというのはチェレスタを作ったメーカーですが、「ジュ・ド・タンブル」、つまり鍵盤グロッケンシュピールも作っていたのでしょうか。スコアを見てみると、このパートには「Glockenspiel(Célesta à défaut)」つまり「欠陥のあるチェレスタ」という表記があります。要するに「チェレスタとしては、音の優美さが欠けている楽器」程度の意味だとすると、まさに鍵盤グロッケンシュピールそのものですね。おそらくこの楽器なのでしょう、ひときわにぎやかに「鉄琴」にしてはキャラが立ちすぎている音がはっきりと聴こえてきます。そんな、とても猥雑な雰囲気ムンムンの演奏に、まさに心は「世紀末」(1897年に作られています)。
初めて聴いた3人のソリストのためのカンタータ「ヴェレダ」も、なかなか興味深い作品でした。印象派的な手法も取り入れているにもかかわらず、外観はあくまでキャッチー、ガリア人の巫女ヴェレダと、ローマ人の司令官エドルとの道ならぬ恋の物語なのだそうですが、テキスト(フランス語のみ)を見なくても、ドラマティックな情景が目の前に広がってくるような気がするから不思議です。そのエドルを歌っているジュリアン・ドランというテノールが、このオーケストラの世紀末的な響きに見事にマッチした、なんとも言えない「濁った」(これももちろん、いい意味です)声なのが、たまりません。
最後の「ポリュークト」序曲だけは、なんだか普通のオケみたいに落ち着いた音色で聴こえてきます。録音会場が違うせいなのか、弦楽器の人数が33人から41人に増えているせいなのかは、分かりません。スリリングさがなくなってしまって、ちょっと残念。

CD Artwork © Musicales Actes Sud
by jurassic_oyaji | 2014-03-13 20:09 | オーケストラ | Comments(0)